頭を撫でられるのが好き
ぎゅ、って抱きついてくるのも好き
何食わぬ顔してキスしてくるのも好き
全部貴方だと思うと愛しくて仕方がなくなる
頭脳は大人、中身は子供 私の隣は名探偵
隣の○○君
ポツンポツン・・・
雨が、しとしとと降り出し始めた。
天気予報では雨だなんて言っていなかったのに。
やっぱり良純の天気予報は当たらないじゃないか、なんて呑気に思っている場合ではない。
「降ってきましたね。」
「うん、天気予報では雨って言ってなかったのになぁ・・」
「酷くならないうちに早く行きましょう。」
「そだね。」
相変わらずぎゅっと握られた手は離さず少し早足になる。
竜崎の一歩がの半歩、の半歩が竜崎の一歩、竜崎の後ろをトテトテと歩いていくはそんなことを発見した。
「大丈夫ですか?」
「え?なにが?」
「早いですか?歩くの。」
「あ、大丈夫大丈夫。」
「そうですか、早かったら言ってください。」
大丈夫、と言ったのに、さっきよりも少し歩くスピードを遅める竜崎。
そんな竜崎を見てはなんだか嬉しくなった。
あまり表情に出ないくせに、こういうときさりげなくこうしてくれるのが堪らなく好きだ、と思わず実感してしまう。
そんなことを思っている間にも雨は降るのを止めない。
ポツリ、と降っていた雨も次第に強くなり始めた。
「強くなってきましたね。」
「うん、急ごう?」
「そうですね・・・大丈夫ですか?少し走りますよ?」
「うん。全然平気。」
雨足が早くなるのに合わせて竜崎達も早足から走りに変える。
どちらが先だろうか。
雨が本格的に降ってくるのと、竜崎たちが目的地にたどり着くのが。
服に染み込んでくる雨は冷たく、早く帰って着替えたい。
濡れて腕に貼りつく衣服が気になる竜崎は非常に不快な顔をしているし、
は濡れて貼りついてくる前髪が気になり走りながら何度も前髪を手で掻き分けていた。
気になる所は違えど不快なことは確かである。
竜崎の住んでいる大きなビルはもうすぐ目の前だ。
「濡れちゃいましたね・・」
「でもザーザー降りにならないうちに着いてよかったね。もっと降ってたらこんなちょっとじゃ済まなかったもん。」
「そうですね。さん、こっち来てください。」
ちょいちょい、と手招きする。
手招きされるがまま竜崎に寄れば、バフッといきなり頭からタオルをかぶせられた。
「うぶすっ」
「風邪ひいてしまいますから・・、ちゃんと乾かさないと。」
「流河君もね。」
無造作にセットされているいつもの髪形は雨で濡れて少し、へにゃりと潰れている。
これだけで随分と印象が変わるものだな、と思いながらは自分にかぶせられたタオルを竜崎頭にかぶし返し
竜崎にはまだ足らない身長を背伸びしてがしがしと彼の頭を拭き始めた。
「すいません。」
「いいえ。」
「さんも、拭いてください。さんに風邪ひかれたら困ります。」
お返しと言わんばかりに今度はの頭をがしがし拭き始める。
『ぎゃーくすぐったいぜよー』なんて言いながら竜崎に頭を拭かれ少し嬉しそうだ。
少しすれば隣の部屋からワタリがヒョコリと顔を出し、いつものように挨拶をした。
「降られてしまったようですね。」
「はい。降られました。」
「でもそんなに酷くならないうちに帰ってこれましたよー。」
「良かったですね、ずぶ濡れにならなくて。」
「はいっ。」
「あぁ、そうです、頭を乾かしただけでは冷えてしまいますよ。今お湯を沸かしたので良かったら自由にお風呂使ってください。」
なんて気の利く人であろうかワタリさんは、そう思いながらワタリにお礼を言えば
これまた優しそうな笑顔で『いいえ、気にしないでください。』と言う。
「さん、入ってきたらどうですか?」
「え、でも、流河君先に、」
「私はいいです、平気です。」
「なんか悪いなぁ・・。」
「じゃあ、一緒に入りますか?」
何食わぬ顔でそう言った竜崎に対しては顔を真っ赤にさせて首を横にブンブン振った。
それはそれで少し残念な気がする竜崎だったのだけれど。
「冗談ですよ。」
「う、うん、わ、分かってるけど。」
