テーブルに置かれた手紙
それを一つずつ見ながら口を紡ぎ眉間に皺を寄せる
そんな姿がまるで探偵のようで
隣の○○君
「馬鹿ですね。」
そう言いながら一枚の手紙を人差し指と親指で掴みながらピラピラと揺るがした。
先程から流河たちが見ているのはに送られてきたという差出人不明の手紙。
毎日何十通も届く上に内容がストーカー的なのでストーカーと断定されたその手紙を半目で見ながらハァ、と一つため息を落とした。
「、つけられたりはしてないのか?」
「してないんじゃないかなぁ・・もしされてたら気づくよ、だって帰りはいつも流河君と帰ってるから・・」
何気ないその一言にムッとしながら流河を見る。
しかし流河は何食わぬ顔で『そうですね、もしつけられているなら私が気づきます。』なんて悠長に言っている。
「大体、文が幼稚すぎるし馬鹿馬鹿しい。それにスグにバレそうなヤツでしょうね。」
「え、なんで?」
「これ、郵便の消印が全部同じところなんですよ。」
「ホントだ。」
「まぁ、わざとかもしれませんが、そんなことするような頭のいいヤツには感じませんけどね。馬鹿です。」
(流河君って、何気に辛口なんだなぁ。)
「多分、近くにいることをアピールしたいだけなのかもしれませんしね。馬鹿です。」
馬鹿だ馬鹿だと連呼しながらヒョイっとまた別の手紙をつまみ出しそれを見ながら『でも、こんなことをしてさんを怖がらせるなんて、許せないです、この馬鹿。』なんて言っている。
そう言ってくれるのは嬉しかったが、実際はそんなに怖がっていない。
最初にこの手紙を見たときこそは怖い、と思ったが、次第にそんな気持ちも薄れていき、手紙がきても『また来たよ』ぐらいにしか思わなくなった。
「さん。」
「ん?」
「心当たりはないんですか?」
「え、・・・・ないなぁ。」
「本当にないのか?」
「ないよー。だってそんなことされる覚えないもん。」
「ありますよ。さん、どっかのクラスの馬鹿に襲われかかったことがあったでしょう?」
「あ・・うん。」
「え?!」
「ライト君は知らなかったですか・・。以前さんに好意を持ったヤツに告白されさんがそれを断ったらその馬鹿、力ずくで。」
「なんだよ、それっ・・・」
「あっ、で、でも、あの、流河君がそのとき助けてくれたから・・」
『だから、大丈夫だったよ、ライト。心配しないで。』とニコリと笑うが、ライトはもう気が気じゃなさそうな上に複雑な気持ちになった。
どうして自分に何も言ってくれなかったのか、いつもならそういう事があれば相談してくれたのに、そんな事を思いながら奥歯をギリっと噛み締めたが
今はそんなことを言ってる場合じゃない。
「他には?」
「え?」
「例えば・・・・・“最近誰かからの誘いがしつこい”、・・とか。」
「ない・・・いや、ある・・・のかなぁ。」
「誰ですか?」
「バイト先の先輩なんだけどね。結構前から遊ぼうって言われてるんだけど・・私その先輩がちょっと苦手でいつも言い訳して断ってたの。
あ、でも最近は誘ってこなくなったかも・・・。」
「ソイツを馬鹿の候補者にしましょう。」
「(馬鹿の候補者・・・。)え、でも、その先輩って決まったわけじゃ・・ただ誘いがしつこかっただけだし、ねぇ・・?」
十分に可能性はあります、そう言いながら今度は親指の爪をガリっと噛みながらじぃっと上目でのことを見つめた。
「さん。しばらくは私かライト君のどちらかと行動しましょう。」
「え?」
「そうすれば安全です。最もライト君が邪(よこしま)なことを考えていなければの話ですが。」
「誰が邪だ、誰が!!!誤解を招くようなことを言うんじゃない!!」
「あれ、違うんですか?」
「違う!!」
「あ、あのさ、有難いんだけど・・・そんなことしたら二人とも大変「そんなことないです。なんならずっと一緒でもいいですよ。」
遮るようにして言う流河。
その横でライトがポツリと『お前の方がよっぽど邪じゃないか。』なんて言ってるのは知らんふりしていた。
「あ、お茶飲む?て言っても紅茶くらいしかないけど。」
「いただきます。」
「ライトも飲むでしょ?」
「あ、うん。」
ちょっと待っててね、そう言ってキッチンに行きお茶を入れる準備をし始めた。
