ずっとずっと、このまま幸せが続きますように
そう思うのは、今隣で笑っている貴女がいるから
その笑顔が自分のものだけになればいいのに、なんて浅はかな考えを許してくれますか
頭脳は大人、中身は子供 私の隣は名探偵
隣の○○君
「この案に不満がある人ー、手挙げてくださーい。」
「はい。」
ただ一人、その言葉に手を挙げるのはムスっとした表情で相変わらず猫背の、竜崎。
なんの説明もないこの状況に、何がなんだか分からない人も、大体見当がつく人もいると思う。
ことの始まりはホームルームの時間であった。
朝が言っていたように、今度行われる文化祭の出し物の企画を皆で出し合っていた。
やはり文化祭ということで皆張り切っているのか、次々に自分達がやりたいものを挙げていく。
お化け屋敷、迷路、アイス屋、劇、定番とも言えるであろう案がたくさん出てくる。
しかし、ここは機をてらって何か変わった物を、と提案してくる者もいる。
「メイド喫茶!!」
クラスのお祭り好きな男子の一人がそう発言した。
まぁ、これも流行の流れでいけば定番と言えるのだろうけれども。
これまたの言った通りである。
その瞬間、ギロリと竜崎の睨みがその男子へと向けられたが、今コイツらは文化祭のことで頭がいっぱいなので
そんなものに気づくはずもなかった。そして挙句、その男子の発言にクラスのほとんどの者が感嘆の声を上げてもうそれに賛成であろう方向へと向かっていた。
しかしそんな中、竜崎だけは『冗談じゃない』なんて顔をしてどうにかしてその案を阻止しようと考えていた。
隣で座っているは、『・・・絶対に反対の顔してるなぁ・・』なんて呑気に、恋人のワナワナとした表情を見つめてそう思っていた。
そして今に至る、というわけなのだが。
「反対は・・・えーと・・流河君一人だけですね。」
「なっ・・!!」
「多数決で、圧倒的に賛成の支持が多いのでうちのクラスの出し物はメイド喫茶」
「待ってください!!どうして皆さんメイド喫茶に賛成なんですか!?」
焦っている。
表情は至って変わらないが、いや、若干眉間に皺が寄っていて不満そうな顔には見えるが、いつもの飄々とした表情で珍しく皆の前で発言をした。
発言と言っても自分の不服な気持ちを述べようとしているだけであるが。
「どうしてって・・」
「まぁ、やっぱり流行に乗ってっていうか・・」
「お客さんもいっぱい入りそうだし・・」
「うまくいけば賞も取れそうだし・・」
「何よりメイドっていうのが見てみたいよな。」
これはもう竜崎一人の反対の声だけではどうにもならないくらい、クラスの気持ちはメイド喫茶に染まっている。
ぬぬぬっ、とでも言いたげな顔をして口を尖らす竜崎。
そして『絶対嫌です絶対嫌です絶対嫌です。メイド喫茶なんて嫌です。』とブツブツ言いながら背中を丸くして拗ねていた。
竜崎が拗ねようが拗ねまいが、クラスの出し物がメイド喫茶になることはほぼ、というか確定であった。
「じゃあ、文化祭の出し物はメイド喫茶で決まりでーす。」
文化祭実行委員のこの声にワーッ、と盛り上がる声の中、一人ムスゥッとしながら竜崎はギリギリと悔しそうに親指をかじっていた。
あまりの悔しさと(負けず嫌いだからね☆)の身の危険(竜崎が勝手にそう思っているだけね)を思いすぎていつも口にあてるだけの
親指を、ギリギリとかじっていた。それを隣で見ていたは当然驚いた。
「うっわっ!!;流河君っ流河君ッ!!!血!!血が!!!親指!!かじりすぎだよ!!」
ギリギリと悔しさをこめてかじってしまったためか、親指が流血していた。
にそう言われ、ようやく自分の親指の異変に気づいた竜崎は時差反応で『痛ッ、痛いですっ。』なんて言っている。
「どうしたら血が出るまでかじっちゃうの。もう・・」
「・・さんがメイド喫茶のメイドになって他の男共からチヤホヤされるのを想像してたら自然に力が入ってました。」
「いやいやいや・・誰がメイドやるとか決まってないから大丈夫だよ、・・あぁ、あった。はい、バンソウコウ。」
