気持ちを伝えることがこんなに苦しいものだなんて思わなかった




貴方と出会うまでは












































隣の○○君




















































PiPiPi・・・・










起きなさい、と言わんばかりに鳴り続けているのはベッドの脇の目覚し時計。

時刻はPM7:00ジャスト。

一生懸命起こそうとしている目覚ましも虚しく、持ち主の手によって面倒くさそうに、うるさいと言わんばかりに音を消された。

目覚ましを止めると自分を起こす邪魔者がいなくなり、また気持ちよそうにベッドの中へと潜る

もちろん今日も学校はある。

目覚し時計が起こした7時に起きなければ間に合わない。

朝食も取らなければいけない、支度もしなければいけない。

始業のチャイムは8時45分。

が学校までにかかる時間はおおよそ50分。

そんなことおかまいなしに眠り続ける。


































8時45分






始業のチャイムが鳴り、教室では朝のホームルームが行われていた。

しかし、の姿はない。

の隣の席の流河は、がいないことに気づくとつまらなそうに口を尖らせ窓の外を見た。

ホームルームが終わると授業まで5分ほどの時間がある。

ライトが流河に話し掛けた。












は?」

「知りません。まだ来てないようですね。」

「珍しいな。あいつが遅刻とか欠席なんて。」

「たまにはそいうこともあります。私もしばらく来てませんでしたし。」

「そういえばそうだったな。ついこの間まで来てなかったな。」

「私用で来れませんでした。」

「私用?」

「あまり深く聞かないでくださいよ、セクハラで訴えますよ。」

「何がセクハラだよ!!何が!!大体お前なんかにセクハラなんてしねぇよ!!したくもないよ!!」

「それはよかった。」

「たくっ・・。最近はちゃんと来るんだな。」

さんがいますから。」

「・・・・・・なんだよ、それ。」

「そのままんまです。」










ムスっとしながら流河を見やると、『それは結構だな。』と言い自分の席へと戻った。

ライトが席に戻ったと同時くらいに授業開始の鐘が鳴った。


















































「・・・・ヲイヲイヲイヲイ。ちょっと待って待って。どうして起こしてくれなかったの?」





9時45分





自分の部屋で文句のような独り言を言う

『どうして起こしてくれなかったの?』と言いながら手に持っているのはベッドの脇の目覚し時計。

いや、この目覚し時計はきちんと自分の役目を果たしていたのにも関わらずが容赦なく消してしまったのではないか。









「遅刻じゃん、遅刻。えー・・・まだ1回も遅刻したことなかったのになぁ・・。1回遅刻すると次からは『あ、この前遅刻したから別に

今更もういいですよねー』みたいな気持ちになって遅刻が増えるから嫌だったのに。」







ぶつくさと一人文句を言いながらベッドから降りる。

『あぁ、そういえば昨日ちゃんとベッドで寝たんだっけ?』なんて思いながらクローゼットの制服を手に取り着替えた。

ブラウスのボタンを留めながら下のリビングへと降りていく。

朝食は簡単に済まそうと、あらかじめ買っておいた大好きなクリームパンをキッチンの方から出してくると冷蔵庫の中から牛乳を取り出しコップにそれを適当に注いだ。











「今から学校行ったら・・・着くのお昼頃かなー。めんどくさいなー・・。」




今日は休んじゃおうか、でももう制服着替えちゃったしなぁ、なんて思う片隅に、『流河君、来てるかなぁ』と思う。

そう思うと休むのが嫌になった。

前に友達が言ってたのを思い出した。

『好きな人がいるだけでやる気出るもんなんだよ。嫌なことも、嫌じゃなくなるんだよ。』って。

今なら分かる気がした。

だって流河君に会いたいから学校に行ってる。

多分、流河君のこと好きじゃなかったら、今日は学校休んでたと思う。











パンを口に放りながらそんなことを考える。

ふと目に入ったのは昨日郵便受けから取り出したいくつかの手紙。

適当に手に取り見てみると、父宛の物や母宛の物。

