「ヤバイ。・・・これは、ヤバイですぞー・・。」







冷や汗をたらしながら独り言をポソリとつぶやく少女、

彼女はまさに深刻な壁へとぶち当たっていた。











































頭脳は大人、中身は子供 私の隣は名探偵

隣の○○君




































最近さんの調子がどうにもおかしい。

ため息ついたりすることが多い。

悩みだろうか。











さん・・大丈夫ですか?」

「え?なにが?」

「最近ため息をつくことが多いです。」

「(うっ・・)いや、大丈夫、なんでもないよっ。多分疲れてるんじゃないかなっ。あはは。」

「・・そうですか?あぁ、そうだ、では気晴らし代わり久々にケーキ食べに行きませんか?」

「あ、うーーんと、ゴメン・・また今度でもいい?」









そう、そしてこうやって誘いを断ることが多くなった。

何故ですか。

私が不満ですか?

座り方ですか?

物の持ち方ですか?

さんが言うのであれば・・・多少時間はかかれど直してみせますよ。

推理力は落ちてしまいますがいたし方ありませんさんのほうが大事です。








「?なんかあるんですか?」

「え?・・あ、うん。」

「・・・なにか隠してませんか?」

「な、何も・・」

「私の目を見て話してください。」








そう言うとしどろもどろしたような、そんな様子でへにゃりと笑い、『何も隠してないよ、ただちょっと今は・・今度また行こう。』なんて

言って話を逸らされてしまった。絶対に、なにかある。

彼女は嘘をついたり隠し事をするのが苦手だ。大体がすぐに顔に出る。

そこもとても可愛らしいんですけど。

しかし今はそんなこと言ってる場合じゃないんですけどね・・・。









「よっし、じゃあ、帰りますか!」






そう言っていつものように帰宅だ。

上手いことはぐらかされているが絶対にさんはなにか隠し事をしている。

あまり詮索しないほうがいいのだろうか、いや・・でも気になるものは気になります。








さん。」

「ん?」

「帰り・・今日は寄って行かないんですか?」

「んーーーーー・・・どうしよっかなぁ・・んーー・・と・・」

「・・・。」

「今日はいいやっ。」

「!!」






ショックです。

いつもなら帰りに必ず私のとことへ寄っていってくれるのに・・!!








「ゴ、ゴメンね?」






竜崎がガンッとショックを受けているのに気づいたのか、顔を覗き込み謝罪する。

そんな可愛らしく首をかしげて困ったような顔で謝られたら『嫌』だなんて言えるはずがない。









「いえ・・さんも色々ありますしね・・・」

「ああああ、りゅ、流河君っ、ゴメンねゴメンねっ・・あ、で、でも行くだけなら大丈夫ッ!」

「・・はい?」

「あ、いや、その、うんっ。やっぱり大丈夫!!行く行く!!」

「・・・用事があるんじゃないんですか?」

「あ、や、えぇぇと、・・い、今なくなった・・かな・・。」





あはは、と笑って誤魔化すだが、いやいや、どう考えてもおかしいだろう。

用事が今の会話の中でどうしたらなくなるんだ。

そんなをますます心配・・というか少し疑う竜崎だったが、結果が自分の所に寄ってくれることになったのはとても嬉しいのでご機嫌になった。

























「ワタリさんこんにちわ、お邪魔します。」

「こんにちわ、さん。」






相も変わらずにこりと優しい笑顔で迎えてくれるワタリに癒される

こういうおじいちゃんっていいなぁ、なんて思いながら竜崎の隣に腰をかけた。(催促するように竜崎が自分の隣をペシペシと叩いている。)