ゴソゴソとポーチの中からバンソウコウを取り出すと親指の血を軽くふき取りバンソウコウをそこに巻いた。
『有難うございます。』なんて言いながら少し嬉しそうにしている竜崎。
「準備がいいんですね、さんは。」
「そんなことないよ。・・・もうかじっちゃダメだよ。」
「ハイ。」
おかしな会話である。
『もう親指かじっちゃダメだよ。』なんて、小さい子でもそうそう言われないであろうに。
大のいい男がそんな事を言われているなんておかしなものだが、なんとなく、竜崎が言われているのならばあまり違和感を感じないのは何故だろうか。
「じゃあ、メイド喫茶で決まりってことで、そのメイドを誰にしようか決めたいんですけどー、」
文化祭実行委員のその言葉にハッとしてと話していて朗らかな雰囲気だった竜崎の表情が一変した。
絶対ににはやらせまい、そんな顔をしている。
は容姿も整っていて可愛らしいし、告白の手紙をもらったり、言われたり、ストーカーの被害にあうくらいだ。
これはきっとクラスから推薦されるに違いない、竜崎はそう踏んだのだ。
「周りの人と相談してもいいので、推薦したい人を数人あげてみてください。」
文化祭実行委員がそう言うと、ザワザワとクラスの者が自分の周囲の人と話し合っている声が聞こえる。
すると、と竜崎の席へライトとリコがやってきた。
そして、リコがに発した第一声はやはり竜崎の予想を的中させるものであった。
「ねぇねぇ、やりなよー。絶対似合うし可愛いよー。」
リコがそう言うとガタン、とイスを後ろにひっくり返しコケている竜崎の姿。
思わずもライトもリコも噴出した。
「ははっ、どうしたんだよ流河。」
「何?何が起きたの、流河君って意外と茶目っ子だね。」
「だ、大丈夫?ちゃんと座ってないから落ちちゃうんだよー・・。」
ライト達がそう言うも、竜崎はそのコケた体制でワナワナとしながら言葉を発する。
が、その間抜けとも言える格好のままのためあまり迫力はない。
「ダダダダダッ、ダメですよ!!!ダメです!!さんはダメです!!!」
「・・・どうしたの、流河・・・いつも以上におかしいぞ。」
「え、はダメって・・別にいいじゃん、絶対可愛いもん。」
「だからダメなんですよ!!!もう・・嫌ですよ、さんに変な虫がいっぱいくっついてしまいますっ・・そんなの見たくないです。」
「お、落ち着いて流河君・・。」
あぁぁ、と慌てている竜崎をなだめているを余所に、ライトとリコはわけが分からなそうな顔をして二人の様子を見ていた。
しかし、しばらくしてリコが大げさに『あぁ!!』と、ニヤニヤ笑いながらその状態を把握した。
「もしかして、二人、付き合ってるの?!」
リコのその言葉に一瞬、ライトがピクリと反応したが、顔を赤くして照れているの幸せそうな顔を見てすぐに平然とした顔に戻す。
「へぇ、そうなんだ。いつから?」
「え、えっと、」
「昨日からです。」
「に聞いたんだ。」
「さんに聞いても私に聞いても答えは同じです。」
「ホントお前はああ言えばこう言う・・」
「よかったじゃん、ッ。」
「え、あ、うん、はは・・」
「照れなくていいじゃないー、もうさー、いやー、いいねっ、青春だねっ。」
なんだかばばくさい事を言うリコを余所に、ライトは竜崎の耳元でボソっとこう告げた。
「のこと、泣かしたりしたら絶対に、許さないからな。」
「何言ってるんですか、そんなこと絶対にしません。ライト君こそ羨ましいからって妬まないでくださいね。ハゲますよ。ツルっとズバっといきますよ。」
「なに細木数子みたいに言ってるんだよ!!ハゲねぇよ!!」
「何言ってるんですか・・・ライト君、貴方自分の髪の毛を過信しすぎですよ、ヤバイですよ、もう薄いです、というかヅラっぽいです、あぁ、そうでした、ヅラでしたっけヅライト君。」
「久々だなオイッ!!!思い出したかのようにそのあだ名で呼ぶなよ!!」
なんて、ライトと竜崎がそうこう言い合いしている間にいつの間にかとリコの周りにはクラスの皆がもうそれぞれに意見を出し合っていた。。
「えーと、話し合いじゃちょっと決まらなさそうなんで、誰にやってもらいたいか決まったら今から配る紙に候補者の名前を数名書いて前に出してくださーい。」
