「お邪魔しまーす。」
「待ってましたよ。」
ほんのり甘い香りの香水
貴女が来たという証拠
貴女の香りだと思うと数段よく思える
頭脳は大人、中身は子供 私の隣は名探偵
隣の○○君
相変わらずの殺風景な白をモチーフにした『Lの仕事の部屋』。竜崎のプライベートの部屋とでも言うのか。
必要なもの意外は置いていない。
テーブルにはまたこれも相変わらず書類がどさりと乗っけられていた。
今日はどんなことを解決しているんだろうこの名探偵さんは、そんなことも思いながら昨日約束したとおり、が竜崎に会いに来た。
今日は文化祭の振り替え休日のために学校が休みなのだ。
「はい、どうぞ。」
が来るとワタリはまず最初に必ず紅茶を差し出す。
なんとまぁジェントルマンだ。
このワタリの心遣いがはすごく嬉しかった。
「あ、ワタリさん、いつも有難うございます。」
「いいえ、気にしないでください。さんが来てくれると場も明るくなりますし・・・竜崎もとても嬉しそうです。」
ワタリにそう言われ、少し照れる。
先ほどまで仕事をしていた竜崎はひょこひょことの隣へやってきて、そして座る。
相変わらずろくに寝ないで仕事をしていたのか、それとも長年の睡眠不足からでしみついたのかどちらとも分からない隈は相変わらず濃い。
の隣に座ると早速甘えるかのようにぎゅー、っと腕を回してくる。
「お疲れ様。ずっとやってたの?」
「はい。」
「・・ちゃんと、寝た?」
「・・・20分ほど。」
「ダメだよ、・・・忙しいのは分かるけどさ、・・寝ないと体壊れちゃうよ?」
「すいません。」
「私に謝ったってダメだよ、流河君の体なんだから・・。」
「はい。」
「ごはんは?」
「さっきケーキ食べたので」
「あ、また!!」
「・・・・。」
「なんでそういう生活しててちゃんと生きてられるんだろう・・・」
「慣れじゃないですか?」
「こら。」
「・・さんが作ってくれるなら食べます。」
「ホントに?」
「はい。」
「野菜も?」
「・・はい。」
「よしっ。じゃあ今日は不健康な生活をしてる流河君にゴハンを作ろうかっ。」
不健康は余計ですよ、と口を尖らせるが、文句は言えない。
どう見ても不健康な生活スタイルである。
睡眠も極端に少ないうえに食生活は甘いものばかり。
の言うとおり、どうしてこんな生活できちんと生きていけるのだろうか。
「作ってくれるんですか?」
「うん。何か食べたいの、ある?」
「この前作ってくれたスープがいいです。」
「あぁ、あれ。いいよ。じゃあさ、お台所借りてもいい?」
「いくらでも使ってください。」
「あ、じゃあちょっと材料買ってくるから、」
「私も行きたいです。」
「お仕事、まだあるんでしょ?」
「・・・。」
「知らんぷりしないの;」
よしよし、と竜崎の頭を撫で財布を持って出かけようとその場を立った。
が、竜崎にグイッと腕を引っ張られ再びソファに座る形になってしまった。
「わっ;」
「早く戻ってきてくださいね。」
「うん。」
「何かあったらすぐに連絡してください。」
「うん、大丈夫だよ。」
「変なヤツに声をかけられてもついていってはダメですよ。」
「分かってるよ。」
「心配です。」
「・・買い物行ってくるだけだよ・・?」
「・・それでも心配です。」
「ありがと、心配してくれて。流河君は本当に心配性ね。」
「さんが可愛すぎるんです。」
「またそういうこと」
「やっぱり私も」
「ダーーメッ。」
「・・・・。」
めっ、と竜崎のほっぺをむにっとつまむ。
横に伸ばしたりして少々楽しんでもいるように見えるが、はそのまま話を続けた。
「ちゃんとワタリさんの言うこと聞くんだよ?」
「・・はい。」
「甘いの好きなのは分かるけど、あんまり食べ過ぎないようにね?」
「・・・・・・・・はい。」
「(今の間は長いなぁ・・。)後、・・・少しでも時間あったら、寝て?」
「・・はい。すいません。」
「頑張るのもいいけど、流河君の体が壊れちゃったら頑張るもなにもないんだから。もう少し自分のこと大事にしてあげてよ。」
「・・さんも心配性ですね。」
「お互い様でしょ?」
