「なにやってるんですか、さんのばか・・・。」

「・・・・スイマセン。」







が竜崎に怒られていた。






















































頭脳は大人、中身は子ども。それでも彼は世界の切り札。

隣の○○君














































事の発端は3日前のことであった。

3日前の4時間目、達のクラスでは数学が行われていた。

しかしその日の数学はいつもと違った。












「今から小テストやるからなー。」










そう、小テスト

しかもこれは抜き打ちみたいなものである。

皆驚いた顔をしてブーブー文句を言っていたが、は顔が引きつっていた。

彼女は現代国語や古典などは得意で満点に近い点数を取るし、社会の日本史や世界史も普通よりも出来るほうなのだ。

決して頭が悪いわけではなく寧ろ結構出来るとは思うのだが、どうにもこうにも数学だけは大の苦手らしく全く出来ないのだった。

そんな彼女をこの小テストごときが悲劇を生むなんて思ってもみなかっただろう。









「この小テストで20点以下取ったやつは1週間放課後補習な。」










コノヤロウなんてこと言ってくれるんだ、先生に向かってそう言いたくなるほどの心境は焦っていた。

しかし焦っていたことだけあり、彼女は見事にそのままの結果を出してくれたのだった。


































「なんですか、この13点って。

「・・・うぅ・・・・。」










は1週間補習のロードへと歩んでしまったのだった。

20点以下を取ってしまったのである。

『出来ない』という焦りはそのまま反映されてしまったのだ。

竜崎が言っているように彼女は小テストで見事に13点という確実に補習になるであろう点数を取った。

因みに100点満点のテストだ。

竜崎がこうしてに怒っているのは珍しい。というか、初めて見るかもしれない。

注意などはよくしているが、怒るなんて滅多にない。












「13点ですよ。」

「・・・何回も言わなくても分かるよぅ・・・。」

「補習ですよ。」

「・・・うん・・・。」

「どういうことか分かりますか?」

「・・?・・・・だから補習でしょ?」

「違います。」

「何言ってるのかよく分からないんだけど・・・」







はぁ、とため息をついてまた口を開いた。









「放課後一緒に帰れなくなります、すなわちこれから毎日さんと一緒にいれなくなります!」

「・・・・・・あ。そっか。」







なるほど、彼が怒っている理由が分かった。

怒っているというよりもごねているのだろうか。

が補習になれば一緒に帰れない、一緒にいれない、つまり彼女といれる時間は学校での生活のみになってしまうということだ。








「どうすればいいんですか、私さんと一緒にいれないなんて耐えられませんよ、死んでしまうかもしれません。」

「え、それは大げさだよ・・・」

「大げさじゃありません。」









口を尖らせ拗ねてしまう。

あぁ、どうしようかとも思うが、13点という点数はもうどうしようもない。

19点や20点ならまだ点数の付け間違いで点数が上がる可能性という希望もあったかもしれないが、13点なんて中途半端に低い点数は

絶対に付け間違いなどないだろう。あったとしても20点以上の回復は絶対にムリだ。










「・・・だって数学苦手なんだもん。」

「知ってますけど・・・。」

「しかも抜き打ちだったんだもん・・・」

「そんな可愛く言い訳しないでください。なんか怒れないです。」

「(別にそんなつもりで言ったんじゃないんだけどな・・・)」

「あ。」

「え?」

「いいこと思いつきました。」

「いいこと?」

「はい。待っててください。」

「・・・うん?」













そう言ってを教室に残し、竜崎はひょこひょこと教室を出て行った。

いいことを思いついたと言っているが、あまりいい予感はしない気がする、そんなことを思っていた。












「あれ?、流河は?」

「あ、ライト・・・なんかね、分かんない。」

「なにそれ。」

「どっか行っちゃった。待ってて、って言われたんだけどさ。」

「ふぅん。小テスト、・・・ドンマイだな。」

「え!?あれ、なんで知ってるの!?」

「さっき流河に怒られてるの聞こえたよ。」

「・・・・そっか。」

「まぁ仕方ないよ、は数学苦手だし、ほら、抜き打ちだったしね?」

「ありがとうライト・・・ライトだけは私の味方だね・・・。」

「はは。」









そんな話をしていれば何用かも言わずに教室を出て行った竜崎がまたひょこひょこと戻ってきた。

の顔を見るなり、嬉しそうな表情で口を開いた。











「何処行ってたの??」

「職員室です。」

「なんかあったの?」

さん、これから1週間補習、」

「うん。」

「私がしてあげます。」

「・・・・・・はい?」






嬉しそうに何を言うかと思えば、そんなことを言う。

の隣にいたライトも不思議そうにそれを聞いていた。






「どういうこと?」

「だから私が数学の高橋先生に代わって補習してあげるってことですよ。」

「皆に教えるの?」

「何言ってるんですか、嫌ですよそんなの。さんだけにです。」

「え、でも」

「今職員室に行って高橋先生と話をつけてきたんで、もう決まりです。」

「学校でやるの?」

「私のところです。」

「・・・・いいの?」

「はい。」







あまりいい予感がしない、なんて思ったがこれは予想外だ。

寧ろこれはいいじゃないか、竜崎なら分かりやすく教えてくれるしやりやすい。










「あああ、ありがとうっ・・!!い、い、いいの?」