実行委員がそう言い、テキパキと白紙の紙が配られていく。
紙を配られると、皆それに候補者の名前を書き実行委員にその紙を渡していく。
渋々と竜崎もその紙に適当な名前を書きそれを無造作に渡す。
渡された紙を1枚ずつ見て、実行委員はそれをまた1枚の紙にまとめていった。
「じゃあまとめた結果を言いまーす。えーと、候補者の名前にあがった中で一番多かったのが・・・さんなんですけど・・・さんでいいですかー?」
「え!?私?・・いや、ちょっ、私裏で調理する人がいいなぁ、・・なんて・・。」
自分が呼ばれるとは、そう思うが否や、チラリと竜崎を見てみればワナワナとしている。
あぁ、やっぱり・・、と思い、付け足すように調理係りがいいと申し出た。
しかし皆がそんな様子に気づくはずもなく、次々とをプッシュしようという声が上がる。
「えー、でもちゃんにやってほしい。」
「絶対お客さん来るって。男の子の。」
皆よく勝手なことを言っている。
しかし、もあまり気乗りしていないし、何よりも竜崎がそんなの許さない。
『そんな格好私の前だけにしてください』とでも言いそうだ。
チラリと様子を伺うように竜崎を見てみれば案の定、目を大きく見開いて『ダメですダメです』と身振り手振りで伝えようとしている。
しかし、大勢の友達にそんなにお願いされて断れるようなじゃない。
そういう所でお人よしなもんだから竜崎がどんなにダメだと訴えてもきっと首を縦に振るであろう。
「ホラ、あれ・・・メイドとかあんまりわかんないし・・・」
「分からなくても大丈夫ッ、格好がメイドさんならお客さんそれだけで喜んでくれるはずだからっ。」
「・・でも私なんかじゃ、」
「何言ってんの、ちゃんだからいいの。ねっ、お願いッ!!」
「・・う・・・わ、分かった・・・」
「ダダダダダダッ、ダメメッ、ダメッ、ダメですよ!!!!!」
竜崎が一生懸命阻止しようとするも空しく、結局メイド喫茶のメイドは、ということに決まってしまった。
実に無理やりだ。
そんな結果に一人うなだれるように肩を落としてブツブツと文句を言っている竜崎。
「・・・・ヒドイですヒドイです・・・ダメだって言ったのに・・・ダメだって言ったのに・・・」
しかし決まってしまったものは仕方がない。(半ばもう押されて結構無理やりに決まったが)
竜崎以外のクラスメイトは皆やる気満々の顔をしている。
女子に至っては『じゃあもう思いっきり可愛いメイド服を作ろう』なんて言いながら早速服の生地を買いに行く予定を立てて張り切っている。
『張り切らなくていいんだよ!!張り切るのはお前らだけでいいから馬鹿野郎!!』なんて言いたそうな顔をしながら竜崎は爪をかじっている。
まぁそんなわけで、結局竜崎の意にはかなり反しながらもこのクラスの出し物は『メイド喫茶』となり、しかもそのメイドをやるのがになってしまうという
竜崎にとって最悪な事態になってきた。
世界の切り札とも言える名探偵がクラスの文化祭の出し物さえも阻止できないなんて、やはり事件と社会生活は違う。
そしてここでただでさえ最悪な気分な竜崎にもっと最悪な出来事が舞い起きた。
「ねぇねぇ、メイド喫茶ってだけじゃやっぱり女の子の入りよりも男の子の入りのが多そうだよね。」
「あー、確かに。」
「ってことでさ、ウェイターも作らない?そうすれば女の子が来ても楽しいと思うんだけど。」
「あ!!それいい!!」
「でもそしたらメイド喫茶じゃなくね?」
「じゃあ【メイド・執事喫茶】でいいじゃん。」
クラスの皆がそんな事を言い出した。
確かにメイドだけよりも、ウェイターが居た方が男女の入り、どちらも得られて良いだろう。
そしてクラスメイトの視線が一点に注がれた。
「ねぇっ、夜神君ッ!!!」
「・・・え?;(・・もしかして)」
「やってくれない?ウェイター兼執事!!」
「(・・やっぱり・・;)いや、でも僕は・・」
「夜神君がやってくれれば絶対女の子の入りは確実よ!!」
「それにちゃんと美男美女で最高の組み合わせじゃないっ。」