「そうですね。」
いつの間にか背中に回された竜崎の腕をトントン、と叩き『じゃあ、行ってくるからね?』と今度こそその場を去ろうとした。
今生の別れのわけでもないのに竜崎ときたらが出かけることを酷く名残を惜しんでいる。
ここにまた戻ってくるというのに。
そして一応言っておくが、は今買い出しに行くだけである。
「じゃ、行ってきまっす。」
「行ってらっしゃい、気をつけてください、あ!車には気をつけてくださいっ、飛び出してはダメですよっ。」
「だいじょーうぶ。」
「飛び出すな、車は急に、止まれない、・・ですから!!!」
「あぁ・・・そんな安全のキャッチフレーズあったかもね。」
「やっぱり私も」
「行ってきます。ワタリさん、流河君よろしくお願いしますね。」
「はい、大丈夫ですよ。さん、気をつけて行ってきてください。」
「有難うございます。じゃ、今度こそ行ってきまーす。」
ワタリに行く手を阻まれ不満げにぶつくさ言ってるのが聞こえたが、ようやくは買い出しに行けるようになった。
ここから一番近くのスーパーは少し大きくてスーパーのわりに結構物が揃っていて便利だ。
そこに行こう、そう決めた。
「・・まだですかね・・・」
「竜崎、まだ5分しかたってませんよ。」
「そんな馬鹿な。」
「さんが出て行った時間が丁度1時。今の時間は1時5分ですよ。」
「・・・・、こんなに時間が経つのが遅いなんて・・」
「大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても。」
「・・・もしまた変なヤツに声をかけられていて・・・・それが私なんかよりも全然かっこよかったら・・どうするんですか・・?
・・もしかしたら・・・・・いや、考えたくもありません・・あぁ、心配です、・・・やっぱり私も行きます。」
「竜崎、駄目ですよ。さんからちゃんと仕事を、と言われていたでしょう?もしくは時間があれば少しでも寝ておくこと、と。」
「そんなことよりもさんが心配です。今頃変なヤツに引っかかって困っているはずです!ワタリ、後はまかせました!!」
「りゅ、竜崎!!」
いつも背中を丸くしながらひょこひょこと歩いているくせに、こういうときには俊敏な動きを見せる竜崎。
流石のワタリも困っている。
しかしこうなった竜崎は止められない。きっと何を言っても聞かないであろう。
小さくため息をつき『困りましたね。』とあくまでも冷静でいるワタリ。
可哀想に。やんちゃな孫を持って日々悪戯に悩まされているおじいちゃんのようである。
一方、そんなこと知らないはスーパーで着々と欲しい物をかごに入れ、それをもう会計していた。
竜崎が言うような『大変なこと』には全くなっていない。
(よし、これでオッケイ。・・・早く流河君とこ戻ってあげなきゃなー。)
そう思いながら、出かける前の竜崎とのやり取りを思い出すとおかしくなった。
そりゃそうだ。
買い物に行くだけでまさかあそこまで名残を惜しまれるとは思わないだろう。
ちゃんとやってるかなー・・
ワタリさんも大変だなー、駄々っ子の孫みたいだよね
ほんと、流河君がLだなんて最初は信じられなかったもん
すっごい負けず嫌いだし、少し子どもっぽいし、心配性で、甘党で。
これが世界の名探偵Lだ、って言ってもきっと誰も信用しなそう。
なんだかんだでも竜崎のことばかりである。
と、そんなこと考えながらスーパーの外へ出ると、ふと聞き覚えのある声に呼び止められた。
「ちゃん?」
「・・・あ、タカ君っ。」
一応、忘れてしまってる人もちると思うので説明しておくが、がタカ君と呼んでいるこの人物は
の小学校からの親友で流河早樹のバックダンサーをしているなかなか明るい男の子である。(※隣の○○君:19話参照)
「どうしたの?タカ君お買い物?」
「うん。見てこれ。」
と、タカがスっとに見せた袋の中身は『激辛唐辛子煎餅』と書かれた煎餅でいっぱいである。
「うっわ、なにこれっ。」
「辛い煎餅だよ。オレ辛いの大好きなの。」
「そうなんだ・・・スゴイね、これ、お煎餅、真っ赤じゃん・・」
