山積みにされたたくさんの資料の紙


ずっとつけっぱなしのパソコン


飲みかけの紅茶






そんな光景を目にしても



私は何一つとして分かっていない



だからもっと知りたい

















































頭脳は大人、中身は子供 私の隣は名探偵
隣の○○君













































カタカタ、軽快に鳴るキーボードの音

カチカチ、と、マウスでクリックする音

パラパラ、と、山積みにされた資料をめくる音



パソコンの前で眉間に皺寄せてずっと座っているのは、大好きな、ヒト。































「お茶、どうぞ。」

「あ、ありがとうございます。」

「すいません。少し、待っててあげてください。」

「あ、それは全然大丈夫ですっ。ただ、」

「はい?」

「本当に、忙しい人なんですね。」













さっきまでソファに二人で座っていたのに、今はモニターのに座って難しそうな顔をしている流河。

それは急の事だった。

ワタリが持ってきてくれたお茶を飲みながら他愛もない話をしているときだった。




































「そういえばさ、テストの結果、出てたね。」

「はい。」

「1位、流河君とライトが同じだったね。」

「・・・・悔しいです。」

「えぇー、でも1位ってスゴイよー。私なんて一ケタなんて入れないもん。せいぜいクラス順位で一ケタ入れるくらいだなぁー。」

「だってライト君と一緒なんて嫌ですよ。さんがそうやって褒めてくれてるのに・・ライト君も一緒に褒められてるみたいで嫌です。」





さんに褒められるのは私だけがいいです、なんて言いながらムスっとしている。

本当に小さな子どものようだ。

そんな竜崎を隣で見ていて、思わず笑みがこぼれた。






「・・?何がおかしいんですか?」

「いや、流河君て可愛いね。」

「・・・・あの、それって褒め言葉として受け取っていいんですか?」

「うん。そういうトコ好き。」




なんのためらいもなく、というか彼女にとってはごく普通に『こういうトコロが好き』という意味だったのだろうが、

物凄く嬉しそうにその言葉を聞く竜崎。『私もさん大好きです。』なんてまた告白している。

どうでもいいが、この男ったら。

結ばれた瞬間積極的すぎやしないか、という突っ込みもしたくなるが、きっとこれが彼の本来の姿なんだろう。

きっと今までは猫かぶっていたんだ。(言いすぎだ。)










