人の気持ちなんてあっけないものだと思っていたのに





こんなにも重くて重くて引きずるものだとは思いもしなかった




後悔の渦に取り巻かれている僕を




君は笑ってみることだろう













































隣の○○君








































この世には出来ないことなんてない

たとえ、それがどんなに時間がかかったとしても

人間という生き物は常にそうだ

日々、積み重ねで生きている

だから進化する

出来ない事も出来ることになる

便利になった

だから、そんな世の中で生まれ落ちてきた人間だから

そうやって論理的に考えてしまう

だけど、出逢ってしまった

この世の中に、【出来ないこともある】ということを





人間という生き物は実に単純な生き物で、難しい生き物だ







人の気持ちを操作することはきっと簡単だけれど

人の気持ちを変える事は、できない























顔を片腕で覆いベッドの上に寝転がるライト。

後悔するにももう遅い自分の先ほどの行動に、悔やみながら。
















きっとは、傷ついた

彼女は優しいから

きっと僕があの言葉を言ってしまったことに、とても大きな罪悪感を感じているだろう

だけど言わずにはいられなかったんだ

言わなければ今までのように『仲のいい幼馴染』でいられたのに

でも、それ以上に僕はが好きだったんだ

16年間、ずっと想いを寄せてきたんだ


きっと僕が傷ついたということに、君はもっともっと傷ついてるんだろう

でも、それも僕の一つの小さな望みだったのかもしれない

僕の気持ちを知って欲しかった

知って、─・・・少しでも振り向いてもらえればと



だけど知ってるんだ

彼女が『好きな人がいる』と言ったそのときから

僕じゃダメなんだ、と

そしてその好きな人というのも知っている


人の気持ちなんて、そう簡単に変えられるものじゃないと気づいた

しなければよかった、なんて恋だとは思わない

だけど、気持ちを言わなければ良かった

そんな恋をした














「・・・・最悪だ。」
































ライトを傷つけた

私はなんて人の気持ちに鈍感なんだろう


ライトのことは大好き

だけど、違うの

『仲良し』の『大好き』で



『愛しい』の『大好き』じゃ、ない





ライトは優しいから

きっと自分が言った事に対して私が罪悪感を抱いてるんじゃないか

って、思って傷ついてる



『仲のいい幼馴染』でいられると思っていたのは私だけだったんだ

ライトはその間に、何を思ったんだろう

どう考えたんだろう


考えれば考えるほど、胸が痛くなる


ライトの言葉に何も言えなかった私を見て

きっと、ライトは傷ついた

多分、ライトは知ってる

私が、流河君のこと好きだってこと



だから、最後に言ったんだ


『ゴメン、なんでもない』


この言葉は、きっとライトがこのことを放棄した証拠














「─・・最低だ、私・・。」





































翌日、いつものように学校に向かおうと家を出た

その足取りはとても重い。

ライトに会いたくないわけじゃない。

ただ、どうしていいか分からなかった。

今日もテストだっていうのに昨夜はろくに勉強もしていない。

いや、勉強なんてどうでもいいぐらいに、ライトのことが気になって仕方がなかった。

















(・・よし、ライトに会ったら、いつもどおり挨拶してっ・・それで・・昨日のこと、言わなきゃ・・)