さん、紅茶でいいですか?」

「あ、はい、有難うございます・・いつもいつも・・」

「いえいえ。こちらこそいつも竜崎が無理言ってさんを引き止めていたりするので・・ねぇ?竜崎。」







ワタリがそう言うと僅かに肩をピクっと震わせ、横目でを見やった。

そんな竜崎が少しおかしくていつものようにへにゃりと笑いながら『いやいや、そんなことはないですよー。』なんて言っている。







さん・・嫌だったら言ってくださいね・・その、無理には引き止めないです。(多分。)」

「嫌じゃないよ。嫌だったら来ないよ。」

「そうですか・・。あぁ、そうだ、さん。今日はさんにいいものをあげます。」

「え?なぁに??」







何やら竜崎が嬉しそうにそう言うので、もワクワクしながら“いいもの”を待った。

ワタリにその“いいもの”を持ってこさせると竜崎はそれをスっとに差し出した。

が、の顔は少し曇り気味になってしまった。







「これです。前にさんが美味しいと言っていたケーキ屋で取り寄せました。新商品らしいです。しかもさんの大好きな桃の・・」

「あ、う、うん、すごく、美味しそう・・・だけど・・・」

「だけど・・?」

「えぇぇと・・・すごく美味しそうだし、嬉しいんだけど・・・・その・・」

「・・はい・・?」

「わ、私今、虫歯で・・・・」





が俯き気味にそう言い、チラリと竜崎を見れば、とても残念そうな顔をしながら口を尖らせた。

しかし、『虫歯ですか・・仕方ないですよね、これ以上悪くなったら困りますしね・・』とポツリとつぶやきそのケーキをいじいじとフォークで突付いている。

そんな竜崎の姿を見て心がチクリと痛む














ゴ、ゴメンナサイ、流河君・・・

本当は虫歯なんてないんだよ私っ・・・幼稚園のときから虫歯なんてないんだよ・・・!!!数少ない私の自慢だもの、虫歯零は!!















心の中で必死にそう謝る。

そう、彼女は虫歯なんてなっていなかった。

断る理由は、また違うところにあったのだ。














うぅ・・・でもあのケーキすっごく美味しそう・・だって桃だし・・!!

あぅー・・・

でもダメ、ダメよ、ここでガマンしなきゃダメ・・・!!!!

だって私・・・・体重が3キロも増えちゃったもの・・・!!!!!!















彼女の悩める理由はそこにあった。

風呂上りにふと体重を測ってみたところ、以前計ったときよりも3キロも増えていたとか。

見た目ではそう分からないものだが、女子というものはこういう事を事細かに気にしてしまうのだ。












そうだよ・・・3キロも・・3キロ・・・。

流河君が悪いわけじゃないんだけどっ・・・流河君が悪いわけじゃないんだけどねっ!?

寧ろ私がいけないんだけど!!

流河君と付き合い始めてから体重の増加が激しいのさ!!

だ、だって流河君の所に来ると必ず美味しいお菓子出してくれるし美味しいから食べちゃうし!!

流河君喜ぶかなーー、って思って自分でお菓子作るもやっぱり少しずつとはいえ味見とかするし!!!

学校の帰りに寄るところって言ったらやっぱりあそこのいつものケーキ屋さんだし!!!

あそこのケーキもすごく美味しいから私ペロリと食べちゃうわけで!!!

ていうか流河君といると必ず甘いものがまとわりついてくるのさ!!!

