少し、いつもよりも身だしなみに注意してみたり


いつもよりも可愛い服を着てみようとか


綺麗にお化粧してみようとか


そんな風に考えるのは全部全部、貴方のために





少し洒落込んだ私を貴方はどう見るのでしょうか














































頭脳は大人、中身は子供 私の隣は名探偵
隣の○○君



















































「来ました!!開けてください!!」






ガターンと勢いよく椅子から立ち上がったのは竜崎。

立ち上がった瞬間、テーブルの上に置いてあったコーヒーカップがグラリと揺れて中身が少しこぼれたのも気にしない。

今彼の目にあるのは監視モニターの中に写る愛しい恋人の姿だけ。

そしてその彼女は制度の高いセキュリティがかかった扉を、以前竜崎に貰ったカードキーで開けようとするも、その瞬間に勝手にドアが開かれた。









「あれ、勝手に開いた。」





不思議に思うも、『あぁ、開けてくれたのかな。』なんて思いながら彼の元へと急いだ。

無駄に広いこのビル。

厳重なセキュリティに覆われている一つ一つのドア。

これはそう簡単に普通は入れない。

そして最後の扉は彼のいる部屋へと繋がる扉。

スッとドアノブに手をかけた瞬間、向こう側からドアを開けられ部屋へと招かれた。






「待ってました。」

「ドアのセキュリティ、全部開けてくれたの?」

「はい、ずっと監視モニターで見てたので。」

「・・・。(ずっと・・・。仕事は・・?;)」

「どうしました?」

「あ、いや、なんでもないよ。」

「あぁ、そんなところで立ってないで、こっちに座ってください。」





の手を引っ張りながらお気に入り(?)のいつものソファへと腰をかけ、も隣に座ってくれとばかりに

開いた場所を手でパンパンと叩いている。







「どうしたんですか?こんな中途半端な時間に・・何かありましたか?」

「え、あ、いや、何かあったわけじゃないんだけど・・えーーと・・・その・・」






手に持っているケーキの箱の取っ手をぎゅっと握り締めながらゴニョゴニョと言いにくそうにしている。

そんなに気づいたのはワタリ。それに気づくと、二人分の新しいお茶を用意した。







「どうぞ。」

「あ、有難うございます。」






ニコリと優しく微笑むワタリにつられてもニコリと笑う。

気を利かせたのか、お茶をテーブルに置くとワタリは隣の部屋へと移動してしまった。





「ワタリさんに気使わせちゃったかな・・」

「大丈夫ですよ。」

「(何を根拠に・・)」

「ところで・・・さっきからずっと握り締めてるソレはなんですか?」






ジィっと興味津々な様子でその箱を凝視する竜崎。







「え、あ、こ、これはっ・・あの、ハイ、お、お土産に・・ケーキを・・」

「!有難うございます。」





ケーキという単語に即座に反応し嬉しそうにからその箱を受け取った。

ガサガサと子どものように急いで箱を開け中のケーキを外に出した。






「美味しそうです、タルトショコラですか?」

「う、うん。」







大好きです、と言いながら早速それをブスリとフォークで指すと大きな口を開けモグモグと食べ始めた。

その様子を少し緊張気味に見ているに気づく様子もなく、次から次へとパクパクケーキを口に含んだ。









「おいひいでふね・・・このケーキ・・」

「流河君、いつも言ってるけど・・飲み込んでから喋ろう。」

「・・・・・・。・・・何処で買ったんですか、これ。甘さも私の好みです。今度ワタリに買ってきてもらいます。」

「あ、いや・・・その・・・・それ、作った、んだ・・」

「え?」

「それ、買ってきたんじゃなくて・・あの、作ったの、私が・・。」







少し恥ずかしそうにそう言うをキョトンとした目でジィっと見つめる竜崎。

しかし、次には嬉しそうな表情でに言葉を返した。