意気込みをつけて下駄箱に向かう。

テストのために少し早めに来たのでまだほとんど生徒はいなかった。

が、カタンとげた箱をあける音がもう一つそこに響くのに気づき、そっちを見ればに先ほどから気づいていたかのような顔をした流河だった。








「おはようございます。」

「あ・・お、おはよう、流河君・・」

「・・?元気ないですね。」

「そんなことないない!!ホラ、テストだから夜勉強してて寝不足なんだ。」









なんて洞察力が鋭いんだろう、この人は。

そう思いながらそそくさと教室に向かおうとする

『そうですか。』と言いながらもいつもより不自然さを感じさせるの態度を感じながらその後を追い教室へと向かった。

















「あ、今日ね、テストが終わったら国語のノート提出なんだって。」

「そういえばそんなことも言ってましたね。」





気を紛らわせるためか、確認のように流河にそんな話をふる。

カタンと席についてみれば、教室にいるのはと流河の二人きり。

きっといつもならば嬉しいはずなのだけれど今日は、違った。

流河と二人でいることに少し胸の苦しささえも覚えた。

ライトのことを考えれば考えるほどに。

そんなことを考えるの表情は、いつもの明るさはなく、眉間に皺を寄せて切なそうな、苦しそうな、そんな表情だった。

見てみぬふりをする流河だったが、流石に自分が好意を持っている人間にそんな表情をされたら、放っておけない。













さん、」

「・・なぁに?」

「これ、食べますか?」






そう言って差し出したのは、綺麗な色をした飴玉。

透明感のある、吸い込まれそうな色で食べるのがもったいないくらいない色をしている。





「綺麗だね、この飴。」

「外国の飴らしいですよ。」

「へぇ・・食べるの、勿体無いね。」

「でも、いつまでもそうしているとベトベトになって溶けてしまいます。綺麗なものだって、いつまでも綺麗ではいられませんからね。」





なんだか、自分のことを言われているような。

そんな気持ちになった。

どうにもならなくなるうちに、きちんとしなければ。

相手のことを想っているだけの綺麗事だけじゃダメなんだ。






「綺麗なままで、食べたいもんね。」

「そうです。チョコレートだって、溶けてしまったら食べにくくなりますし、なんでも形のあるうちが1番です。」








例えが全部、本当に今の自分のことのようだ。

もしかして、この人私の気持ちが読めてしまってるんじゃないか、というぐらいに。

このまま形も消えてしまうような関係になりたくない。

ちゃんと形があるこのときに、きちんとしなきゃいけない。

ライトに、会って、─・・言わなきゃ。

返事を。

その後がどうなるかは分からないけど、

また仲のいい幼馴染に戻れるかは分からないけど

ライトのことが好きだから、きちんと返事をしなくてはいけない












「うん、有難う、流河君。」

「飴ですか?欲しいのならもっとあげますよ。」

「ううん、そうじゃなくて。─・・頑張るよ。」

「そうですか。」









何も聞かない流河。

が何を悩んでいるのか、どうして元気がないのかは分かってはいないのだろうけれど

何か察したようにそっと助言を落とすように。

はそんな流河に感謝していた。

そんな感情に浸っているのも束の間、二人しかいない教室にガラリとドアが開く音が聞こえた。

ふと反射的にそちらを見てみれば、なんとも言えない顔をして入ってきたライト。

も『あ、』とは思うが、ここはあえて自然に挨拶をして、そう思った。











「ライト、あの、おはようっ・・」

「・・・・・。」




チラリとを見やると、何も言わずに鞄を静かに机の上に置くとそのまままた教室を出て何処かへ行ってしまった。

そんなライトの行動にショックを隠せないのか、少し俯いて泣きそうになる顔を必死に隠す

そしてそんな二人に言わずもがな、不自然さを感じる流河。









「・・ライト君と、何かありましたか?」

「何もないよ?どうしたんだろうね、ライト・・。テストだから、疲れちゃってるのかな?」




流石ライトは勉強家だよね、と付け足すようにそう言うと、わざと明るくしたような笑顔を見せた。








































「─・・・何やってんだ、僕は・・」








教室から出て行き、鍵が壊れ勝手に出入りできる屋上に行くと、ズルっと壁沿いに座り落ちるライトは

額に手を当て、先ほどの行動を悔やむようにそっと、静かに一粒涙を零した。




















涙。

あぁ、泣くのなんて何年ぶりだろう

しかも、─・・・誰かのために、だ。

が傷ついてるって、分かってるのに、どうしてあんな行動をしたんだろう

絶対に、嫌われたかもしれない




あぁ、そうだ

もうそれで、いい

何もかも終わらせてしまえ

幼馴染だという関係も、名目上のもので、─・・・なかったことにすればいい


─・・分かってる

そんなことしたってダメなこと

ただ逃げてるだけなことも

何が怖い?

僕は何が怖いんだ?