その間、流河はなにやらブツブツと言いながら親指を口にあて、ふと、隣にいたライトに声をかけた。
「ライト君。」
「ん?なんだよ。」
「ライト君はさんのバイト先へ行ったことあるんですか?」
「あぁ、何度か。」
「何処で働いてるんですか?」
「ファミレスだよ、ホラ、来る途中にあっただろ?」
「あぁ、あそこの・・。」
「多分、が苦手な先輩って中学んときの先輩だと思うんだ。」
「知ってるんですか?」
「あぁ、顔はね。」
「なるほど・・」
「・・それにしても・・すごいラフな格好だな、流河って。」
そう言って話を変えたのはライト。
来たときから思ってたけど、と付け加え、その服装を見る。
ライトの言うとおり、流河の服装は至ってシンプルだ。
白いロングのTシャツに、ダボッとしたジーンズ。そして素足。
「悪いですか?」
「いや、悪いなんて言ってないし。」
「これが一番楽なんです。」
「ふぅん・・。」
ライトが相槌を打ったと同時くらいに、がお茶を運びながら『砂糖とミルクは自分で入れてね。』と。
ありがとうございます、と言うなり流河は用意されていた砂糖をドボドボとカップに入れ始めた。
流河の甘党を知っているはあらかじめ砂糖を多めに用意しておいたのだが、正解だった。
それを見たライトは目をぎょっとさせながら『なんなんだコイツは、服装だけでなくて味覚もおかしいぞ。』なんて言いたそうな顔をしていた。
「おまっ・・入れすぎじゃないか?!;」
「ちょうどいいぐらいです。」
「ちょうどいいって、うわっ、ちょっ、これ!!もう紅茶じゃなくてこれ、ただの砂糖が溶けた液体だよ!!;」
「流河君、甘党なんだって。」
「程があるだろ!!;」
「飲みますか?頭の回転がよくなりますよ。もしかしたらライト君の髪の毛もちゃんとはえてくるかもしれないです。」
「へぇ、そっかぁー、髪の毛が生えやすくなるのかぁ、・・・って飲まないよ!!糖分と髪の毛が生えることになんの因果関係があるんだよ!!しかもこれは地毛だ!!お前ただ僕に嫌がらせしたいだけだろ!!」
「ライト君、突っ込みに磨きをかけましたね、上出来です。」
「褒められても嬉しくないっ・・!!」
「やっぱりライトと流河君、吉本に」
「「絶対入らない(です)。」」
「残念。」
『いやですよ、こんな茶色いヘルメットかぶってる人とのコンビなんか・・』なんて言いながらチラっとライトを見る。
ライトも無視すればいいのに『だから地毛だって言ってるだろ!!てゆうか、茶色いヘルメットってやめてくれない?!』なんて真面目に返すものだから多分、流河は面白がっている。(性悪だ。)
「・・・で、話はかなりズレたけど。どうするんだ?」
「え?何がですか?」
「ストーカーだよ、オイッ!!!;なんのためにいるんだよ!!」
「本来ならさんと勉強をする予定でした。」
「あ、そう。」
「・・まぁそんな事を言っていられる状況ではなくなったんですが、」
「ゴメンね、流河君。せっかく休みなのに・・」
「全然構わないです。(さんに会えれば正直勉強なんて二の次です。)・・でも、もういいです。」
「「え?」」
「だから、もういいです。ライト君、帰りにソイツの顔を教えてください。」
「は?」
「だから、その馬鹿の顔を教えてくださいと言ったんです。聞こえましたか?」
「最初から聞こえてるよっ;」
「じゃあ最初から『分かったよ』と言ってくれればいいのに・・本当に面倒くさい人ですね、ライ・・ヅライト君は。」
「ヲイィィーーッ!!おまっ、さりげなく言うなよ!!なんか今思い出したかのようにその名前言っただろう!?てゆうかライトって言いかけたのに言い直すなよ!!」
(ライト・・・さっきから突っ込んでばかりだなぁ・・・。)
ライトと流河の漫才的な会話を聞きながらズズッと紅茶を啜り、あぁ、私も流河君の甘党がうつったのかな・・なんて思いながらもう2個
砂糖をカップの中へ放り込んだ。
「私にまかせてください。こういうヤツをどうにかするのは、一番得意なんです。」
砂糖かき混ぜているに向かって、少しニッっと笑ってそう言った。
彼になんの根拠があってそんな事が言えるのかはには分からなかったが、なんとなく、流河なら大丈夫、本当になんとかしてくれそうな気がする、