確かにライトは美形だし、女子からも人気がある。
加えて頭もよく運動も出来るのでモテる。
そんなライトとの組み合わせならばまず客の入りは確実であろう。
が、そんなこと竜崎が許すはずもない。
「なっ・・、ダッ、ダメですっ!!ライト君がダメです!!」
「え?なんで?」
「ライト君は・・あぁ、そう、ヅラだからダメです!!」
「だからヅラじゃないって言ってるだろう!!!!皆の前でそういう事言うのやめてくれないか!?;ホントに誤解されるから!!」
「流河君さー、さっきからどうしたの?;なんでそんなに嫌がってるの?」
「あ!!もしかしてちゃんのこと好きだったりして。」
誰かがふざけて冗談っぽくそう言って見せるとムスっとしながら答えようとする竜崎だったが、が割って入った。
「・・もしかしても何も」
「いや、あのね、私流河君と付き合ってるの。」
がそう言うと隣でムスっとしていた竜崎は目をパチパチさせながらを見ているし、クラスの皆は大げさだ、と言いたくなるくらいに驚いている。
「え?嘘でしょ?ちゃんてライト君と付き合ってたんじゃないの!?」
「え、誰が言ったの?;」
「そうだよ・・、僕はともかく、そんな勝手な噂には可哀想だろ。」
「でも仲いいじゃん。えー・・そっかー、てっきりライト君かと・・。」
「そっかぁー、だから流河君あんなに嫌がってたのねー。・・・でもこれとそれは別ー。」
「そうそう、文化祭だしっ、ね!!」
竜崎とが付き合っていると驚いたもつかの間、切り返しは早く文化祭とそれは別だと言い切られてしまう。
ライトも仕方なさそうに承諾し、結局とライトがやることに決まった。
竜崎にとっては実に面白くない展開だ。
そのままホームルームの時間は終わり、詳しいことはまた後日決める、ということになりもう下校の時刻となった。
「・・・りゅ、流河、君・・、」
「・・・・・・・・・なんですか・・・・・・。」
「・・・帰ろう?」
「・・・・・・・・・・・・ハイ・・。」
竜崎の目が座っている。
もういつも以上にけだるそうな、やる気のなさそうな顔をしている。
に帰ろうと言われ、機械のようにガタンと立ち上がり、しかしちゃっかりの手だけは握りながら帰りだした。
「・・・はぁぁ・・。」
「流河君・・あの、」
「・・・はぁぁぁ・・」
「・・ゴメンね・・?」
「・・・・・さんのせいじゃないです・・・皆がさんが優しいのをいいことにさんにあんな物やらせて・・・しかもライト君と一緒に・・」
「押しに弱い私も悪いけどね・・。」
「悪くないんです!!皆がっ・・!!あぁ!!もう・・気が気じゃないです、・・そんな、メイド服なんて着なくても可愛いのに・・・そんなの着たらもっと
可愛くなってますます変な虫がうじゃうじゃとくっついてきちゃうじゃないですかっ・・・嫌です・・。」
「大げさだよ、ホント・・。(後褒めすぎだよ・・嬉しいけど恥ずかしいよ・・)大丈夫だよ、たかが文化祭の」
「たかが文化祭されど文化祭です。変な虫がくることには違いありません。・・・嫌ですよ・・さんが他のヤツに取られるなんて・・。」
「いやいやいや、取られない取られない。」
「何処にそんな証拠があるんですか!!こんなに可愛らしいのに取られないわけが」
「だって、私が流河君のこと好きなんだから、絶対にそんなのありえないよ。」
あはは、と笑いながら軽く言ったのだが、その言葉を聞いた竜崎は今度は嬉しさからかワナワナして道の真ん中だということも忘れて
『あぁっ・・』と感嘆の声を上げに抱きつこうとした、・・・が、流石にもそれは阻止しようとさっと竜崎の抱擁を避けた。
「なんで避けるんですか。」
「だ、だって道の真ん中だから・・」
「私は恥ずかしくないです。」
「私は恥ずかしいです。」
「・・・・じゃあ、後でですね。」
ボソっとそう言い、離れた手をもう一度ぎゅっと握りまた歩き出す。
そのときの竜崎の顔は、いつもよりも嬉しそうな顔をしていた。
「まぁ・・・でも取られる・取られない以前に私がそんなことさせませんけどね。・・・もしそんなことするヤツがいたら・・・二度と表に出れないようにしてやりますよ。