・・・・結局は誘惑に負けちゃう自分が悪いってことでさぁ・・・













一人でズーンと落ち込む

隣では悲しくもに食されなかったケーキをフォークで弄びながらもっさもさそれを食べる竜崎。















さん。」

「ん?」

「知ってますか?」

「なにが?」

「虫歯って・・移るんですよ。」

「・・・え!!?嘘!!」

「嘘じゃありません。だから私も虫歯になってしまいました。さんの虫歯が移りました。」

「な、なんで」

「昨日キスしたからです。」

「ぎゃーーーー!!!それをお言いでないよっ流河君!!!!」

「痛いです、虫歯が痛いです、あーーぁ、痛いです。」










明らかに棒読みなのだが、はそんなこと気にしていられない。

虫歯が移るものだなんて生まれて初めて知った上に、それを昨日自分とキスしたから移ってしまった、だなんて言われて焦っている。

実際は虫歯なんてなっていないのに移るわけがない。

だとしたらそれは竜崎自身がきちんと歯磨きをしていなかったからではないか、と考えている。

それ以前に言わせてもらえば、虫歯は人には移らない。

もし移るモノだとしてもたかがキスしたぐらいじゃ移るわけがない。

そこに気づいて欲しい。










「そ、そんな馬鹿なっ・・・だって私虫歯なんてないのにっ・・・」










そしてボロを出してしまう。

なんて扱いやすい娘なんだろうか、は。

またしても竜崎にカマかけられてそしてひっかかる。

ボソリと言ったにせよ、その発言を竜崎が聞き逃すはずもなく。










「今なんて?」

「・・え?」

「“私虫歯なんてないのに”・・・ですか・・おかしいですね。さんは先ほど虫歯があるからと」

「・・えっと、それは・・いや、ある、あるよ。虫歯っ。」

「見せてください。因みに私は右の奥歯が虫歯です。虫歯はその左右対称で移るんですよ。だからさんは左の奥歯が痛いはずです。」









明らかな嘘をつくな、世界の切り札。









「え、あ、いや・・・・」

「ないんですよね?虫歯。」

「あ、ある」

「ないんですよね?」

「ないです。」








どうにも竜崎は自分が一度疑ったことを、真実を明かすまで問い詰めなければ気がすまないらしい。

それが例え細かなことでも。

まぁ相手がだけに隠し事をされたくないというこもあるんだろうが、その詰め寄る竜崎の姿は圧力がすごい。

もたじたじしている。











「・・貴女はまたそういうくだらない嘘をつきますね・・。」

「く、くだらなくなんてないやい!!」

「やんちゃ坊主みたいに言ってもダメですよ。今回は何があったんですか?」

「・・・だ、だって・・」

「怒りませんよ。(怒れないです。可愛いので。)」

「・・・・・・・・ちゃったから・・

「え?」

「たっ・・・体重が増えちゃったから!!!」

「・・・は?」









のその言葉にきょとんとする竜崎。

思わず頭のてっぺんから足のつま先までジロリと見やってしまう。

しかしが言うように体重が増えているようには見えないので竜崎は別段普通に言葉を返した。








「そんなことないですよ。全然変わってないじゃないですか。」

「か、変わってるんだよぅ!さ、3キロも増えちゃって・・!!あ、言っちゃった!!;」

「3キロぐらい・・」

「3キロぐらいどうってことないなんて言ったら怒るからね。」

「・・はい。(何故怒るんですか・・)」







うぅ・・、と苦い顔をしながらため息をつく

竜崎が言ったとおり、見た目は全く変わってない。

寧ろもう少し食べても平気なんじゃないか、と思うようなスラっとした体型である。

が、彼女が言うところによれば










「見えないところがスゴイんだものっ・・!!」









だそうだ。

彼女曰くお腹の肉がとても気になるだとか、お腹がぽっこりしてきて嫌だとか、そんなことらしい。

女子にはよくある悩み事である。

しかし竜崎にはあまり理解しがたいことのようで。










「別にいいじゃないですか・・大丈夫ですよ。それでもさんは十分に可愛いので。」

「よくないのー!!流河君は痩せてるからそうやって余裕なんだよぅ!!・・・因みに体重どれくらいなの・・?」

「体重・・ですか。・・あまり気にしたこともないですが・・多分50くらい・・」

「50!?きぃぃ!!!羨ましい憎たらしい!!」

「に、憎っ・、な、何故ですかっ。」

「だって身長だって180くらいあるくせに!50だなんて!!軽すぎるよ!!普段甘いものとかあり得ないぐらいに摂取してるのにっ・・なんで・・」

「お、落ち着いてくださいさん・・。」

「だ、だって!!」

「本当に大丈夫ですよ、何も変わりないじゃないですか・・寧ろさんなんてもう少し食べてもいいんじゃないかと」

「流河君はさぁ・・・見たことないから言えるんだよ・・そんなことが・・」

「何をですか。」

「お腹。」






自分の腹をげんなりするように擦る








「じゃあ見てもいいんですか?」

「え?」

さんの」

「ダ、ダメに決まってるじゃないかーー!!!」

「(・・・ダ、ダメなんですか・・。今はキスで終わりにしておきたいってことですか・・?)」







顔を真っ赤にさせてあわあわしている。

彼女が顔を赤くしているのは自分の恥ずかしいポコリとしたお腹を(あくまで彼女がそう思っているだけだ)見られるのが恥ずかしいからであるのだが。

そんなにきっぱりとダメと言われてしまった竜崎は少しショックのようだ。










「そんなにきっぱりと・・」

「だって恥ずかしいよっこんなポッコリお腹・・!!」

「なんだ・・そういう意味ですか・・。」

「せめて5キロ落としてからだなぁ・・」

「え?」

「人に見せられるまでにいくには・・・」

「いや、私以外の人に見せないでくださいよ。そんなことしたら見たヤツをどうにかしてやります。

「そういうわけでさー、・・うん、私甘いものとか控えてるから・・・あんまり誘惑しないでね。」









苦笑気味にそう言う彼女だったが、竜崎はどうにも納得いかない。

しかし彼女の意は固い。

男には分からない女の子の複雑な心境を竜崎が理解するにはまだまだ先である。

そして竜崎の複雑な気持ちをが理解するのもまだまだ先である。



















「因みに虫歯が移るというのは嘘です。」

「え!!!」

「・・・普通に考えて分かってください。」

「・・・・。」

「(そこが可愛いんですけどね・・からかい甲斐もありますし。)」





















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女の子にとって1キロでも増えるのはとっても恐ろしいことなのですよ。