そんな気がして流河に礼を言った。
「そういえば、明日この前やった数学の小テスト返ってくるってさ。」
「マジでか。」
「どうだったんだよ、は。」
「オイオイ、それを聞く気かい、ライト君。」
「・・・・ダメだったんだな?」
「あ、でも最後の5問は出来たよ。」
「文章問題?あれ、少し難しめに出されたヤツだろ?」
「私と一緒に勉強したところだったんですよね、さん。」
(っ・・いちいちムカつく言い方するよな・・・流河って・・。)(だってそう言ってるんだもん)
「そうそう、流河君が教えてくれたところがねー、ばっちし出たんだよ。」
『流河君は頭もいいけど山勘もスゴイね。』なんて言っている。
ライトは恨めしそうにその会話を聞きながら『あ、そう。』、そう一言言ってそっぽを向いてしまった。
そんなライトを余所に、流河は急に立ち上がり、ライトの腕をグイっと引っ張った。
「おいっ、何するんだよバカっ。」
「バカって言った方がバカなんです。だからライト君がバカです。」
「言ってろよ!!幼稚園児か、お前は!!」
「負けず嫌いと言ってください。さて、そろそろ御暇(おいとま)しましょうか。」
「え?」
そう言ってライトの腕をグイグイ引っ張りながら帰ろうとする。
「ホラ、早く行きますよ。」
「え、僕もかよ。」
「非常に不本意ではありますが・・・」
「だったら一人で帰れよ!!!;」
「一人で帰るにも、そのバイト先の馬鹿野郎の顔を私は知らないんですからライト君に教えてもらわなければ分かりません。」
「あぁ・・そういうことか。だったら最初からそう言えよ。」
そう言いながらグイグイと引っ張っていた流河の手を振り解き、よいしょ、と重い腰をあげた。
二人の会話を聞いていたは、ハッとしながら『私も行く。』なんて言いだした。
「いや、でもが来たら」
「いいですよ、行きましょうか。」
「え?オイ、流河、何言ってるんだよ。もしその先輩だったら余計に危ないだろ。」
「いいんです。それでその先輩の反応を見ましょう。それに、なんのために私たちがついてるんですか?貴方はただの木偶の棒ですか?」
「そこまで言う事ないだろ!!;」
「それにライト君と二人でというのもむさくるしくて嫌でしたしね。」
「こっちのセリフだ、こっちのっ!!!」
はぁ、と一つため息を落とし『だって本当のことですし。』と言いながら親指を口に当てた。
そんな流河を横目にライトもため息を一つ落とした。
「・・行こうか、。」
「あ、うん。」
そう言ってと先に外に出ようとすると、置いていかれそうになった流河は慌てて『待ってくださいよ。』とヒョコヒョコ後から着いてきた。
「ここですか、馬鹿の生息地は。」
「馬鹿の生息地って・・」
「多分、今日は先輩バイト入ってると思うよ。」
の家を出ること10分弱。
のバイト先でもあり、その先輩のバイト先でもあるファミレスに到着した。
じろじろと店周りを見ている流河を見たライトが『やめろよ、お前の方が怪しいヤツだよ・・』なんて言うのも気にせず
そのままズカズカと店の中へと入っていった。
店へ入れば店員が明るい声で『いらっしゃいませ』と出迎えてくれる。
「ライト君、どれですか?」
「え、・・・いや、見当たらないみたいだけど・・」
「休憩かな?」
「じゃあ、適当に何か頼んで出てくるの待ってましょうか。」
案内された奥の席に座り、早速メニューを取り出す流河。
見ているページはやはりデザートのページ。
本来の目的も忘れているかのように、どれにしようか本気で悩む姿は相変わらずではおかしくなった。
「ライトは?どうする?」
「僕は・・飲み物だけでいいかな。」
「あ、ねね、これ美味しそうじゃない?これ。」
しばらくすると、『ご注文がお決まりですか?』と聞きながら店員がやってきた。
と、その顔を見れば今日のウォンテッドマン。
「(流河、コイツだよコイツ。)」
ライトは目で合図しながら流河にコイツがその例の先輩だ、と言っているのにそんなの聞いていないかのように
自分の食べたい物を注文しようとした。
「ダブルイチゴケーキと」
「あれっ、さんじゃんっ!!!」
流河が注文を言い始めたと同時くらいにその先輩がの存在に気づき、声をかける。