あ、そうだ。さん、今日は寄っていきますか?」
「え?今なんかすごいこと言ったよね?言ったよね?」
「寄っていきますか?」
「(シカトしてる・・・。)えっと、今日はちょっと用事があるから・・・また今度寄ろうかな。」
寄って行きますか、というのはきっと竜崎の今住んでいるビルのことだろう。
『寄っていく』という言葉が返ってくるものだと思っていたもんだから、の返答に竜崎は猫背の背中を更に丸くして残念そうにしている。
「・・・そうですか・・。」
「あ、ゴメンね?」
「仕方ないです、さんにだって用事はあるんですから・・。・・・寂しいですけど。」
「・・じゃ、じゃあ・・あの、電話、してもいい?」
「!してくれるんですか?」
「流河君の邪魔にならなければ・・・」
「邪魔なんてとんでもない。寧ろそうなると仕事の方が邪魔です。」
「え、それはいかんよ。」
「いいんです。さんの方が私には大事です。」
「・・・照れるなぁ。」
「照れなくていいですよ。」
いつもの帰り道だったが、途中が今日はスーパーに寄って行きたいからと家に着く前に別れを告げた。
竜崎がもう少し一緒に居たそうな顔をしていたので『後で電話するね。』とが言う。
『待ってます。』と嬉しそうに答え、そこで今日は別れた。
竜崎と別れると急ぎ足でスーパーまで向かうが向かう先は、ある場所で。
それはお菓子作りの材料が売っているコーナーだった。
(これと・・これと、あぁ、薄力粉は家にあったっけ・・)
必要な材料だけ手に取り会計を済ませる。
そのまま真っ直ぐ家に帰ると早速キッチンへと向かい先ほど買った物を広げた。
「・・うっし、頑張れ私ッ。」
1時間半が経つ頃、時計の針は丁度7時を指していた。
そしてそれと同時にの感嘆の声が上がった。
「出来たッ・・・!!・・初めてにしては上出来じゃない、これ。」
なんて自画自賛しながら冷蔵庫から取り出したのは先ほど作っていたであろう物だ。
トレイの上に綺麗に出来上がっているそれは美味しそうなタルトショコラ。
それをまた丁寧に用意してあった箱に入れると、テーブルの上に置いてあった携帯を手に取った。
ボタンを押し、かけた相手が出るのを待っている。
ワンコール鳴ると同時にかけた先の相手は待ち侘びていたかのように電話に颯爽(さっそう)と出た。
「もしもし。」
『もしもし。』
「今電話して平気だった?」
『待ち侘びてました。電話してくれると言っていたので。』
電話の相手は、もしかしなくとも竜崎。
が『後で電話する』と言ったのを待っていたのがよく分かるくらい電話に出るのが早かった。
「あぁ、通りで出るのが早いと思った。」
『嬉しいです、本当に電話してくれました。』
「流河君はなんでも大げさすぎるよ。」
『そんなことないです。』
「あ、あの、ね、」
『なんですか?どうかしましたか?』
「あの、今から、・・流河君のトコ行っても、いいかなぁ?あ、いやっ、ムリだったらいいから」
『来てくれるんですか?』
「流河君さえよければ・・」
『私がダメなんて言うはずないじゃないですか。来てください。』
「うん、じゃあ、行くね。」
『大丈夫ですか?ワタリに車を、』
「あぁっ、大丈夫、大丈夫だからっ、一人で行けるよっ。」
『でももう暗くなってきてますよ、危ないです。』
「大丈夫だよ、何かあったら連絡するから。」
『・・はい、では気をつけて来て下さいね。』
「うん、ありがと。すぐ行くね。」
『待ってます。』
竜崎との電話を切ると、先ほど作ったケーキを持って竜崎が待つビルまでへと急いだ。
なるほどこのケーキを作っていたのは竜崎のためだったわけだ。
小奇麗な可愛らしい箱に入ったケーキが運ばれてくるとも知らず、竜崎は仕事に手がつかなそうなくらい嬉しそうにしていた。
このケーキが運ばれてきたらどんなに嬉しそうにするのだろうか。
竜崎が喜んでくれるといいのに、と思いながらは足早に竜崎の元へと向かった。
******
文化祭ネタありきたり過ぎてゴメンナパイ。
エルたすに免じて許して。笑