あぁ、そうだ、に嫌われるのが怖い

『好き』だと告白をして、嫌われるのも、怖い

どうしてあの時、の返事を聞こうとしなかったんだろう

たとえダメだと分かっていても、どうして聞かなかったんだろう


怖かったんだ


告白をしたことで今までの関係が崩れるのが

もう元に戻れなくなるって


だけど、そうしてるのは

今の僕だ




分かっているのに、─・・・気持ちがこんなに重い物だったなんて、知らなかった












































今日のテストも終わりもう帰ろうと支度をする生徒達。

ライトももそれは例外ではなく。














「流河君、バイバイ。」

「さようなら。気をつけて帰ってください。」

「ありがと。」







いつもなら笑顔で言ってくれるはずの言葉なのに

今日の笑顔は笑顔じゃなかった

無理して笑っている

そんなような








そう思いながらいつものように、親指の爪をガリっと噛んだ。

そして見つめる先には、鞄に荷物を入れ帰ろうとするライトの姿。

すかさずそれを引き止めるように名前を呼んだ。










「ライト君。」

「なんだ、流河か・・どうしたんだ?」

「今日、暇ですか?」

「・・・テスト前に聞くようなセリフじゃないよな。」

「でも暇でしょう、どうせ。」

「どうせは余計だよ・・。」

「一緒に帰りませんか?」

「珍しいな。」

「えぇ。とても不本意ではありますけど。」

「ったく、だったら」

「でも、大切な人の無理な笑顔を見ているのは辛いんです。」

「─・・・・へぇ。」






流河のその言葉はライトにもすぐに理解できた。

そんなライトの様子を見て思い切り単刀直入に聞きたいことをライトに告げた。





さんと何があったんですか?」

「・・単刀直入だな。」

「いいから、質問に答えてください。」

「尋問みたいだ。」

「癖です。」





どんな癖だよ、と不満を抱きつつも真っ直ぐとライトから視線を外さない流河を見てため息をつく。

そしてポツリと、流河の質問への返答を口に出した。








「昨日、─・・・に告白した。」

「!・・・そうなんですか。・・で?」

「で・・って・・あまり驚かないんだな。─・・・最悪だ。」

「何がですか?フられたんですか?」

「・・を、傷つけた。」

「・・・それで?」

「それでも何も、見ての通りだろ?が元気がない理由。」

「そうですか。」





上を向きながら、ふむふむ、とでも言いたげな表情をすると、またライトの方を見る。





「それで、貴方は何もしないんですか?」

「何もしないって・・・何もすることないだろ。」

「あります。」

「なんだよ・・」

「それは、もう分かってると思いますけど?」

「お前、ほんっと気遣いってもんないんだな。」

「すいません。」

「・・・・・どうしていいか分かんないんだよ。」

「天才ライト君がですか?それは珍しい。」

「・・・・。」






茶化すような流河の言葉に思わず反論しそうになるライトだったが、流河の性格上それは仕方のないことだし

ここで何を言ったって聞くようなヤツではない、こっちが疲れるだけだ、と判断したライトはハァと、一つため息を落としまた口を開いた。






「・・・お前に分かるかよ、僕の気持ちが・・」

「分かりませんよ、私はライト君じゃないですから。」

「だったら」

「でも、ライト君がどう思っているか、というあくまでも予測ならつきます。」

「・・・。ほんと、お前って嫌なヤツだよな。」

「そうでしょうね。」

「・・・今まで、ずっと仲のよかった幼馴染だったのに、・・・それを僕が崩したんだ。」

「・・どうしてライト君がそんな突発的に告白するなんてそんな成り行きになったのかまでは分かりませんが・・、まだ、崩したというには早いんじゃないですか?」

「なんでそう言える?お前に何がわかるんだよ。ずっと好きだった幼馴染に告白して・・でも、そいつには好きな人がいるのを知っていて・・・、

挙句、告白したくせに返事も聞かずに逃げ出したんだよ、僕はっ、怖くてっ・・でも返事を聞いてとの関係が崩れるのが怖くて、逃げ出したんだっ、・・・崩したのは、僕だ。」

「それなら、・・間に合うじゃないですか。」

「何言ってるんだよ、お前は・・だから、」

「もう一度、きちんと想いを告げればいいじゃないですか。」

「・・・。」








流河の言っていることが最初は分からなかったが、次第にその言葉の意味を理解するライトの顔は呆れたような、そんな顔だった。

いたってシンプルな答えを出す彼に。








「きっと、さんは、ライト君の気持ちにちゃんと応えてあげたいと、思ってるはずです。」

「・・・そんなの、分かってる。」

「じゃあ、いいじゃないですか、それで。」

