時間が早く早く、早く感じてしまうのは
貴方のことが、大好きだから
隣の○○君
「ゴメンね、あんま片付いてないけどそこらへんのソファとか座っちゃってね。」
「ありがとうございます。」
床に何冊か置いてあった読みかけの雑誌を適当に片付けると流河をソファに座るよう言った。
にそう言われると、流河はいつものあの座り方でソファに腰掛けた。
「嬉しいですね、さんの手料理が食べられるのは。」
「え、さっきも言ったけどそんなに期待出来るようなものは作れないからね?」
「いいんです。(さんが作ってくれるだけでもう幸せですよ。)」
「あ、なんか食べれないモノとかある?アレルギーです、とか。」
「特にないですけど・・・野菜が苦手です。」
「あぁ・・。」
「なんで納得してるんですか。」
「や、なんか、そうっぽいよね。嫌いそう。よし、じゃあ食べやすいようにしてあげるね。」
「よろしくお願いします。」
いちいち律儀に礼を言う流河君は可愛い。
てゆか、野菜嫌いって・・・ほんと、小さい子みたいだなぁ・・。
まぁ私もそんなに好きってわけじゃないけど。
よっし、頑張って作るかなっ。
がキッチンに行くと、やることのない流河はソファに座ったまま部屋の中をキョロキョロ眺める。
テレビが置いてあるサイドボードの上には水槽が置いてあり、プクプクと熱帯魚が優雅に泳いでいるのをしばし見つめていた。
少し目を逸らすと、水槽の隣にはいくつかの写真たてが並べられていたのに気づき、そちらに目をやる。
(さんの小さい頃の写真ですかね・・・。)
そう思い、ソファの上からはよく見えないのでそこから立ち上がり並べられた写真をじぃっと見つめた。
やはりその写真にはが小さい頃に撮った写真ばかりが飾られていた。
(・・・可愛いですね、やっぱり。今の明るい感じも、昔と全然変わってないみたいですし・・)
の昔の写真を見て満足そうにしていたが、ふと違う写真に目を写してみると、さっきまで嬉しそうだった顔が
一気に曇り、眉間に皺を寄せその写真を食い入るようにして見ていた。
(・・・・・これ、一緒に写ってるの、ライト君ですか・・?)
流河が目にしたのはとライトが仲良さそうに写っている写真。
小さいころの写真だけではなく、中学、そして今通っている高校の写真も飾ってあった。
中学の写真は恐らく卒業式に一緒に撮ったものだと思われる。
ペンで写真に『卒業オメデトウ★ライト・』と書いてあるのでそうだろう。
その隣に飾ってある高校の写真はきっと入学式。
またもペンで『祝・入学!!頑張ろうねっ。またライトと一緒だね。笑』などと書いてある。
それを見た流河はそこにある、がライトと共に写っている写真を全て破ってしまいたい衝動にかられるくらい、なんだかイラっとした。
(・・・・・幼馴染だから、ですよね。・・・そうですよ、・・・幼馴染だから、です。)
自分に言い聞かせるようにそう思い、またソファに腰掛けた。
親指を口元に当てながらキッチンにいるをまだかまだかとソファの上からチラリと覗いたりしたりと落ち着かない。
しかし少し時間がたつと、体育座りのような体勢でそのまま膝に顔を乗せ静かに寝息をたて眠っていた。
「流河君、ゴメンね、おまたせー。ハイハイ、さん特製のヘルシーハンバーグとお野菜コンソメスープですよー。」
ようやくキッチンから戻ってきて出来立ての料理を運んでくる。
料理をテーブルに置きながら流河の名前を呼ぶが流河の反応がない。
「流河君?できた・・」
ソファに大人しく座ってると思いきや、体育座りのまま寝ている流河にしばし驚くが、
そっと肩をゆすり、優しく流河の名前を呼んだ。
「流河君、ゴハン、出来たよ?」
「・・ん・・」
軽く肩をゆすったせいか少し反応するがまだ眠りの中の流河。
どうしようか、と思ったのも束の間、急にグイっと腕を引っ張られそのまま流河の腕の中に捕らえられてしまった。
「わっ、ちょ・・・流河く・・」
「・・さん・・」
「ハ、ハイ?」
「・・・・・・・・。」
流河の腕の中に収められたはこれ以上ないくらいに心臓が動いているんじゃないかと思いながらも
流河に名前を呼ばれドギマギしながらも返事をした。
すると、名前を呼んだ当の本人が目をいつも以上に見開き、のことをじぃっと見つめていた。
「流河君・・・?;」
「・・・夢じゃないんですか?」
「え?」