さんが作ってくれたんですか?」

「う、うん。」

「私のためにですか?」

「う、ん・・。」

「それを届けに?」

「うん・・ゴメン、なんかこんなの渡すだけに」

「有難うございます。」






カタン、とフォークを皿の上に置いたと思えばギュゥーっとに抱きつき嬉しそうに礼を言った。

竜崎のこの急なスキンシップにも少し慣れてきたのか、少し恥ずかしそうにしながらもそれを受け止めた。






「あの、・・・お腹壊したらゴメンね?」

「大丈夫です。生まれてこの方食べ物を食べてお腹を壊したなんてことはありません。」

「丈夫な胃袋ですこと・・。」

「それに、さんの作ったものならお腹壊してもいいです。」

「それはダメだよ、それはっ;」

「なので、また作ってください。」

「え、」

「ダメですか?」

「いや、私は全然・・あ、あんなのでよければ・・」

「あぁ、これでまた忙しくても頑張れます・・。栄養剤です。」

「気に入ってもらえてよかったよ。」

「はい、すごく美味しかったです。何処のケーキよりもさんのケーキが一番です。それに私のために作ってくれたというのもすごく嬉しいです。

・・あぁ、これを作っていて今日は学校の帰りはここに寄らなかったんですか?」

「うん。」

「それならそうと言ってくれればいいのに・・キッチンぐらいいくらでも貸しますよ。」

「あ、いや・・なんていうか、・・驚かせたかったっていうか・・だから・・」





ゴニョゴニョと濁すようにそう言うと未だに抱きしめている竜崎の腕は先ほどよりも少し力が加わった。






さん可愛いです。」

「え?」

「可愛すぎます、驚かせたいだなんて・・・。はい、驚きました、すごく。」

「・・・今実に付け足したように言ったね。」

「そんなことないですよ。とても驚きました。」

「(すごく嘘くさい・・。)」

「今嘘くさいとか思いましたね?」

「え、思ってないよ。」

「思いましたよ。さんすぐに顔に出ますから。」

「えっ、・・・そうかなぁ・・」

「分かりますよ。そういうところが可愛いです。」





抱きしめていた手をパッと離しの目をじぃっと見ながらそう言う。

そしてまたフォークを持ちパクパクとケーキを食べ始めた。








「ホント、甘いの好きなんだね。」

「甘い物は体にいいんですよ。頭の回転もよくなります。」

「私も甘いの好きだけど・・・流河君みたいに食べる人初めて見たもん。ライトとかってあんまり甘いの好きじゃないし。」

「・・ライト君はどうでもいいです。」

「え?」

「いいです、ライト君の話は。・・私といるときは、私のことだけ見ててほしいです。」





口を尖らせながら不服そうにそう言った。

拗ねるようにして更に背中を丸くしてフォークで皿の端をカチカチ鳴らしている。





「あぁ・・ゴ、ゴメンね?」

「・・別に、怒ってないです。」

「ウソ、怒ってるでしょ。」

「・・はい、怒ってます。」

「・・・正直なんだか捻くれてるんだか・・。」

「でも怒ってるというよりは・・・なんていうんでしょうか、これは・・」

「ん?」

「なんか、モヤモヤしたような感じです。」

「・・・それは・・ヤキモチ妬いてくれてるんですかね、流河君。」

「・・・・・あぁ、それです、そうですね。はい、ヤキモチです。」




にそう言われ『なるほど』と言わんばかりの顔をしながら納得すると、一人でうんうん、と頷きながら

またをジィっと見つめた。






「・・・すいません。」

「え?何が・・」

「こういうの、初めてなんです。」

「こういうの?」

「・・人を好きになったり、こういう感情になったりするのは、初めてなんです、私。」

「・・・そうなの?」

「はい。だから・・なんていうんでしょうか。・・・さんにやはり嫌な思いをさせてしまうんじゃないかと。前にも言ったとおり、私独占欲強いですから。」






不安そうにジィっとを見つめる竜崎がなんだかすごく愛しく思えるは竜崎の服の端をきゅっと握りしめた。






「嫌だなんて思わないよ、・・私だって、流河君のこと好きなんだから・・・・やっぱそんなこと言われるのはすごく嬉しいよ。」