公共料金請求の手紙やら、自分には関係のないものばかりでつまらない、そう思ったときに目に入ったものがあった。

自分宛の手紙。

しかし、それに差出人は書いていなかった。

不思議に思い、封を開けてみた。










「誰だろう。名前書くの忘れちゃったのかな?」







ピリピリと雑に封を切り、中身を見てみれば1枚のシンプルな白い便箋。

シンプルな便箋に書かれた内容も至ってシンプルなものだった。

シンプル故に、気持ちが悪いとか、そういう問題ではない。

なんだか、これを見て不安になった。














ずっと見てました。今日もちゃんとお家に帰れたみたいだね。
























「・・・なに、これ。・・気持ちわる。」










内容がおかしい上に、文章はパソコンで打ち込まれてあり筆跡が分からないようにされている。

明らかにこれは計画的な実行であり─・・考えられるのは、ストーカー。

それを見た瞬間、背筋がブルっと震えるような、そんな感覚に見舞われたはなんだか家から出るのが怖くなった。

いや、もしかしたらただの悪戯かもしれない。

学校に行けばきっと不安も和らぐ。そんなことも忘れてしまうだろう。

それに今日も帰りは流河に勉強を教えてもらうんだ、だから行かなきゃ。いや、行きたい。そう思い、その手紙を無造作に鞄の中へ放り込むと、

手にしていたクリームパンを無理やり口の中に突っ込み、急いで家を出た。
























12時53分










だいぶ学校へ着くのが遅くなったのは、途中コンビニに寄って雑誌の立ち読みをしていたから。

面倒くさいからどうせだったらもうお昼からでいいだろう、と3時間目をサボった。











「おはようー。」








教室に入り、自分の席の隣を見ればいつものように座っている流河がいた。

その姿を見て、なんとなく嬉しくなり、ホっとする。







「おはようございます。今日は随分と遅いですね。」

「寝坊しちゃった。」

「そうですか。何かあったのかと思って心配しました。」










あぁ、なんて嬉しいことを言ってくれるんだろう、この子は。

そう思いながらふと、朝の気持ちの悪い手紙のことを思い出した。

思い出すと、なんだか気分が削がれる。

もうあれは悪戯なんだ、と言い聞かせるように眉間に皺を寄せながらブンブンッと首を横に振った。










「どうかしましたか?」

「え?いや、なんでもないよ。」

「・・?そうですか。」

「あ、私食堂行ってくるね。さっき友達からメール来てたんだ。」

「あぁ。お友達、待ってましたよ、さんのこと。」

「マジでか。じゃあ行ってきまーす。」

「はい。」















流河に手を振りながら食堂に向かうを見て流河も軽く手を振り返した。

































「ゴメンねー。寝坊しちゃったよ。」

「珍しいね、が遅刻なんて。」

「ねぇねぇ、さー、最近流河君て子と仲いいよね?」






ふいに、友達にそう言われ少し焦る。

以前ならそんなこと言われてもどうも思わなかったのに。








「え、仲いい、かな・・?」

「だって、昨日一緒に帰ってたでしょ?」

「え!!見てたの?」

「たまたまね。」










ニヤニヤとしながら友達にそう言われると、急に恥ずかしくなった。

そう思っていると隣にいたリコが耳元で『なんだ、結構よろしくやってるんじゃない。』なんて茶化すからもっと恥ずかしくなる。












「でもさぁ、流河君のどの辺がいいの?」

「え?」




なんだかもう勝手には流河が好き、と思われ話を進められていた。

実際好きだというのは本当だが。










「だってさー、なんか、不思議ちゃんってゆうか・・・変人ってゆうか・・。」

「うん、目の下、隈スゴイしね。」

「座り方も変じゃない?」

「何処が、いいの?」






好き勝手に言う友達に少しムっとしたが、流河の良さは分かる人には分かるんだから、なんて思いながら

『少し、変わってるかもしれないけど、流河君はすごく優しいよ。面白いし。』と言う。

その返答に『まぁ、・・・がいいならいいけどね・・。』とリコ以外の友達が腑に落ちないような表情で苦笑いした。















昼休みも終わりに近づき、教室に戻ろうとしたとき。