「・・・・・・・・夢かと思いました。」
「・・・。」
「さんが、私の名前を呼ぶのが、夢かと思いました。そしたら無意識に、・・・スイマセン。」
「いや、いいんだけど・・。(びっくりしたけど・・)」
「それで、」
「ん?」
「どうしたんですか?」
「あぁ、うん。ゴハン、出来たから、ね?」
「有難うございます。」
「食べれる?まだ眠い?」
「いえ、大丈夫です。すいません。」
そう言ってなんだか名残惜しそうにを閉じ込めていた腕を離した。
まだ鼓動の早さが落ち着かないは、嬉しいのだが、流河が自分に廻している腕をといてくれて少しホっとしていた。
「美味しそうです。」
「味は保障できません。」
「いただきます。」
「はい、どうぞ。」
慣れていないのか、それとも元から持ち方が変なだかなのか、握るような箸の持ち方でハンバーグを食べやすいサイズに切っていった。
一口サイズにしたハンバーグをパクリと食べ、モグモグと口を動かしながらに言葉をかける。
「ほへも、をいひい・・・でふ。」
「・・・飲み込んでからでいいよ、流河君。」
「・・・・・・・・・・・。とても美味しいです。」
「ホント?へへ、よかった。」
「期待しないでなんて言うからどんなもんが出てくるのかと思いましたよ。この野菜のスープも、野菜が小さく切られてて
スープに染み込んでいて野菜の味が気にならなくてすごく美味しいです。」
「うん、食べやすいようにしてみたんだ。」
「これなら毎日でも野菜食べれますね。」
「お、野菜嫌いも直るかな?」
「ハイ。さんが作ったスープなら。」
「・・・・・流河君ってさぁ・・」
「?」
「なんか、嬉しいこととか、サラっと言ってくれるよね。」
「そうですか?」
「うん。」
「さんが嬉しいと感じているなら、私も嬉しいです。」
「・・・ホラ、また・・」
照れたように笑うと、流河は大きな口でハンバーグを食べながらのその表情を見つめた。
そして次に出たのはこんな言葉。
「ひゃん・・」
「・・飲み込んでから喋ろうね、流河君。」
「・・・・・さん。」
「なんでしょう?」
「あそこに、飾ってある写真・・」
そう言ってサイドボードの上の写真たてをスっと指さした。
すると、は少し照れながら『ヤダ、見ちゃったの?』なんて言っていた。
「可愛らしい子だったんですね。」
「あはは、ありがとう。今ではこんなに大きくなって可愛さのかけらもなくなりました。あははっ。」
「可愛いですよ、さんは。」
「・・はい?」
「小さい頃と変わらず、さんは可愛いですよ。」
「え・・あ・・・そ、そうです、か・・、あ、ありがとうっ・・はは・・」
突然流河にそんなことを不意に言われの顔をはもう真っ赤のピークになっていた。
しかし、流河はかまわずそのまま話を続けた。
「それで・・」
「え?な、なに?」
「あれ、一緒に写ってるの、・・・ライト君ですよね?」
「あぁ、うん。ホラ、ライトとは幼稚園から高校までずっと一緒だったからさ。しかも家、近いし卒業式と入学式とかはいつも記念に写真撮ってたんだ。」
「そう、ですか・・。」
「なんで?なんかおかしい写真あった?」
「いえ・・なんだか、とても仲が良さそうなのでライト君とさんが付き合ってるのかと思いました。」
「まっさかー。ライトとは仲いいけど、そんなんじゃないよー。仲のいい幼馴染だよ。」
「そうですか。」
ホっとしたような、嬉しそうな、そんな顔をする流河。
ライトとただの幼馴染、その言葉を改めて聞くと安心を感じていた。
よかった。
では、ライト君とはそう言った関係は考えていない、ということですよね。
・・・・・・というか、私はなんでこんなに必死になってるんでしょうか。
・・なんだか、厄介な事件の依頼よりも、とても難しいパズルよりも・・・・ずっとずっと、厄介な気持ちに取り付かれてしまったようですね、私は・・・。
が食べ終わった食器などを運ぼうと立ち上がろうとしたその時、ピンポーン、と軽快なインターホンの音が部屋に響き渡る。
その音を聞くと、そのまま『ちょっと待ってね』と流河に言いながら近くにあるインターホンの電話を取った。
別にそんなの気にも止める様子などなかった流河だったが、次にが口にした言葉に思い切り顔をしかめることになった。
「あ、ライト?どうしたの?こんな時間に。あ、ちょっと待っててね、今開けるから。」
ライト?