「わっ、ちょ、ちょっと、りゅう、流河君ッ・・」

「なんですか?」

「あ、あの、は、恥ずかし」

「だってさっき『後で』って言ってくれたじゃないですか・・。」








ダメですか?と、捨てられた子犬のような目で訴えてくるので恥ずかしながらも思わず『うん』と頷いてしまう

よっしゃー!!とばかりにギューっと抱きつく竜崎。(この策略家め

傍から見れば押し倒そうとしているようにも見えたが、そんなの竜崎は気にしない。

もう己の欲望のままにしている。








さん可愛いです。」

「・・あ、ありが、とう、・・・」

「・・・大丈夫ですか?顔真っ赤です。」

「(君のせいだよ!!君の!!)」






そう思うも、竜崎が嬉しそうにしているもんだから言えない。

そんな嬉しそうな顔されたらなんだかこっちまで嬉しい、なんて思っていると

申し訳なさそうな顔をしながらワタリがヒョコリと竜崎に声をかけた。








「竜崎。」

「なんだ、ワタリ。」

「お取り込み中申し訳ないのですが・・先ほど送られてきた新しい資料に目を通しておいてもらえますか?」

「・・・・分かった。」






ワタリが申し訳なさそうに言うと、渋々それに応える。

なんのことだかさっぱり分からなさそうな顔をしているに気づくと、ニコリと笑いもう一度を抱きしめた。





「すいません。少し仕事が入ってしまいました。・・・すぐ終わらすんで・・あの、待っててもらえませんか?」

「うん、全然構わないけど・・・寧ろ私、邪魔じゃない?」

「そんなことないです!!いえ、いてくださいっ。いてくれないと私仕事できませんっ。しませんっ。」





世界のLが何を問題発言しているのだろうか。

その発言にワタリも少々驚いたような素振りをしたが、すぐにいつものように微笑みながらにアイコンタクトで

『お願いします。』と伝えた。







「うん、ちゃんといるから、お仕事、頑張ってね。」

「はい、頑張ります。」

「ここにいるよ。」

「はい。・・・なんか、」

「ん?」

「新婚の夫婦みたいな会話でしたね。」





嬉しそうにそれだけ言って資料が山積みにされたテーブルへと向かっていった。

言われた当の本人は先ほどよりも顔を赤くして資料を手に取る竜崎をソファに座りながらじっと見つめていた。

ヒョイ、と指でつまむようにして資料を手にしながら目を通し、見終わると床にポイっと投げ捨てるように置いていく。

それの繰り返し。

その時の竜崎の表情はいつもと変わらないような気もするが、やっぱり何処か真剣での目をひくものだった。


































「本当に忙しい人なんですね。」

「でも、貴女が来てくれてなんだかいつもより顔色もいいし、やる気もいつもよりもあるみたいです。」

「そうなんですか?」

「はい。竜崎は貴女のことが本当に好きなんですね。」

「え、あ、いや・・あの・・」

「いつも、さんのことを話してくれてたんですよ。学校でどんなことを話しただの、今日は一緒に勉強をした、なんて・・」

「そうなんですか。・・な、なんか照れるなぁー・・。」

「竜崎はあまりそうして感情を表に出したり、口に出したりするようなタイプではなかったんですが・・さんと会ってからなんだか変わってきましたね。」






優しく微笑みながら、嬉しそうにそのことを話すワタリの顔は本当に孫を見ているおじいちゃんのような、そんな感じだった。

【Lの仲介人】という立場であるワタリは、きっと竜崎のことをそれ以上に孫のようにも思っているのかもしれない、はそう思った。







「【L】として仕事をしてただけだったためか、竜崎は人よりも何かの感情が薄い・・欠落しているような、そんな淡白な感じだったんです。」

「そうなんですか?不思議な子だなぁとは思ってたけど・・・そうは見えなかったです。」

「常に事件と背中合わせでしたから、楽しいということも、人を好きになるということもよく分からなかったんでしょうね。

・・・でも、さんと会ってからそれが変わっていったんですよ。竜崎自ら『楽しい』なんて言ったりするんです。・・・竜崎を変えたのはさんですね、有難うございます。」

「え、お、お礼を言われるようなことはっ・・」

「ふふ、今話したこと、竜崎には内緒にしてくださいね。」

















ニコリと笑って人差し指を口の前に立て、内緒ですよ、というワタリさんもなんだか楽しそうだった。

あぁ、きっとワタリさんすごく嬉しいんだ。

流河君が変わったことが。

流河君がどんな子だったのかはよく分からないけど・・・でも、事件と常に隣り合わせで過ごしてるなんて、そりゃあ楽しさも忘れてしまいそうだ。

ワタリさんは私のおかげだなんて言ってくれたけど、もし本当にそうなら、すごく嬉しい

少しでも役に立ててたんだ。

いっつも勉強教えてもらったり、助けてもらったりしてたけど、そういうことで私が流河君の役に立ててたなら、嬉しい。













資料を見ながらきっと砂糖がたっぷりであろう紅茶をズズっとすすったり、手元に置いてある色採りどりのお菓子を口に放り込んだり。

たまに、気になるのかの方をチラっと見てはなんだか嬉しそうな目をしてまたカタカタとキーボードを打ったりしていた。

流河が自分の方を見るたび、『頑張って。』の意味をこめて手をヒラヒラ振ってニコリと笑うが、きっと今流河を動かす一番の原動力なんだろう。

作業を始めて小一時間ほど経つと、ヒョコヒョコとの方に歩いてきた。












さん、」

「休憩?お疲れ様、あ、そうだ、ワタリさんが」






の言葉を遮り覆いかぶさるようにしてギューーっと抱きついてくる。

突然のことに思わず目を真ん丸くするが、ずっとパソコン・資料とにらめっこでさぞ疲れているだろう、そう思い

もそっと流河の背中に腕を回した。ものすごく、恥ずかしそうにしながら。







「・・・癒されますね。」

「・・そう?」

「はい。・・・・ずっとこうしてたいです。」

「あは、世界の人が【L】を待ってるよ。」

「私には、世界なんかよりもさんの方がずっとずっと大事ですよ。」





そんなことを言われて嬉しくないはずがない。

思わず、言葉が出なくなる。

何か、言葉を返さなければ、そう思っていれば、竜崎がまた言葉を続ける。






「だから頑張りますね。・・・さんが、ずっと平和に幸せに暮らせるように少しでも世界の事件を解決してきます。」

「・・・頑張りすぎて体壊しちゃうのは、嫌だよ?私流河君が倒れちゃったりしたら、嫌だよ。」

「大丈夫です。こうやって傍にいてくれれば常に元気満タンです。」




えい、と力こぶを作るように腕を掲げてみせる竜崎。





「もう一頑張りしてきます。・・・すいません、後少しで、」

「いいよ、大丈夫。流河君が終わるまで待ってるから、ね?」

「・・有難うございます。」






































途中途中、の様子を気にしながらも仕事を順々に進めていった。

ふと、またチラリとに目をやると、さっきまでソファに座っていたの姿がポツンと先ほどの視界からいない。

否、視界からいないのではなく、そのソファに寝転がるように丸まり静かに寝息を立てていたため、流河の見ていた視界から少し下になっていただけであった。。

待ちくたびれさせてしまったのか、と思うとなんだかとても申し訳ない気がしたが、そっとに近づくとそう思いつつも少し幸せな気分にもなった。









(・・寝顔。可愛いです。)