ふと購買を見ると物凄く甘そうなパンケーキが売っている。

生クリームとカスタードクリームがホイップされてる上にその中にはイチゴやら色々挟んである。

仕上げにはパンの上に甘ったるそうなメイプルシロップのようなものがかかっている。

そのパンを見た瞬間、ふと流河の顔が横切った。

あぁ、こういうのも好きそう。

そう思い、友達に先に教室に行ってて、と一言残し、購買でそのパンを一つ買っていった。















教室に戻ると、流河は自分の席にもう着いており、読みにくそうな変な持ちかたで文庫本を読んでいた。

が席に着くと、それに気がついた流河が『次、数学の小テストがあるらしいですよ。』と言った。










「え、マジでか!!」

「マジですよ。」

「え、聞いてないですよ。」

「今日のホームルームの時間に担任が数学の先生から言付けられてたみたいで言ってましたよ。」

「ガッデム!!!私ホームルームいなかった!!!!」










『やられた!!数学の高橋め!!!』と、一人で悔やみながら数学の先生を恨む

いやいや、悪いのは数学の高橋ではなく寝坊したさんですよ、なんて思ったがあえてその状態が面白いのか突っ込まない流河。

そうこうしているうちに数学の高橋がノソノソと教室に入ってきた。

高橋が入ってくるのを見てはまた『き、来た!!!あのハゲチャビン!!』なんてボソボソと言ってるのを隣で見ている流河は笑いをこらえるのが大変だった。


































( わ か ら な い ・ ・ ・ )













数学の高橋が教室に入って間もなく5分が経過していた。

まさかいきなり小テストはやらないだろう、せめて1分くらいは時間をくれるであろう。

そう考えていたはまたも、『してやられた』なんて顔をしながら数学の小テストと睨めっこをしている。













高橋めっ、まさかいきなり小テストを配るとは・・・。

うーわー、すごい、すごいよ、私。

見事なまでに分からない。

大体数学って、何?

なんか役に立ちますか?

因数分解とか必要?

あれ、因数分解ってなんだっけ?

もうあれだよね、足し算・引き算・かけ算・わり算が出来ればいいと思う。

九九が出来ればいいと思う。

あ、ライト、もう寝てる。

くそ、天才め。













無駄なことを考えているうちにも時間は容赦なく進んでいく。

そこでまた焦る。

しかし、ふと最後の方の問題を見てみると、なんとまぁ、昨日流河に教えてもらった問題の応用があった。


















(あ、これ昨日流河君に教えてもらったヤツだっ。)









最後にある5問ほどの文章問題は全て流河に解き方を説明してもらい教えてもらったもの。

しかしまぁ、何故最初の方にある計算問題はほんの2・3問しか解けていないのに文章問題は解けるようになったのか。










































小テストも無事に終わり、数学の授業も終わり、ハゲチャビン高橋が教室から出て行くと同時にチャイムが鳴った。

チャイムが鳴ったと同時にはいきなり流河にお礼を言い始めた。










「流河君、有難う。」

「はい?」

「昨日教えてもらったところが出てた!!」

「あぁ、最後の問題ですね。」

「うん。流河君に教えてもらってなかったら確実に真っ白な解答用紙になっていただろうに。」

「それはよかったです。」

「お礼にこれをあげます。」

「?」









と、差し出したのはさっき購買で買った甘ったるそうなパンケーキ。

しかし、流河はすごく嬉しそうな顔をしてそれを受け取った。









「有難うございます。いいんですか?」

「いいよ。なんか、流河君好きそうだなぁ、って思ったから。」

「嬉しいです。」

「あぁ、そんなに嬉しい?購買で売ってたからまた買ってきてあげるよ。」

「・・・・いえ、そうではなくて・・・。」

「え?違うの?」

「・・・いや、もうそういうことにしておいてもらっていいです。」

「?」

















私が好きそうだからと、貴女がこれを買ってきたのが嬉しいんですよ。

・・・・・・・鈍い人ですね・・・・・。


















*****


流河君も鈍いですよ。ワラ
普通は好きじゃなかったら買ってきません。