「じゃあこれからもっと言いますね。」

「あ、いや・・・あんまり言われると恥ずかしいけど。」

「・・・さんは結構照れ屋ですね。」





流河君が照れなさすぎなんじゃないか、とも突っ込もうとしたがまぁそれが流河なんだから、と納得しておいた。

そしてふと目の前のテーブルに改めて目をやると、そこにはやはりというべきかたくさんの資料と難しそうなことばかりが写っているパソコン。

学校から帰ってきてすぐこれなのか、と思うとなんだか竜崎がとても心配になった。

こんな生活を続けていたらいつ体を壊してもおかしくないんじゃないかと。








「すごいね、これ。」

「そうですか?いつもより少ない方ですが。」

「これで!?・・・私だったら頭おかしくなっちゃいそうだなぁー・・。」

「慣らされてきましたからね。幼い頃から。」

「小さい頃からこういうことしてたの?」

「はい。まぁ・・Lとしては育てられたのは8歳くらいの時だった気がしますけど。」

「そうなんだ。」

さんがそのぐらいのときは小学校に通ってましたよね。」

「うん。」

「見てみたいです。さんの小さい頃。」

「えー、ただの悪戯ガキだったよ。」

「そうなんですか?」

「うん。学校の蟻の巣という巣に棒突っ込んでみたり先生の家にピンポンダッシュしてみたり、」

「・・意外と地味ですね。」

「でもピンポンダッシュ見つかったときは怒られたよ。ライトにもやろう、って言ったんだけど断られるし。」

「懸命な判断だと思います。」

「スリルがたまんないんだよ、先生の家っていう。」

「やんちゃだったんですね。」

「うん。」






『そんなさんも見てみたかったですね。』の髪の毛を愛しそうにすきながらそう言った。

そしてチラリと時計を見て時間を気にするようにに聞いた。






「今日は何時まで平気なんですか?」

「特に何時までとかはないけど・・」

「そうですか。あまり暗くならないうちに送っていきますね。」

「え?あ、いいよ、大丈夫。」

「嫌です。送っていきます。さんに何かあったら大変です。何かあったら生きていけませんよ、私。」

「大げさな・・。」

「大げさじゃないですっ。」

「・・ありがと、いつも心配してくれて。」

「当然のことじゃないですか。どうしたんですか?急に。」

「え?いや、・・・・その、流河君が、居てもいいって時間まで、居たいな、って、思ったり、・・・・」

「・・・・。」





しどろもどろそう言うの言葉に一瞬目を丸くし、その後顔を下に下げうーーーん・・・と悩み始めた。






「あ、あの、流河君、迷惑だったら早めに帰」

「そんなこと言われたら、いつまでも居て欲しいんですけど・・・いいんですか?」

「え、」

「居てもいい時間までなんて、決まってるじゃないですか。ずっとです。出来るならずっと居て欲しいんですから。」





真面目な顔で穴が開きそうなくらいにじぃっと見つめてくる流河にしばし戸惑う。

しかし、そんなことを言ってくれるのは嬉しいし、寧ろだって居れるのならばずっと一緒に居たいと思っている。

実際学生の身であるし、親も滅多に帰ってこないと言えど、親と共に暮らしているのでずっと一緒、というわけにはいかない。








「なので、さんが居たいと思う時間まで居てください。」

「いいの?」

「はい。泊まっていってもらってもいいんですよ。」

「ありがと。」






ニコリと笑いながら礼を言うの頭を優しく撫でると、『なるべく早く終わらせます。』と言ってテーブルの上の

資料に手を伸ばし、の作ったケーキを摘みながら仕事を始めた。







































時計の針の音が静かな部屋にカチコチと響く。

そしてそれに続くパソコンのキーボードを打つ軽快な音。

どうしてこの部屋がこんなにも静かなんだろうか、そう思った竜崎はふと自分の隣にいる恋人の姿に目をやった。








(・・・また寝かせてしまいましたか・・。)