そっと、愛しそうに頬に触れるとくすぐったいのか少し身をよじらせる。

その身をよじらせた瞬間、当然ベッドの上よりも幅が狭いソファの上なもんだから漫画のようにソファの上からストンと落ちてしまった。













「っ、たー・・」

「おはようございます。」

「落ちちゃったよ。」

「こんなところで寝ちゃうからですよ。」

「失敬失敬。」

「・・・帰りますか?」

「終わったの?」

「いえ、・・まだ、」

「じゃあまだいるよ。」

「でも、なんだかずっと待たせてるので・・疲れたでしょう?」

「そんなんじゃないよ。それに、流河君のほうがよっぽど疲れるでしょ、ずっとパソコンとにらめっこ。」

「いつものことです。それに、今日はさんがいれくれてるので、なんだか仕事がはかどります。」

「・・うまい事を言うね。」

「本当のことです。」

「そんなこと言われたら、帰れって言われても帰らないよ、私。」

「有難うございます。・・あぁ、そうだ。」







こっちに来てください、と言いながらの手を引っ張り違う部屋へと案内する。

流河に案内されたそこにはなんだかアンティークな置物などが飾ってあったり、なんだか見ているだけでため息が出そうな綺麗な部屋。

なんだかどれも高そうなものばかりだ、そう思いながらキョロキョロとその部屋を見回した。






「何もないあの部屋でずっと待っているのはつまらないでしょう?ここの部屋ならテレビもありますし、良かったらここにいてください。」

「え?」

「え?なんですか?」

「あ、ううん、有難う。」





気を使ってこんな事を言ってくれたのだろう、そう思うと嬉しい。

が、流河を待っている時間は長いが、その頑張っている姿を見ているは、嫌じゃない。

というよりも、流河と同じ場所に一緒にいたい、という気持ちが強かった。






「じゃあ、何かあったら呼んでください。」

「うん、ありがとう。」

「寂しくなったら会いにきますから。」

「あはは、隣の部屋なのに。」






ヒョコヒョコとまたさっきの部屋へと戻っていく流河の後姿を見送ると、少し寂しくなった。

隣の部屋に、いるのに。

すぐ近くにいるのに。

でも、壁一枚はさんだ所でずっとパソコンと資料と睨めっこしている竜崎が恋しい。

竜崎に看過されてしまったのだろうか、そのまま急に後ろから抱きつきたくなった。

文句も言わずただ黙々と【L】として、頑張っているその背中を少しでも暖められたらいいのに、そんな思いでいっぱいだ。

フランス調の綺麗な部屋、思わず見惚れてしまうアンティークの置物、なんだか中世にトリップしたようなこの部屋は一人でいるのは少々つまらない。














「・・・・どうしようもないなぁ。」




















思っている以上に自分がどうしようもないほどに竜崎に惚れ込んでいたのに気がつく。

好きだ好きだとは以前から何度も思うことがあったが、こんなにも彼が愛しいなんて。

思いが通じて、結ばれるとどうしてこんなにも貪欲に彼を思ってしまうのだろう、恋とはそんなものなのだろうか。

3分も経たないうちに、の足は自然と隣の、竜崎がいる部屋へと向かっていた。





















さん?」
















パソコンに向かう竜崎の後ろにちょこんと経ったと思えば、その隣に座る。

そして邪魔になるんじゃないか、と思いつつも彼の肩に自分の頭をコテンと乗せた。

その行動に少々驚いたらしく、目を丸くしてを見る竜崎だったが心なしか頬が少し赤に染まっているようにも見えた。












「・・・・寂しくなったから会いにきました。・・・なんて。」

「・・びっくりですね。さんが私よりも先にそんな事言うなんて。・・・・なんだか、こそばゆいです。嬉しいです。」

「ここ、いてもいい?」

「どうぞ。寧ろいてくれたほうが嬉しいですよ。」

「ありがとう。」






の頭を優しく撫で嬉しそうに笑うと、また資料をパラパラとめくりはじめた。

隣でそれを物珍しげに見ているには、それがなんの資料なんだかは全く分からないが、ただ難しそうな事が書いてあることは確かだ、というのは分かった。

その中に紛れていた1枚の資料に目がついた。










(・・・これ、この前の、)