・・・・夜神月のことですよね・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・すっごく気分が悪くなりました。
流河がそんなことを考えていることも露知らず、はパタパタと早足で玄関先へと向かった。
そんなの後姿を恨めしそうに見る流河だったが、『出なくていいですよ。』なんて言えず。
「ライト、どーしたの?」
「ゴメンね、こんな時間に。」
「うん、いいけど。別に珍しくないじゃない。」
「母さんがさ、父さんと久々に出かけててね。」
「あぁ、夕飯、食べに来たのね?」
「当たり。よく分かったな。」
「だってたまにあるじゃない。私もたまにライトん家にゴハン食べに行くし。」
「大丈夫?」
「うん、いいよ。」
「・・・?あれ、誰かいるの?」
「あぁ、今ね、ちょうど・・」
「・・・・・・こんばんわ、ライト君。」
「!!流河!?・・・なんで・・」
ヒョコヒョコとリビングから出てきた流河は心底嫌そうな顔をしながら、一応ライトに挨拶を交わした。
一方ライトは『なんでコイツがここにいるんだよっ』、そんな顔をしている。
そんなこと知る由もないはおかまいなしにライトに『あ、とりあえず上がりなよ』なんて言いながらニコニコしていた。
「あのね、流河君に勉強教えてもらって送ってもらったお礼にゴハン食べて行ってもらったの。」
「へぇ・・。」
「すごく美味しかったです。さんの手作りのごはん。」
ライトに言い聞かせるように物凄く強調して言葉を放つ流河にカチンときたライトは負けじと言い返した。
「知ってるよ、の料理はすごく美味いんだ。僕は何度か、てゆうか、結構食べさせてもらってるからね。」
「ヤダよ、ライト、そんなに言われるほど美味しくないよー。私、ライトのお母さんのゴハンの方が好きだし。」
「はは、母さんに言ってあげたら喜ぶよ。」
「・・・・・・。」
ライトとの会話に始終ムスっとしている流河を見てライトは『どんなもんだ』と言わんばかりの顔で流河を見た。
そんなライトを見てイラっとしながら流河はライトを睨みつけた。
なんなんですか、ほんとに。
いつもいつも邪魔ばっかり・・・・
大体貴方、ただの幼馴染にしか見られてないんですから。
もう・・・嫌ですよ、邪魔しないで欲しいです。
ヅライト君。貴方の髪の毛、本当にヅラみたいですよ。あぁ、『みたい』じゃなくてそうなんですかね。
なんでまた流河がっ・・・!!!
コイツとことん邪魔なんだよ、ほんと、マジでさぁ。
ふん、僕の方がの料理の味よく知ってるんだからな。
この前はナポリタンを作ってくれたんだ、その前はオムライス、全部美味しかった。
お前なんてまだ1回しか食べたことないくせに。
ほんっと、邪魔ばっかすんじゃねぇよ、浮浪者みたいなツラしやがって。
心の中では互いのことを言いたい放題の二人。
そんな二人におかまいなしにまたキッチンに戻ってライトの分の夕食を用意しようとしているだった。
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ライトって一人でも料理出来ちゃいそうだよね、って突っ込みナシで。笑