明らかにの反応を楽しんでいるのが分かる。
分かっている、だけどそんな真顔で言われるとやはり照れる。
あぁ、この人はどうしてこうも人をからかったりするのが好きなんだろうか、そう思う。
「じゃあ、お先に入らせてもらいますぜ!」
「なんですかその変な口調・・。」
「へ、変って!」
「嘘ですよ、行ってらっしゃい。」
竜崎にバスタオルを渡され風呂場へと向かった。
そんなの後姿を見送るとのそのそと隣の部屋へと移動し、自分が仕事をしている間でもが退屈しないようにと
本や雑誌を用意しておこうと思った。
ワタリが『私がやりますよ。』と言えば、珍しいこともあるもので。
『私がやりたいです。』と言うではないか。
そんな竜崎を見てしばし驚くが、これもまた彼が成長できているのであろうか、そう思うと少し嬉しくなるワタリだった。
(この前さんがワタリに嬉しそうにお礼を言ってたので・・・・今度は私がやります。)
・・・成長というか、ただのヤキモチというかなんというか。
まぁそれでも彼にしては成長というべきだろうか。
今まで自分から誰かのために何かをするなんてしなかったのに、今はこうしてできている。
「あ・・・さんに着替えを渡すの忘れてしまいました。」
「うあー・・・気持ちいいなぁ。」
オヤジのように『うーん』と声をあげながら気持ちよく風呂に入らせてもらったはチャポンチャポンと
天井から静かに落ちてくる雫の数を数えたりしていた。
綺麗な浴室だな、なんて思いながらのんびりしていればドア越しから竜崎の声が聞こえるではないか。
「あの、すいませんさん・・」
「え?流河君?なに?」
「着替えを渡すの忘れてしまったのでここに置いておきますよ。」
「あっ!!!ありがとう!!私すっぽんぽんで出ちゃうとこだったね!!」
あははは、と笑ってお礼を言うだったが竜崎はのそんな発言に『この人は私のことを本当に男だと思っているんだろうか・・・』
なんてちょっと不安も感じてしまった。
というか、ドア越しの自分がいるのにこんなに普通の反応をされるなんて思わなかった。
もう少し、驚いたり、少し焦ったり、そんな反応をするかと思いきや、そんな軽い、しかもすっぽんぽんとか言わないでくれ、なんてぼんやり思ったりもした。
「あ、あと急でしたのでさんに合うような服がなかったので・・・私の服になってしまいましたが、いいですか?」
「うんっ、ゴメンねっ、ありがとうっ。」
「はい、ではゆっくりしてください。」
「ありがとうー。」
20分たらずで浴室から出れば、先ほど竜崎が置いていってくれた服がある。
見てみればそれはいつも竜崎が着ている白いTシャツ。
竜崎サイズなのでやはりには結構大きなもので着てみれば丈は長いし袖もかなりダボダボとしている。
シャツに首を通せばクンと微かに石鹸のような、いい匂いがした。
制服のスカートはさほど濡れていなかったのでブラウスだけ乾かし上だけをこうして借りているわけだが、
この竜崎のTシャツとこのスカートを一緒に着てしまうと丈の長いシャツのせいでスカートが隠れてしまいがTシャツだけ着ていて
下には何も履いていないようにも見えてしまう。
(あぁ、どうしようか、なんだかものすごく見苦しい格好になっている・・・。あ、捲くればいいのか。)
なんて、少し困っているだったが、(困る観点が少し違うが。)Tシャツの裾を持ち上げスカートが見えるようにしながら竜崎がいるであろう部屋へと戻った。
「お先に入らせてもらいましたよー。」
「あぁ、早かったですね。」
「うん。あんまり長湯しても悪いし。」
「別にいいんですよ、そんなこと気にしなくても。」
「ううん。いいの。」
「そうですか。・・・・どうしたんですか?」
「なに?」
「シャツ、・・・・・あぁ、やはり大きかったですか?」
「あ、うん、これね・・やっぱ結構おっきいね。流河君、背高いしね。」
ホラ、こんなに大きいんだよ、と捲り上げていたシャツをパっと離す。
パっとシャツを離せば、さっきも言ったようにスカートが隠れてしまうので何も履いていないような格好になってしまった。