竜崎が仕事に没頭している間に眠くなって寝てしまったらしい。

以前も同じことをしてしまったな、と申し訳なくなる竜崎が時計に目をやると寝ている恋人の姿よりも時計の針が指している時間に目を丸くした。

時刻はちょうど、2時を指していた。











さん、さん、」







ポンポン、と肩を叩き起こそうとしたが気持ちよさそうに寝息を立てているのを見て躊躇した。

しかし時間が時間だ。

起こすのも帰らすのも微妙だ。

まぁこのまま眠っているのが一番いいだろうと判断し、そっと抱き起こし隣の部屋へと移動させた。














「・・・すいません、居てくださいと言ったのに寝かせてしまって・・。」




ベッドにそっと寝かせボソリとそう言いまた先ほどの部屋へ戻ろうとしたとき、クイッと引っ張られるようによろけた。

なんだと思い、見てみれば竜崎の袖をキュっと握っているの姿。

寝ているので無意識なんだろうが、竜崎にはそれが可愛くて仕方がない。












「・・・・・・・・なんだか誘われているような感じです。」








そんな馬鹿な。

寝ている人間に対してそんなことを言うんじゃない。

じぃっとを見つめふっと微笑むと、なんの戸惑いもなく自分もモゾモゾとそのベッドの中へと入り込んだ。







(久々に私もベッドで寝ますか・・さんも一緒ですし。)










































翌朝が起きたのはAM10:49。

随分とよく寝たものだ。

よく寝た、とばかりに思い切り伸びてみせふと自分の隣に視線がいった。

何かいる、と。

いるのは竜崎。これはまた気持ちよさそうに寝ている。

今まであまり睡眠を取っていなかった反動からだろうか。

しかし的にはそんなことを考えている場合ではなかった。













(なっな、なん、なんっ、なんでっ?!あれ!?なんで流河君が隣に!?あれ!?ちょっ・・え、ど、どうしようっ・・!!)










一人パニックになっているところ、が起きた気配に気づいたのかモゾモゾと竜崎も目を開けた。











「あぁ・・起きてましたか・・お早うございますさん。」

「おはようございます・・・・、じゃなくて、あれ?な、なんで私流河君の隣に、」

「昨日、あのままソファで寝てしまっていたのでベッドまで運んだんですが、」

「え?あ、ありがとう・・(じゃなくてなんで流河君と一緒に寝てるかが気になるんだけど・・)」

さんが気持ちよさそうに寝ていたので私もついでに一緒に寝かせてもらいました。・・・嫌でしたか?」

「え?嫌じゃない、けど、ビックリはした・・。」

「そうですか、よかったです。」

「・・・あの、てゆうか、ゴメンね・・なんかちゃっかり寝ちゃって・・・。」

「いえ、私こそまた寝かせてしまってスイマセン、・・・・しかも傍にいてくれと言いながら私は何も出来てないですし・・」





口を尖らせながらそう言う竜崎。

申し訳なさそうに眉をひそめながら謝る姿がなんだか可愛らしい、なんて思いながらは竜崎の肩に頭を乗せ寄りかかり言葉を返した。







「そんなことないよ。私も、傍にいてもらえるだけで十分。」

さん・・」

「忙しいのに、そうやって私のこと気にかけてくれるだけで十分嬉しすぎるんだよ。だからさ、流河君、これからそういうことあんまり気にしないで?