明らかに作り笑いのような、そんな笑いで『どうも・・』と返事を返すの隣では注文を遮られた流河がムスっとしながら口を紡いだ。
「え??なに?テストじゃなかったの?」
「あ、いえ、ちょっと息抜きに・・」
「なーんだ、オレに会いにきてくれたんじゃなかったんだぁー。」
「・・あはは。」
引き攣ってます、引き攣ってますよさん、笑顔が。
の前に座っているライトも苦笑気味だ。
流河はすこぶる機嫌が悪い。
「てゆうかさー、テスト終わったら一緒に遊びに行かない?」
「えっ?;」
反応が素直すぎる。
明らかに『嫌ですよ。』そんな顔をしているのにも関わらず『行こうよー』なんて言っている。
人の気持ちが分からないヤツの典型的なタイプだな、なんて思いながら戸惑う。
「なんかさぁ、どっかディズニーランドとか好きでしょ?」
「あ、いや、その、」
「すいません、仕事してください。」
と、話を逸らしたのは流河。
見るからに不機嫌そうな顔をしながらツンっと言い放つその言葉は最もな事を言っていて。
それにカチンと来たのかぶっきらぼうに『ご注文は?』と流河に聞いた。
「ダブルイチゴケーキとプリンキャラメルパフェとフルーツ杏仁とチーズケーキ、それと特製ショートケーキにあんみつください。」
まるで嫌がらせのようかの流河の注文にしばしとまどいながらピッピと注文されたものを打っていく。
その後でとライトが頼み、注文がすんだ後去り際にの耳元でボソっと耳打ちしていった。
「なに?このキモイやつ。おかしいんじゃない?」
そう言われ、思わずカッとなったがガタンと立ち上がった。
「流河君は、キモくなんてないしっ、おかしくなんかないです!!貴方なんかよりも、ずっとずっと、ずっといい人です!!」
大声でそんなことを言った後、ハッっと我に帰ったように『やっちまったー!!』みたいな顔をしていたが、もう遅い。
少数ではあるが、周りの客も皆の方を、見ている。
一方言われた張本人も唖然としていた。
そして一番驚いているのは流河だ。
目を真ん丸くして立ち上がっているをじぃっと見つめている。
そして、口の端を緩めるてこう言った。
「有難うございます、嬉しいです。」
ニコリと笑い、にそう言うと、少し恥ずかしそうにしながらも『あ、いや、・・・どうも。』と言った。
ライトも唖然としている。
普段、は人に向かってこんなに怒ったり、怒鳴ったりするような子ではない故に、驚いている。
「店員さん、さっきの注文、全部取り消してください。気分が悪くなったので帰ります。」
そう言って席を立ち上がりとライトに『帰りましょう。』と言う。
ライトもも生返事をし、席を立ち上がった。
「流河君、あの、ゴメ」
「アイツじゃなさそうですね・・。」
「え?」
店を出るなりガリっと爪をかじりながらそう言った。
「あぁ、なんか、・・・なんだ、その、・・あまりにも馬鹿そうでそんなことするようなヤツじゃなさそうだよな。」
「そんなこと、思いつきもしませんよ、あの馬鹿の頭じゃ。」
「そうだよな、馬鹿だもんな。」
容赦なく飛び交う『馬鹿』という言葉を余所に、はなんだか分からなさそうな顔をしていた。
それに気づいた流河は親指を口元に当てながら話しはじめた。
「犯人は別の誰かです。」
「あ、・・そう、・・なの?」
「アイツの反応や、さんへの接し方を見ていて分かりました。」
「あーゆうタイプはそんな回りくどいことしないで正面からきそうだしな。」
「実際きたじゃないですか・・。なんなんですか、あの男の無神経さは。」
「いつもあーゆう感じなんだよ・・だから苦手なの;」
「まぁ・・だとしたら・・・一体誰が」
「あ!!!!!」
「「え!!?」」
突然が大声を出したもんだから二人してビックリだ、しかもハモっている。
ハモったことが嫌だったのか、お互い、『やっちまった・・また吉本コンビ的な事をやっちまった・・』、そんな顔をしていた。
「ど、どうしたんですか?!」
「何か心当たりか?」
「え?・・あ、ゴメン・・あの、・・・洗濯物を、干し忘れました。」
「「・・・・・・・・・。」」
はぁぁぁぁ・・・、と大きくため息をつく二人を見て申し訳なさそうにする。
「洗濯物、ですか・・。」
「洗濯物、か・・。」
「・・ゴメン、ね?」