それを見た竜崎は一瞬目を丸くしたが、眉間に皺を寄せた。
そんな竜崎に気づいたはあはは、と笑いながらシャツをまた捲くりあげた。
「あぁ、すまんね、見苦しいものを、」
「そうじゃなくてですね。さん、」
「はい?」
「ちょっとこっち来て下さい。」
「うん。」
ちょいちょい、と手招きされ竜崎の方へ寄ると、自分の隣をポンポン叩き、隣に座れの意を表してくるので
そのまま竜崎の隣へと座った。
座ったと思えばその瞬間竜崎にほっぺたをぎゅーっとつままれた。
「い、いひゃいよ。(痛いよ)」
「さんが悪いんですよ。」
「わ、わたひ?(私?)」
「はい。」
「にゃにかひた?(何かした?)」
「なんでああやって無防備にあぁいう姿を晒すんですか、貴女は。」
「・・・へ?」
「・・・さっきもすっぽんぽんとか普通に言いますし。」
「・・??」
「だからですね。」
更にむぎゅっとほっぺたを横に伸ばす。
そのせいで上手く言葉が回らないだったが竜崎はそれも楽しんでいるようだ。(愉快犯だ。)
「いひゃひゃひゃひゃっ、ほ、ほっぺはなひて!!;(いたたたたっ、ほっぺ離して!!;)」
「嫌です。」
「いひゃいんだへど。(痛いんだけど。)」
「私だからよかったものを。」
「う?」
「他の男があんな姿見たら、貴女間違いなく襲われますからね。」
「(他の人の前であんなことしないけどなぁ・・・。)」
「・・・私のこと男だと思ってませんか?」
「そんなほほないお。どっはらみてもりゅーがふんおとほのほだお。(そんなことないよ。どっから見ても流河君男の子だよ。)」
「そうじゃなくてです。」
「・・うん?」
そう言うとほっぺたをつまんでいた手を離した。
やっとほっぺの攻撃から開放されたはほっぺを手で擦りながらそのまま竜崎の話に耳を傾けた。
竜崎はをぎゅっと自分へと抱き寄せ、の肩へと顔を埋めた。
「流河君?」
「・・・・私だって男なんですよ?」
「・・うん?」
「・・・・・・あんなことされたら、我慢できなくなってしまうじゃないですか。」
耳元で呆れたような、そんな声でポツリと囁いた。
その言葉を聞いてやっと竜崎の言っていることを理解できたは頬を赤くして『ゴメン』と一言、謝った。
「・・・・本当に貴女は鈍いですよ。」
「・・ごめん・・・ナサイ。」
「・・・・まぁ、でも、・・・・さんが嫌がるうちは絶対にそういうことしないんで・・・
とりあえずは安心してください。(・・・我慢するの大変ですけど。)」
はぁ、とため息をつき、の肩に顔を埋めたままそんなことを言った。
は竜崎のそういう優しい気遣いが嬉しいかったのか、ついポツリと言葉を漏らしてしまった。
「・・・別に私、流河君なら嫌じゃないんだけどなぁ・・・。」
もちろん、竜崎にそれは聞こえていて。
埋めていた顔を起こし、の顔をじっと見つめた。
「今の本当ですか?」
「え!?聞こえてたの!?;」
「こんな至近距離でボソっと言ったって聞こえるに決まってるじゃないですか。」
「・・そうか。」
「それよりも、今の言葉は本当ですか?」
「え、あ、」
今更ながらに恥ずかしくなり急に顔が熱くなった。
だけど竜崎が真剣にそう聞くから、コクンと頷いた。
「・・・あぁ、良かったです。」
「・・え?」
嬉しそうに、それでいて安心したようなそんな表情でまたをぎゅっと抱きしめた。
ホっとしたように、また言葉を続けた。
「嫌なんじゃないかと思ってましたから。」
「・・・なんで。」
「いえ。なんとなく。」
「・・・・・流河君だし。そんなこと、思うわけ、ない、よ?」
竜崎に抱きしめられながらで顔は見えないが、彼女の顔はきっと相当真っ赤になっている。
ぎゅ、っと、竜崎の背中に軽く手を回す。
それに返すかのように竜崎はそっと腕を離し、今度はちゅ、と軽く口付けた。
そしてそっと耳元でこう言った。
「さん・・・・」
「・・うん・・?」
「抱かせてください。」
そっと、部屋のドアの閉まる音がした。
*****
もう何も言うまい。
苦情は耳栓簿します。笑