「・・・だけど」

「私は、さんの悲しそうな顔を見たくありません。」

「・・・・。」

「泣いてる顔も見たくありません。」





流河はそれだけ言ってクルリと背を向け教室を出て行った。

そんな流河の後姿をライトはただ見つめるだけだった。










「─・・一緒に帰るんじゃなかったのか?ほんと、自分勝手なヤツだよな・・」





































どうしよう

ライトに嫌われちゃった・・かな・・

あのとき、もっと早く返事を言ってれば、・・・・・

嫌だな・・ライトともうお喋りできなくなるの・・・

どうしよう・・

どうしたらいいんだろう

どうしてあの時、ちゃんと自分の気持ち、言わなかったんだろう

どうしてあの時、もっとライトのことを考えてあげることが出来なかったんだろう



本当に、私は人の気持ちに鈍感だ



嫌なられて当然かもしれない

だけど、それじゃ困るの

ライトに、嫌われたくないの

自分勝手かもしれないけど、

ずっと・・・、今までの私たちでいたい
































─・・ピンポーン
































「・・・・誰だろ・・。なんでいっつもタイミング悪くインターホン鳴るんだろう・・嫌だな・・出たくないなぁ・・」









いつものように居留守を使ってやろうか、そう思うだったが、そう思った瞬間に二度目のチャイムが鳴ったので

仕方なく重い腰をあげて玄関先へと向かった。

悪い癖だ、誰だかも確かめずに客人を招き入れるのは。













「・・ハァイ・・?」












ガチャリとドアを開ければ、息を切らせてドアの前へ立つライト。

その姿に驚きを隠せないはしばしそんな彼の姿を見つめたが、すぐに慌てて声をかけた。









「ど、どうしたの?ライト、そんなに息切らして・・大丈夫?」

「話が、・・・あるんだ・・っ。」







弾む息に混じりながら言葉をポツリポツリと出す。

きっと、学校から走って、急いでここまでやってきた証拠だ。

額には、軽く一筋汗が滴り、肩で息をしている状態の彼からの話を聞かないわけがない。












「取り合えず、・・ね?走ってきたの?大丈夫?休んでからで、いいよ?」





ライトの様子を気遣うようにそう言うが、ライトは首を横に振り、言葉を続けた。

ちゃんと、言いたかった言葉を。









「ずっと、・・・のこと、好きだった。」

「あ、・・え・・?」

「だけど、・・これを言ったらとの関係が崩れると思った。今まで、・・ずっと仲良くしてきたことも、全部全部。」




ライトがそう話す言葉一字一句噛み締めるように聞いているは、コクン、と頷いた。





「だけど、・・崩したのは僕だ。からの返事も聞かずに、逃げ出した。」

「それは、私がすぐに」

「いいから、聞いててくれれば、いいから・・。怖かったんだ。返事を聞くのも、幼馴染の関係が崩れるのも、何もかもが。だけど・・・

そうじゃなくて、本当はちゃんと、向き合わなくちゃいけなかったんだよ。」

「・・ん・・」

「だから、言うから、聞いて。」




がコクン、と小さく頷くのを確認すると、安心したようにふっと笑顔を見せながら、ライトは言った。







が、好きです。」

「有難う、ライト。でもね、私好きな人がいるの。・・ライトの気持ちには、応えられないけど、・・・今まで通り、仲良くして、ください。」





ペコンと、深くお辞儀をするに対してライトも軽く頭を下げて言葉を続けた。






「こちらこそ、よろしく、・・・・お願いします。」





その言葉にニコリと笑い合うとライトは、いつもの仲良しな幼馴染。











「なんか失恋したけどさ、すごく、すっきりした感じ。」

「そういうもん?」

「そういうもんなの。」

「そっか。」

「でも、は上手くいくように、ちゃんと僕も祈ってるよ。・・まぁ祈らなくても大丈夫そうだけど。

「え、あ・・・いや、・・う、うん・・あ、ありが、とう・・」

「すっごい照れてない?」

「だって急に私に話振るからっ・・」

「ははっ、頑張れよ。」
























諦めきれたわけじゃないけど

好きだって気持ちはまだ、十分に残ってるけど



すごくすっきり晴れたような、そんな気分だった

今は、好きな人の恋をちゃんと応援出来るような、そんな気持ちになった

が、傷つかないようにそいつとの恋を見守ってあげたいって、思える












相手が流河だってのが気に入らないけどな。


















****

ライト君の青春。
ちゃんのこと好きだけど、ちゃんと区切りはついたようです。
一つ上の男になりました。ワラ