「仕方ないですよね、生乾きの洗濯物ほど気持ち悪いものはないですからね。」
「そっちかよっ!!」
「そうですね・・じゃあもう解散にしましょう。」
「「え?」」
「早くないか?」
「洗濯物なら大丈夫だよ?」
「生乾きを甘くみてはいけませんよ。(・・私一人で調べたほうが早そうですからね。)」
「あ、う、うん・・?」
「というわけで解散です。」
「あ、おいっ、流河っ!!」
『明日また学校で。』と軽く手をヒラヒラさせながらその場を勝手に去っていった流河を呆然と見送るとライト。
流河の背中が見えなくなったところでライトが『僕達も帰ろうか?』、そう言い早くも家へと帰っていった。
半ば無理やり解散にした流河は達と別れた後すぐにワタリを呼び、に届けられた手紙に押されていた消印の郵便局へと向かっていた。
郵便局の前まで来ると、流河がワタリに『では、お願いします。』と言って自分は車の中から降りず、ワタリが郵便局の中へと入っていくのを見届けた。
「この手紙が入れられたポスト、教えていただけませんか?」
ワタリが郵便局の受付でそう聞くと、受付の女性は困ったような顔をして『毎日色々な手紙が届きますからたった1通の手紙が何処のポストから、というのは・・』と
言うのだが、そこへタイミングよく郵便配達をしていた男性がその手紙を見て『あ、』と言った。
当然それを聞き逃すわけもなく。
「知っておられるんですね?」
「知ってるってゆうか、その手紙、多分5番地の角のコンビニのところにあるポストに入ってるやつだと思いますよ。オレ、そこの区域担当で毎日運んでるんすよ。
でもその手紙、毎日何十通も入ってるんで流石に覚えてるってゆうか・・全部封筒も同じだし。差出人も書いてないんすよねー。」
そのことを早速竜崎に報告すると、『じゃあ、もう犯人分かったと同じじゃないですか。』と言ってため息をついた。
「あまり嬉しくなさそうですね?」
「・・・あんまりにも簡単すぎます。馬鹿馬鹿しい。」
「でも、あの娘さんは安心できますよ?」
ワタリがニコニコと笑いながらそう言うと、竜崎も心なしか嬉しそうに『・・・そうだな。』と言って窓の外を見た。
郵便配達の男性からそのコンビニの場所を詳しく聞いたあと、すぐにその場所へと向かった。
家に帰り、洗濯物も干し、生乾きをまぬがれたは今日出来なかったテスト勉強をしながら『流河君としたかったなぁ・・』なんて思いながら
過ごしていたのだが、夕方になると冷蔵庫に何も入っていないのを思い出し、面倒くさそうに財布を持ち買い物へと向かった。
外に出れば空はもう綺麗な夕焼けに染まっていた。
あぁ、そういえば。
前に流河君と帰ってるときも、こんな空だったかもしれない。
流河君といるようになってから、全部に流河君を感じるようになった。
この空の景色だって
なんの変哲もないいつものこの道だって
流河君と一緒だったから
なんかもう、─・・・本当に大好きだなぁ。
しみじみとそんなことを考えながら目的地のスーパーマーケットまで後少しの距離になっていた。
「竜崎、来ました。」
「・・・アイツだ。」
一方、流河はポストの近くに車を止め、車の中からそのポストをずっと見張っていた。
すると、中年くらいの男性が鞄の中からたくさんの手紙をゴソゴソと出し、それをポストに入れた。
ポストに入れた後の男性の顔はとても満足そうで。
入れられた手紙は、そう、の元に届けられたものと同じ封筒、そして大量の数。
「押さえてください。」
「はい。」
竜崎にそう言われ、車を男につける。
男に追いつくと、竜崎が走行中にも関わらずドアを開けて飛び出しその男の肩を軽くポンっと叩いた。
「なっ、なんですか、あなた・・」
「なんですか貴方はそっちのほうでしょう。なんですか、さっきの大量の手紙。」
「えっ、あ、あれはっ、」
「さんへのお手紙ですよね。」
「なっ、え、なんっ・・?」
「(分かりやすいヤツだ・・・)」
捕まえたらどうしてやろうかと考えていたものの、あまりにも相手が分かりやすい上にすぐに白状してくれそうな相手だったので
少し困ったような顔をしていた。(と言ってもやはりあまり表情は変わっていないのだが)
「・・・余計なものいっぱい買っちゃった。」