目に付いたのはこの前もラジオで聞いていた例の『迷宮入り寸前イギリス連続放火殺人事件』の資料。

それを見て改めてこの人は本当にLなんだ、と思うと同時に、なんだか自分はすごい人の隣にいるんだ、と少し感動も覚えた。












「どうしました?」

「え?いやぁ・・・なんか、Lなんだね、流河君。」

「・・はい?そうですよ。」

「なんかね、信じられなかったんだよ、ホントは。」

「でしょうね。『Lです。』と言っても信じてもらうのが一番大変なんです。」

「だって、なんか名探偵て言うくらいだから、おじさんとかかと思ってた。」

「そうですね、きっと大概の人はそう思っていると思います。だからこそバレないで済むんですが。」

「そしたら、高校生だよ。」

「はい。」

「コナン君みたい。」

「あぁ・・なんだかありえない様な探偵のマンガ・・」

「なんか素敵ね。こうやって私の隣に世界の名探偵がいるの。」

「はい。今は世界のLではなく、さんだけのLです。」

「・・・・・・照れるなぁ。」

「照れなくていいですよ。」

「だって真顔で言うんだもの。」

「そういうのは、嫌ですか?」







顔を覗き込むようにしてそう聞いてくる流河の顔が、いつもより近くて少し心拍数が早くなる。

目をぱちくりさせながらの答えを待っている。








「嫌じゃないよ、ううん、嬉しいよ。」










ニコリと笑ってがそういうとすこぶる嬉しそうな素振りを見せる流河。

彼女の一つ一つの言葉や行動にいちいち反応を示し、それに対し嬉しそうにしたり不安そうにするのもきっとワタリが言っていたように

今まではなかったのだろうか、そう思うとなんだか嬉しい。

自意識過剰かもしれないが、自分のことでそうして思ってくれたり、感情を露にしてくれるのは本当に嬉しいことだ。

同時に、Lという存在は今までそんなことも味わったことがないのかと思うと少し悲しくなった。

可哀想、ではなく、悲しい。

本当はこんなにも表情を持っている人なのに、それを今まで無意識のうちに押し殺していたのだとしたら、なんて悲しいんだろうと。

ワタリが嬉しそうにしていたのが分かるような、そんな気がした。














さん・・マズイです・・」

「ん?どうしたの?」














そうも思っている時に、急に竜崎が眉間に皺を寄せながら困ったような顔しての名前を呼ぶもんだから、

も少し不安そうに竜崎の顔を覗き込み、様子を見た。

ずっとパソコンに向かって、ずっと同じ体制で仕事をしてるもんだから少し疲れたのだろうか、そうも思い心配したのに。














「キスしたいです。」
















なんて意表をつくんだろうか、この男は。

もちろんそんなことをいきなり真顔で言われたは今日一番とも言えるであろうくらいに顔を真っ赤にしている。

口をパクパクさせながら言葉を必死に出そうとしているのだけれど緊張しているのか言葉が出てこない。

そんなを余所に竜崎はの頬に手を添えてもうこのままいっちゃいますよ、とばかりにスタンバイしている。

準備万端である。













「えっ、あっ、キッ、ちょっ、」

「ダメですか?」

「ダダダダダメじゃないですけどっ、」

「していいですか?」

「していいですけどもっ・・・あっ、違う、そうじゃないっ、あのっ、」

「なんですか?」

「・・もう、すっごい、いっぱいいっぱいなんだよ・・ホントに・・」

「何がですか?」

「・・・好きすぎて・・」

「!」






顔を俯かせながらボソボソとそう言うの言葉に驚きつつ。

でも顔は物凄く嬉しそうだ。今までにないくらいに。









「あぁ・・もうなんでさんそんなに可愛いんですか・・・」

「・・褒めても何もでませんよ。」

「はい、・・・・・え?ダメですか?」

「え?」

「キスしたいです。」

「(本当、どうしてこんなに心臓に悪いんだろう、この子は・・)」







ダメですか?と顔を覗き込む竜崎に負けたのか、コクンと頷く

彼女だって、キスされるのが嫌なわけではない、ただ恥ずかしいだけだ。

からお許しをもらった竜崎は至極嬉しそうにそっと頬に手を寄せて軽く口に触れるくらいのキスをした。

ぎゅっと目をつぶり、竜崎からのキスを受け入れた。














「可愛いですね、さん。」

「恥ずかしいだけです。」

「それが可愛いんです。」

「・・・そうです、か。」

「これでもっとやる気が出てきました。」

















竜崎の隣にいると本当にドキドキしっぱなしで困る。

でも、隣にいることで竜崎が喜んでくれて、頑張れるのなら何処までもこの人の隣にいたい、そう思うだった。














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今時中学生でもこんなに恥ずかしがりませんな。笑
普段はおちゃらけたりしてるけどすごく純な子なんです、彼女は。笑