・・・ちょっと、構って欲しくなったら言うかもしれないけど。」

「はい、言ってください。・・有難うございます。」

「それにしても気持ちよさそうに寝てたね。」

「あぁ・・。ベッドで寝るなんて久々でしたから。」

「・・・・・・久々って?」

「・・確か・・・・・あぁ、多分2ヶ月前くらいにはベッドで寝ました。」

「そんなに!?・・・・仕事、忙しいかもしれないけどさぁ・・・もうちょっと自分の体大事にしてあげようよ・・。」

さんがそう言うならなるべく気をつけます。」





の頭を愛しそうに撫でながらそう言う竜崎の顔がすごく嬉しそうだ。

で竜崎に撫でられながら気持ちよさそうにするが、ふと時計を見て驚きガバっと立ち上がった。










「どうしたんですか?」

「がっ・・学校だ!!」

「あぁ・・そうですね。」

「・・・随分と平然としてらっしゃりますね、流河さんは。」

「お昼から行けばいいじゃないですか。」

「・・・うん・・。私一回制服取りに家戻らなきゃ・・。」

「送っていきます。それでそのまま行きましょうか。」

「いいの?」

「はい。いいも何も・・・私さんとじゃないと学校行きたくありません。」







駄々っ子のような言い分をする竜崎。

すっと立ち上がりヒョコヒョコとベッドから降りると無造作にかけてある制服を手にした。





「少し待っててください。着替えてきますから。」

「あ、うん。」









そう言って、一応に気を使ったのか隣の部屋へと移動した。

1分もしないうちにまたヒョコリと隣の部屋から戻ってきてプチプチと面倒くさそうにボタンを止めながらやってきた。






「・・・めんどうくさいですよね、制服って・・なんていうか・・こう、ピシッとした感じが好きじゃないです。」

「でも毎日服考えなくてもいいから制服楽だと思うけどなぁ、私は。・・あ、」

「どうしましたか?」

「流河君、流河君、ちょっといらっしゃい。」





そう呼びながら手招きするの方へと目をパチパチさせながらやってくる。





「なんですか?」

「あ、やっぱり。ボタン掛け間違えてるよ。」

「・・・・・・本当です。どうりでボタンが足りないと思いました。」

「気づこうよ、そこで・・。」

「めんどくさいですね・・・。せっかく止めたのに・・」

「じゃあ直してあげるよ。」

「え、」






なんの躊躇もなくは竜崎のボタンの掛け間違いを直そうとボタンに手をかけた。

竜崎はその様子を大人しく見ているかと思えば、ポツリと言葉を漏らした。









「・・・なんだか、新婚さんみたいですね。」

「え?!」





嬉しそうにそう言う竜崎に対して顔を赤らめながらそのまま無言でボタンをかける

ボタンをちゃんとかけなおし終わると『じゃあ行きますか。』と言いの手を引っ張った。






「ワタリ、車を。」

「はい。」








車を出すように頼むと、手早くそれが用意される。

それを見たは本当にワタリさんはスゴイ人だなぁ、なんてしみじみ思う。

車に乗り込みの家までと走らせた。










「ワタリさんて、なんでも出来るんだね。」

「そうですね。身の回りのことなんかは全てワタリがやってくれてますしね・・」

(・・・ちょっとワタリさん羨ましいなー・・、なんて・・)