「それがいいんじゃんー。」
「(流河君とは真逆だなぁ・・)」
「ちゃんも買い物?」
「うん。ごはんの買出しに。」
「へぇ、自分で作ってるんだ、えらいね。」
「あ、私のごはんじゃないんだけど・・」
「・・誰の?」
「え、えっと、」
「・・・・あ、分かった!!もしかしてさ、この間一緒に居た・・あの黒髪の・・ああ、そう、流河クン!?」
「え、あ、・・うん。」
「なーーぁぁんで言ってくんないの!?いつから!?いつから付き合い始めたの?」
「え、あ、ゴメン、つい最近・・」
「そっかそっかーー!!良かったね、ホント!!絶対くっつくと思ったけど!!」
「なんで・・」
「だってあの流河クンて子、ちゃんのこと好きだっていうのモロ分かったし。」
「えー・・そんなことなかったよ。」
「ちゃんが鈍いんだ。」
「失敬な。」
と竜崎が付き合っているのを知ったタカは本当に嬉しそうだ。
そんなタカを見ても嬉しくなる。
自分が好きな人と付き合うということをこんなに喜んでくれるなんて思わなかったし、すごく嬉しい。
ここから一番近いスーパーマーケット・・・
あそこだ
1丁目のスーパーマーケットだ
確かあそこはスーパーなのに結構なんでも揃ってて便利だ、とさんが言ってた
いつもよりも少し早足でいざスーパーマーケットへと向かう竜崎。
普段はLの素顔がもしものことでバレたら、なんて自ら外に出るなんて滅多にないせくせにこういうときは物凄く行動的だ。
まぁ、学校にも行ってるのでそこそこ問題はないと思うが。
最近の竜崎は結構外に出たりとアクティビティだ。
着きました
ここですよね
きっとさんはここのスーパーに買い物に・・・・いた!!!
スーパーに着くと早速を見つける。
入り口付近でタカと喋っているかすぐに見つけられたんだろう。(それとも竜崎のセンサーが働いたのか)
いました
・・・ん?
誰ですか、・・・一緒にいるのは・・
・・・お、男ですっ・・
あぁぁ、や、やっぱり・・やっぱり変なヤツに引っかかってるじゃないですか・・・!!!
だから気をつけてと言ったのにっ・・・何かあったら連絡をしてくれと言ったのにっ・・・・・
しかもなんだかかなり楽しげに話していますよ・・・!!
な、なんでですか・・?なんで、なんで楽しそうに話してるんですか・・・!?
遠くから見ているせいか、が一緒に喋っているタカがよく見えていない。
もしくはもう誰だか忘れているかだ。
そして勝手に変なヤツだと決めつけ一人わなわなしている。
竜崎がこの場に来ていることなんて知らないは相変わらず久しく会ったタカと楽しそうに喋っている。
「偏食屋さんだから、たまに作ってあげないとゴハン食べないんだよ。」
「はは、この前初めて会ったときも甘いのばっか食べてたしね。それで作ってあげるんだ。」
「あ、うん。」
「いいね、なんか。微笑ましいなぁ、いいなぁいいなぁ。」
「あんまり言われるとなんか恥ずかしいんだけど・・・」
「いいじゃんよー。幸せ?」
「うん、すごく。」
「くっそ、惚気かよ。」
「い、今のはタカ君が聞いたんだよーっ;;」
「はは、そうだね。いやー、でもいいね。」
「タカ君は?」
「オレ?あー、今はいいや。」
「タカ君モテるでしょ?」
「モテないし。」
「うそつけー。絶対人気ありそうだもん。」
「いや、ほんと、周りに女の子とかいないし。」
「もったいないねぇ・・。」
なんであんなに・・あぁ、それ以上近づかないでくださいっ・・・
さん一人ならば今すぐにでもあの場に行ったはずなのに・・・・
あの男が変な動きをしたとき、─・・私が奴を取り押さえます。
取り押さえられるのは寧ろアンタだ、竜崎。
どう見ても竜崎の方が怪しい。
「それにしても今日は少し風が強いね。嫌だなぁ・・帰り向かい風なんだよね。」
「あぁ、辛いね。あ、そろそろ帰ったほうがいいかな?大好きな流河クンが待ってることだしね?」
「う、うるさいよっ。」
「照れてる。」
「照れてな・・・、て、あいたたたたっ、風っ、ぎゃっ、ちょっ、痛い痛い、目に砂入ってくる!!」
なっ・・・さんが泣いて・・・!!!
