「今日は・・学校を、・・休むので・・・すいません・・。」













今日、流河君は学校を休んだ。

















































頭脳は大人、中身は子供 私の隣は名探偵

隣の○○君
















































別に、流河君が学校を休むなんて珍しくない

仕事の都合上、それはよくあることだし、1週間も続けて休んだことあるし、

それどころか、私が初めて流河君に会った日以前なんて、学校に来てるの見たことなかったし

まぁ、とにかく彼が学校を休むのは珍しくない

ここのところは休まずに来ることのほうが多かったけど

でも仕方ない

仕事なんだもん

朝電話を貰ったときも『仕事がたまっているので』って言ってた


























、おはよー。」

「おはよ、リコ。」

「あれ、彼氏くんは?」

「今日はお休み。」

「なんで?風邪?」

「え?あ、うん、か、風邪だって・・・」

「そっかぁー、まぁね、うん、流河君不健康そうな顔してるもの。」

「失礼だなぁ・・・」

































「おはよう、。」

「あ、ライトおはよう。」

「あれ?流河は?」

「え?あ、うん、風邪だって。」

「ふぅん。ま、あいつ不健康そうだし・・・なんかいつ風邪ひいてもおかしくなさそうだしね。」

「・・ライトまでそんなことを。」



























まぁ、そんな感じで流河君が『風邪で休み』だって嘘をついてもごく自然に受け止められる

でも不健康そう不健康そう、って・・・皆して失礼だなぁ・・

いや、確かに不健康な生活はしてるんだけど

睡眠時間は極端に少ないし

おまけに食べるものも甘いものばっかり

ずっとパソコンか難しそうなことしか書いてない資料と睨めっこ

部屋にこもりきり

・・・・どれを取っても不健康児そのものだもの

これでよく具合が悪くならないな、ってぐらいに

それはそれである種の才能なのかもしれないけど

だからそんな彼は今日も“L”としての仕事を頑張ってる

学校の帰りに差し入れでも持っていこうかな、って思う

急だから、今日は作れないけど、流河君のお気に入りのあのケーキ屋さんでケーキ何個か買っていってあげようかな



































「いつも有難うございます。またお越しください。」
















“いつも”だって。

もう顔覚えられちゃってるんだ

ケーキ買いすぎちゃったかな

5個も買っちゃった

でも流河君のことだし、全部ペロっと食べちゃうよね





















いつものケーキ屋でケーキを買い終わるとポケットから携帯を取り出し、ポチポチとボタンを押す。

電話の先はもちろん竜崎だ。

いきなり行くのも悪いと思い、あらかじめ行くことを連絡しておこうと思ったのだ。

1・・・2・・・6回ほどコールが鳴るとようやく電話に出た。

いつもからの電話ならば2コールぐらいで出る竜崎だったが、今回は出るのが少し遅かった。



















『・・・もしもし。』

「もしもし?ゴメンね、今電話して平気だった?」

『・・・いえ・・そういうわけではないんですが。』

「今から行きたいんだけど・・大丈夫?あ、ケーキ買ったけど食べる?」

『ダメです。絶対に来ないでください。』

「え?あ、忙しかった?」

『そういうことなんてどうでもいいんです。とにかく来ないでください。』






『絶対に来ないでください』と言われたから、何気なく理由を聞いただけなのにそんなことを言われた

流石にカチンときてしまった。








「そ、そんな言い方しなくても・・・;少し気になったから聞いただけなんだから・・あの、大丈夫?もしかして具合とか」

『別に、気にしなくても大丈夫ですから。とにかく今来られても迷惑なんで来ないでください。』

「っ・・、わーかりましたっ。絶ッッッッッ・・・対に、行きませんから安心してくださいっ。」

『・・あ、いや、あのさ』














プツッ・・・ツー・・ツー・・・

電話の切れるその音が互いの電話に虚しく残った。

乱暴にボタンを押して電話を切ったはいつになくムスっとした顔をしている。

そりゃそうだろう。

誰だってあんな言い方されれば腹が立つであろう。

ケーキの箱を片手に持っていることも忘れているのか、乱暴に揺らしながらそのまま家へと帰っていった。































な、なによぅっ!!あんな言い方しなくてもいいじゃないのさっ!!!

2回も『来ないでください』って言われた!!

い、1回言われればいいよ!!分かるよ!!!