「はい。もちろん。それならさんといれますしね。」

「ありがとう〜〜・・!!」







神さまを祭るようにパンパン、と手を合わせて竜崎にお礼を言った。

ライトは『有難いだろうか、この男はただと一緒にいたいがためにきっと無理矢理先生からの補習を請け負ったんだ。』

そう冷静に判断したが、まさにその通りである。

職員室に行き、ライトが考えたように竜崎は無理矢理先生にそう言っての補習を自分がやることにしたのだ。

もっとも、先生も成績トップの竜崎ならば大丈夫だろう、と任せたのだけど。








「じゃあ今から行きましょうね。」

「今日からかぁ・・・。」

「そうですよ、今日からですよ。」

「流河、補習期間って明日からだった気がするけど・・」

「何言ってるんですか、ライト君、おかしなこと言わないでくださいよ。おかしいのは髪の毛だけにしてくださいよ。

「おま、ムカつくなぁっ、ホント!!」






ライトの言うとおり、補習期間は明日からなのだ。

だけどはその期間を把握してないようなので期間を誤魔化して一緒にいようという魂胆なんだ。

なんて小賢しい。








「あ、じゃあ、また明日ね、ライト。」

「あぁ、うん。頑張って。」

「うん。バイバイ。」

「さようなら、ライト君。今日は風が強いので飛ばされないように気をつけてくださいね。」

もうあえて何が?なんて聞かないけど物凄くムカつくな。










































ワタリがその事情を聞けば、『さんは他の教科は出来るのに数学は苦手なんですね。』と優しく笑いながらそう言った。

『お恥ずかしながら』なんて言いながら竜崎グイグイ引っ張られ、自分の隣に座るように強要されていた。










「次の再試で70点以上取ればいいらしいですよ。」

「なっ、70点て結構ハードル高いなぁっ・・!!」

「そうですか?再試なんでこの前のテストよりも問題が易しくなってるんじゃないんですか?」

「そうだといいなぁ・・・。」

「でもさん。本当、なんで数学だけこんなに出来ないんですか?他の教科は出来てますよね。」

「算数時代から苦手だったんだよね。」

「とりあえず、70点以上取れるように頑張りましょう。」

「はい。」







ゴソゴソと鞄から問題集とノート、筆箱を出す。

その様子を見て竜崎は『あ、』とさも思いついたかのように事を提案しだした。









「どうしたの?」

「そうですね、さん。」

「うん。」

「ただやるだけでは覚えません。それにつまらないですしね。」

「・・・う、ん?(や、私は覚えるのに必死だからつまらなくはないんだけどなぁ・・)」

さんが一回間違えるごとにペナルティを与えましょうか。」

「え!!」








にやりと口端をあげてそう言う。

これは自分がに補習をしてやると言ったときから考えていたに違いない。

そんな表情をしている。

いい予感がしないと感じたは正しかった。










「ペ、ペナルティって、・・どんな?痛いのとかは嫌だよ・・・。」

「私がさんに乱暴するわけないじゃないですか・・・。そうですね、」

「・・・。」

さんが問題一つ間違えるごとに、私に一回キスしてください。」

「えっ!!?」










確信犯だ。

数学があれだけ苦手だと言っているが間違えないわけがない。

しかも竜崎がするのではなく、がすることを仕向けている。

彼女がそういうのを恥ずかしがってしないことをいいことに、ここぞと言っている。








「いや、それは・・・」

「じゃあ教えてあげません。」

「それは困ります・・・。」

「じゃあしてください。」

「まだ何も間違えてないよ・・・。」

「はい、じゃあ、この問題ですね、今から説明するんで、これに似た問題作って出しますから解いてくださいね。」








竜崎の顔ときたら、至極楽しそうである。

は間違えてたまるか、と必死に竜崎の説明聞いている。

これはこれで覚える気がいつもよりも倍増していい気がするが、なんとも。














「解けましたか?」

「・・・・待って、後少し。」

「はい。ゆっくり頑張ってくださいね。」







ズズっと砂糖たっぷりの紅茶をすすりながら問題を一生懸命解こうとしているを楽しそうに眺めている。

が間違えても間違わなくても竜崎は楽しめるのでいいのだ。

が問題を解いている間、その姿を見ながらも自分の仕事に手を付けていく。









「・・・・で、できた。」

「はい、見せてください。」

「う、うん。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」






解けた問題を竜崎に見せる。

それをパっと見るなり、竜崎が小さく『ちっ』と舌打ちしたような気がしたが、気のせいにしとこう、はそう思った。










「・・・・正解です。」

「やった!」








舌打ちをしたのはそういうことだったのか。

間違えていればからキスしてもらえるからだろう。

は教えてあげればある程度はちゃんと出来る子なのだ。

不満そうに口を尖らせ、に次の問題を与えていった。










「・・じゃあ、これ、解いてください。」

「ねぇ、なんでそんなに不服そうなの。」

さんがいきなり正解するからですよ・・・。」

「(正解できるために教えてくれてるんじゃないの・・?)」

「因みにさっきのよりも難しいですから。」







にやりとそう口の端をあげて笑いまた紅茶を啜った。

竜崎に与えられた問題を眉間に皺を寄せながら必死に解いていく。

竜崎が言ったとおり、先ほどよりも難易度はあがっていて苦戦しているようだが。

さっき教えてもらった問題を少し応用したものなのだが、は応用したりする問題はとても苦手なのだ。

それを分かっている竜崎は意地悪くそんな問題を出したわけなのだ。(なんてヤツだ)
