さんに何を・・・
許せません
取り押さえます
タイミングが悪すぎる。
ちょうど風が吹き、風に乗せられ飛び舞っている砂埃がの目に入ってしまった。
丁度竜崎の角度からだとタカがを泣かしてしまったように見えてしまうのだ。
「ちゃん大丈夫?涙目・・・」
「い、痛いぜっ・・す、砂埃にしてやられたっ・・・」
「地味に痛いよね。」
「うん・・うぅ・・・ジャリジャリするよ・・・」
目をゴシゴシとこすっているとその腕をグイっと引っ張られた。
何かと思えばギロリと怒った目をしている竜崎。
何故竜崎がここにいるのか、びっくりしていると、久しぶりだね、とでも言いたそうにしているタカだったが竜崎はどうやらそれどころではない。
「りゅ、流河君・・あの、なんで・・仕事は・・・」
「大丈夫ですか!?さんっ・・」
「・・・はい?」
「だから言ったじゃないですか、私もついていこうかと!!」
「え?」
「何かあったらすぐに電話してくれと言ったじゃないですか!!」
「・・何もな」
「変なヤツに引っかかるからって言ったじゃないですか!!」
「・・・・変なヤツ?」
「今目の前にいるヤツですよ、今取り押さえます。」
「ちょーーーっ、ちょっと、ちょっと待ってっ!!;流河君、あの、覚えてない・・かな?前に一回だけ会ったことあるよね?タカ君と・・」
の手をぎゅうっと握りながら物凄く心配そうな顔をしながらそう言う竜崎に慌ててがそう言うと
目をぱちくりさせながらじぃぃっとタカを見つめる竜崎。
何がなんだか分からないタカもとりあえず『お、覚えてない、かな?』とにこりと笑うと竜崎はポンっと手を叩き『あぁ』と納得しはじめた。
「流河早樹のイベントのときの・・ですか?」
「そうそう、タカ君だよ。・・忘れてた?」
「はい。」
「やっぱり。」
「あはは、やっぱ変わってるね、流河クンって。面白い。」
「それにしても・・・血相変えてどうしたのかと思ったよ・・」
「・・・さんが、」
「私が?」
「その・・・・・変なヤツに捕まって泣かされてしまったのかと、・・・・すいません。」
「砂埃が目に入っただけよ。」
「はい。」
「流河クン、ほんと、ちゃんのこと好きなのな。」
「はい。」
「うっわ。惚気だよマジで。」
見ててこっちが照れるぐらいに、と付け足すタカ。
そして間違えで危うく取り押さえてしまいそうになったタカにも一応謝罪した。
さらに気を利かせたのか、わざとらしくはあるが『用事があるから帰る』と言ってそそくさとその場を去っていった。
そして竜崎とが二人きりになってしまった。
「流河君。」
「・・・はい。」
「・・ありがとね?」
「怒ってないんですか?」
「だって心配してきてくたんでしょ?」
「・・はい。すごく。」
「だったら、何処にも怒る理由なんてないよ。」
「怒られるかと思いました。」
「謝るなら後でワタリさんにね。どうせワタリさんが止めるのも無視して来ちゃったんでしょ?」
「よく分かりますね。」
「だてに好きじゃないから、ね?」
「嬉しいこと言ってくれますね。」
「帰ったらごはん、作るね。」
「ありがとうございます。楽しみです。」
「あと、」
「はい?」
「ケーキも。」
「本当ですか?」
「ザッハトルテの作り方、覚えたの。」
流河君のためにね、と後から付け足すと、握られていた手に少し力がこめられた。
「嬉しいですね。ますます、仕事が頑張れます。」
世界のトップの名探偵ともあろう人物がたった一人の少女のためにここまで動くだなんて誰が思うだろうか。
そんなの竜崎、L自身だって思わなかったのに。
強く、優しくぎゅっと握り締められたその手の先は、この先ずっと離したくない存在がにっこりと笑って今日買ってきた材料で作るものを楽しそうに竜崎に話していた。
*****
何よりも大事なのはちゃんだってことさ。