別に気にしなくても、って、気になるに決まってるじゃんっ・・

し、しかも、め、迷惑だから来るなって

・・・・・そんな言い方しなくてもいいじゃない・・

分かってるもん

私が行ったってなんにも出来ないし、・・・迷惑なことぐらい分かってるもん

忙しいのも重々承知だし、やっぱり行ったら迷惑かな、って思うし

でも、・・りゅ、流河君が、居てくれるだけでから来てくれ、って言ってくれたから、

・・・それ、すごく嬉しかったんだもの

















「うぅー・・・」






ベッドに不貞腐れるようにうつ伏せに寝転がる。

さっきの竜崎の言葉が相当ショックだったのか、唇を噛み締めて涙が出てこようとするのを我慢した。

“来ないでください”、“迷惑なんで”というのが相当キたみたいである。

腹が立つ、というよりもにはすごく悲しい言葉だった。













「いーもん。このケーキ全部食べちゃうもん。」












箱をガバっと開ければ、さっき乱暴に揺らしたおかげ形が崩れている。

全く嫌になる。

恋人のために喜ぶと思って買ったものなのに自分で食べるはめになるとは。

しかも崩れている。














「・・・味は変わんないもん。」





















そう言いながらヒョイっとケーキをつまみだしパクパクと食べていく。

見た目こそ崩れてしまったが、の言うとおり味は変わらないのでなんら問題はない。














「あ、これ美味しい。」















ヒョイヒョイ、と、次から次へとケーキを口に入れていく。

基本的に彼女も割りと食べるほうなのでこれぐらいはきっとワケはないのだろうが。

あっという間に5個平らげてしまった。





















「・・・・せっかく買ってきたのに。」























空になったケーキの箱を見てそう言うと同時ぐらいだろうか。

の携帯がマナーモードにしたままのためブブブッと揺れている。

メールかと思いきや、電話の着信。

しかも非通知で。

非通知にはあまり出たくないのだが、ワンギリじゃないことを見るともしかしたら友達が公衆電話から、ということも考えてしまい結局電話を手にしてしまった。
















「・・もしもし・・?」

『もしもし。さん、ですか?』







聞き覚えのある人の声だったのか、の顔が少し安心した表情になった。








「はい、どうしたんですか?ワタリさん。」








非通知の人物はワタリだった。

なるほど、それなら納得だ。













『いえ、・・さっきは竜崎がすいませんでした。』

「なんでワタリさんが謝るんですか?全然大丈夫ですよ?」

『いえ、なにぶん酷い言い方をしてしまったらしく、』

「あはは・・。」

『竜崎もそれを酷く気にしているのですよ。』

「そうですか。」

『竜崎には絶対に言うな、と口止めされているんですが・・・』

「?なんですか?」

『竜崎は今』











と、ワタリが言葉を言いかけた瞬間、電話の向こうから『ワタリっ!!』と小さく竜崎の声が聞こえた。

竜崎のその声を聞いてワタリが『ホッホ・・』となんだか楽しげに笑った。














『そうですね、今竜崎に代わります。』

「え?」

『そうでしょう?竜崎、お話がしたいんでしょう?』

「・・・。」

『・・・・もしもし。』








“もしもし”、と次に言われたときは、ワタリの優しい、何処か品のある老人の柔らかい声ではなく、

いつもの聞きなれた、単調で感情がこもっているのかこもっていないのかが分からないような声の持ち主に代わっていた。

















「・・・・なぁに?」

『あの・・すいませんでした。』

「・・なにが?」

『・・・来ないでください、と言ったのを怒っているんでしょう?』

「なんでそう思うの?」

『・・・ワタリと話してるときと、今私と話をしている口調が全く違います・・。』

「・・怒ってる。」

『・・すいません。』

「・・っていうよりも・・・・なんか、すごく悲しくなった。」

『・・すい、・・ゴホッ、ゴホッ・・ません。』

「・・・・・・・・・流河君。」

『・・・はい。』

「今日、どうして休んだのか、言ってみて?」

『・・・ここのところ仕事がたまっていたので』

「私、嘘つきって嫌いなの。」

『え、』

「今日、どうして休んだのか、言ってみて?」

『・・・・・・・・・・不覚にも、風邪をひいてしまいました・・・。』

「・・・・なんで嘘ついたの?」

『・・・風邪をひいたと言ったら、・・さん絶対に来ると思ったので・・』

「そりゃあ、」

『・・移したくないんですよ・・。』

「別に行ったくらいじゃ移らないのに・・」

『・・・・さんが来てくれたら、絶対に傍から離れたくなくなるので・・・なのでさんに移ります。』













風邪をひいているからか、いつも以上に声に覇気がない彼の声が、物凄く愛しくなった。

弱々しくそう言う竜崎は少しバツが悪そうに『来ないでくださいとか、迷惑とか・・・思うわけないじゃないですか・・』と言う。

そんなこと言うもんだから、ますます彼に会いたくなる。


















『・・・・・、さん?』

「・・・・ちゃんと、お布団入って、あったかくして、・・・寝てて?」

『・・・・・・はい。』

「・・・今から行ったら、・・迷惑?」

『・・・・・まさか、とんでもない。』

「・・・今から、行くよ?」

『・・・・移っても、知りませんよ?』

「・・風邪は人に移すといいんだって。」

『・・・待ってますね。』
















こういうときぐらい頼ってもらいたいじゃない

こういうときぐらい役に立ちたいじゃない

こういうときぐらい─・・いつも以上に傍にいてあげたいじゃない














彼のためになれるのがこんなに嬉しいなんて。

急いで身支度をして、風邪っぴきの彼の元へと向かった。


















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どうして具合悪くならんのか不思議だよLたすってば・・・。