「?どうしかしましたか?」

「な、なんでもない。」

「ダメです言ってください。」





ぎゅーっとのほっぺたをつまみながら思ったことを言うようにと促した。

両ほっぺをつままれているは言葉がままなっていない。





「いふぁい、いふぁいお、りゅーがふんっ。(痛い、痛いよ、流河君っ。)」

「面白い顔になってますよ。」

「ひろいおっ。(ヒドイよっ)」

「さっき何思ったんですか。」

「にゃんでもにゃい(なんでもない)」

「嘘つきはダメですよ。」





ムニーっと更に引っ張っている流河は至極楽しそうである。

が、やられている本人は喋りにくいし少し痛いので離して欲しそうに流河の手をペシペシと叩いていた。







「わふぁったっ、わふぁったお!!(分かった、分かったよ!!)」

「はい。」




がそう言うとあっさりと手を離し、そしてが次に言葉にすることを待っている。

これは絶対に言わなければいけない。

きっと言わなければ彼はいつまでもしつこく聞いてくると思う。












「・・・いやぁ・・・ワタリさんが羨ましいなぁ、・・・と。」

「なんでですか?」

「・・・・・だって身の回りのことはほとんどワタリさんがやってくれてるって。」

「はい。・・・それだったら私のことが羨ましいの間違いじゃないですか。身の回りのことを全部やってくれるので、」

「いや、あの、・・・ワタリさんだったらいつでも流河君の傍にいられるじゃない?」

「・・・・・。」





のその言葉を聞いて運転席からワタリがおかしそうに『ほっほ。』と笑うのが聞こえた。

そして隣に座っている竜崎は無言のままぎゅぅっとに抱きついた。

それにしてもこの男は抱擁率が高い。






「そんなこと思ったんですか?」

「・・うん、・・・あ、今笑ったでしょ。」

「笑ってません。」

「笑ってるよ、肩が小刻みに震えてるよ。」

「だっておかしいじゃないですか。」

「やっぱり笑ってたじゃんっ;」

「嬉しいですよ。」

「ウソ。」

「嘘なわけないじゃないですか。こんなに嬉しいことありませんよ。ずっと傍にいてくださいよ。」






おかしそうに、でも嬉しそうにそう言って背中に廻している腕に力を少しこめる。







「着きましたよ、竜崎。」






と、お約束とでも言うべきか、ワタリの一言。

そして渋々車から降りる竜崎。

の家に入ると相変わらずキョロキョロと物珍しそうに辺りを見回している。







「あ、じゃあちょっと待っててね、すぐ着替えてくるからねっ。」

「はい。」







そう言って自分の部屋へと戻り制服にと着替える。

そして自分の部屋で着替え終わるとまた流河を待たせているリビングへと戻ると、飾られている写真をジィっと見つめていた。









「ん?あぁ、写真、前も見てたよね。」

「はい。」

「小さい頃のばっかだけど。」

「いいんです。小さい頃のさんを私は知らないんですから。」

「流河君の小さい頃も見てみたいよ。可愛いんだろうねぇ。」

「あぁ・・・すいません。私は写真というものを今まで残したことがないんですよ。」

「?なんで?」

「写真があることでもしかしたら【L】という存在がバレてしまうかもしれないからですよ。」

「なるほど・・・。そっかぁー、残念。」

「何も言わないんですか?」

「え?」

「一緒に写真も撮れないんですよ?」

「あぁ。まぁ、うん、撮りたいなぁ、とは思うけど・・・別にそこまで重要視することでもないし、それに今こうやって流河君と一緒にいるんだから

別に写真撮らなくてもいいんじゃない?・・・・なんて、無頓着でゴメン。」

「いえ、安心しました。私と付き合うということで色々我慢させたりしてしまうのが・・嫌われてしまうんじゃないかと。」

「・・・・あのさー、流河君さぁー、」

「はい。」

「私のこと信用してないの?」




むぅっとしながら今度はが流河の頬をムニーっと引っ張った。

竜崎は目を大きく見開いてを見る。







「いふぁいでふよ。(痛いですよ。)」

「お返しだよ。」

「わふぁしなにはひまひたか?(私何かしましたか?)」

「した。」

「なんでふか?(なんですか?)」

「信用してくれてないもん。」

「・・・?」

「私は、流河君が好きだから、流河君と付き合ってる、って、最初にも、言ったじゃん。なのに流河君は自分が【L】のせいで

私に我慢させてるとか、普通にしてあげられないとか、だから嫌われるんじゃないかとか、いつも気にしてるじゃん・・

私そんなのどうでもいいんだよ、好きだから一緒にいるのっ、好きだから付き合ってるの、付き合いたいって思ってるのっ。

分かった?もっと私の気持ちも信用してくれてもいいんじゃない?」








相変わらずムゥっと膨れながら、でも目は真剣で、そのことを竜崎に告げる。

一方、そんなことを言われた竜崎は先ほどから始終目をパチパチさせている。

何か、変なものを見たかのような顔でもしているようで。







「・・・昨日、今日となんだかさんに嬉しいことを言われてばかりでビックリしますね。」

「・・・私一応怒ってたんですけど。」

「はい。でも嬉しいからいいんです。」

「・・そうですか。」

「信用してますよ?」

「え?」

「信用してますよ、さんのこと。だからこそ、・・・いざというとき怖いのかもしれません。でも、さんにあれだけ言われたらもう大丈夫ですけどね。」

「いざというとき?」

「それ言ったらまたさんに怒られてしまうので言いません。」

「・・あぁ、なるほど。」

「はい。じゃあ行きましょうか、学校。」

「うん。」












手を繋いで、学校へと向かう。

ぎゅっと握り締められた竜崎の手はいつもより少しだけ力がこめられているような、でもちゃんと優しく、離さないように握られていた。














****

ちょっと消極的な竜崎が書きたかった。