両手にビニール袋をドサリと持ったは重そうにそれを運びながらため息をついた。
たまたまお菓子売り場に、が集めているおまけ付きのお菓子がセール中で半額になっていたため、思わずまとめ買いしてきたのだ。
そのお菓子だけで一袋あるんだから、たいしたもんだ。
「いや、でもこれで私の心は満たされた気がする。うん、いい買い物をした。」
そう言い聞かせながらヨイショッと気合を入れ歩き始める。
スーパーからの家は近いというわけでもない。かと言って遠いわけでもないのだが。
しかしこう荷物が多いと嫌になるものだ。
ポツリと『どこでもドアが欲しいなぁ・・』なんて非現実的なことをもらしているが、この子はなんでこうも独り言が多いのか。
ザッザッ・・
ザッ・・ザッザッ・・
擦るような足音。
先程からずっと聞こえる。
それもどんどん早く、近づいてくるような。
ふと、流河に言われたことを思い出した。
『しばらくは私かライト君のどちらかと行動しましょう。』
これは流河が心配してくれて言った言葉だ。
それを思い出し、『あ、・・しまった。』と思うが、遅い。
近づいてくる足音に少し怯えを感じながら自分も早足になる。
それにあわせるように、後ろの足音がもっと早くなった。
(つけられて、る・・?・・のかなl・・?;)
そう思い、急いで走り出した。
すると後ろの足音も走り出した。
確実にを追っている。
怖くなりスピードをあげたが、何せこの思い荷物を抱えているためそんなにスピードは出ない。
もう足音がすぐそこに近づき、追いつかれそうだ。
ヤバイッ、と思ったがとっさに取った行動は、─そこで止まった。
「なんっ、なんですかっ、もう!!!」
ゴスッ
鈍い音が、聞こえたのは気のせいではない。
振り向きざまに重みでブォンッと振られたビニール袋が見事に遠心力を利用して相手の腹にボディーブローをかましていた。
「スッ、スイマセン!!!!!!大丈夫ですか!!??;;スイマセンッ、まさかビニール袋が」
「・・痛いですよ・・。」
やるつもりはなかったとは言え、それなりに重いビニール袋が腹に当たったらさぞかし痛いだろうに、そう思い必死に謝るの目の前には
ビニール袋が当たった腹をさすりながらなんとも言えなさそうな顔をしている流河だった。
「りゅ、流河君・・?;」
「はい、なんですか?」
「なんですか、じゃなくて。・・何してるの?てゆうか、今追いかけてきたよね?なんかあった?」
追いかけて来ていたのが流河だと分かり、ホッとする。
の質問に『あぁ。』と何も無いかのように答え、話を続けた。
「もう大丈夫です。」
「・・・はい?」
「もう、手紙、届きませんよ。」
「え?」
「捕まえました。犯人。」
「・・・・・・・マジですか?」
「マジです。」
淡々と喋る流河につられても驚きながらも淡々と返事をする。
「犯人は、さんが働いているファミレスの客で名前は、吉 喜多蔵(よし きたぞう)、36歳独身。」
「え?・・え?」
「働いているさんのことがずっと好きだったみたいです。初めて見たときから。あまりにも好きすぎて今回のような事をした供述してました。」
「・・・なんでそんなに詳しく、」
「私の得意分野なんです。(最も今回のは簡単すぎてがっかりですが。)」
「・・・・・・・。」
『なんで?』と聞きたいところだが、それを聞けばなんだかキリがなくなってしまう。
取り合えず、は流河に言いたい一言をやっとこさ、言った。
「あ、有難うっ・・。」
「どういたしまして。」
「本当に、捕まえてくれたんだ。」
「はい。」
「探偵になれるよ。」
ニコリと笑いながらそう言うを見て『もう探偵なんですけどね・・』と思ったが、『有難うございます。』、そう言った。
一件落着、とでも言うのだろうか。
「それにしても─・・・」
「ん?」
「・・・・さん、意外とたくましいんですね。」
チラリとスーパーの袋に目をやる流河を見て、改めて『ゴメンね、本当にゴメンね、痛かったでしょう?』と慌てて謝る
を見て、それを面白がりながら『痛かったです。』等と言いながらからかい二人で帰っていく姿があった。
****
無駄に長い上にワケの分からない話でスイマセヌ;
最後は家まで流河が袋を持ってくれたに違いありません。にこり