「・・・・・・。」

「・・・・・さん、手が止まってますよ?」

「・・・・・・・・・あ、後少しで解けるから・・。」

「どうしても分からなかったら聞いてくださいね。」

「え、じゃあ」

「そのかわりしてくださいね。」

もう少し頑張ってみるよ。








が即答でそう答えたのが残念だったのか、下唇をぎゅっと噛みながらその様子を眺めている。

こうしてペナルティを与えようということでがいつも以上に一生懸命自分で問題を解こうと頑張っているのは

とてもいいことなのだが、その反面、『そんなにキスするのが嫌なのか』と竜崎は少し複雑な気持ちにもなるのだった。














「・・・これであってる?」

「できたんですね?」

「うん、一応・・・。」

「はい、見せてください。」

「はい。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

さん・・・・。」

「は、はい。」

「そんなに私とキスしたいんですね。ここ、3問連続で間違ってますよ。」

「え!!う、嘘だ!!!適当にそうやって言ってるんだ流河君!!」

「・・心外ですよ・・・・。間違ってます。ここはさっきの問題を応用すれば簡単に解けます。このXとYを」

「・・・・・。うん。」

「間違いですね。ペナルティ1つ追加ですね。」

「・・・・・・くそぅ・・・。」

「あの、」

「うん。」

「そんなにキスするの嫌ですか?」








悲しそうにそう聞いて来る竜崎を見て『ちょっと嫌がりすぎたのかな・・でも嫌なんじゃなくて恥ずかしいだけなんだよね・・』と

少し申し訳なくなってくる。別には悪くない。







「あ、いや、ね、嫌なんじゃなくて、ホラ、恥ずかしいっていうか・・・」

「じゃあしてくれるんですか?」

「うん、・・・え?あれ!?ち、ちがっ・・」

「・・・・・」

「・・・・、いや、うん、する、するよ・・・。(お願いだからそんな悲しそうな顔しないでよぅ・・・すごく悪いことしてるみたい・・・)」









がそう言うと、『してやったり』、そんな表情をする竜崎。

それを見て『してやられた』、そんな表情をする











「ずるい。」

「はい、私ずるいですよ。」

「うぅ・・・。」

「じゃあ、ツケにしといてあげますから。」

「ツケ?」

「今はしなくていいです。後で思う存分してもらいますから。」

「思う存分って・・・なんか嫌だ・・・なんか私がまだ間違えるような言い方だよね。」

「間違えますよ。」

「・・・・。」

「はい、じゃあ次の問題いきますよ。」

「・・・へい。」

「間違えないようにがんばってください。」

「う、うん。」

「別に間違っても私はオイシイんでいいんですけどね。」

「!!」






























































こんなことが1週間(と一日。竜崎が日にちを誤魔化して補習期間を一日早くしたからだ)毎日繰り返されていたのだ。

そんなわけで今日の昼休みに再試が行われたわけだ。

そして今、放課後、数学準備室に結果が出されるらしい。









「大丈夫ですよ。」

「だ、大丈夫だといいなぁ・・・。」

「いっぱい勉強したじゃないですか。」

「う、うん・・・。」

「これでまた赤点だったらどうなるんですか?」

「・・・・今度は1ヶ月補習・・・」

「・・・絶対受かっててください。」

「う、うん・・・」

「じゃあ見てきてください。待ってますから。あ、一緒に行きますか?」

「ううん、大丈夫。行ってきますよ!」

「行ってらっしゃい。」





























5分もしないうちにはパタパタと教室に戻ってきた。

急いで戻ってきたんだろう、少し息が切れている。









「お帰りなさい、どうでしたか?」

「っはー、ちょ、ちょ、タンマ、ちょ、待って・・・」

「そんなに急いで帰ってこなくても大丈夫ですよ・・・。」

「うっ、うんーっ、・・・うぐ・・」

「・・・・明らかに運動不足ですね、さん。数学準備室ってこの上の階ですよね。」

「・・・う、うん、・・あ、あああー、やっと落ち着いてきた・・・。」

「落ち着いたところで聞きますけど、どうでしたか?」







竜崎がそう聞けば、は嬉しそうな顔をした。

その表情を見る限り、大丈夫だったのだろう。








「うんっ、大丈夫だった!!」

「そうですか、よかったですね。」

「うんっ、87点だったよ!」

「すごいじゃないですか。13点が嘘のようですね。」

「うん!」







よしよし、との頭を撫でる竜崎。

そしてどさくさまぎれにぎゅうっと抱きしめたのでは少し焦ったが幸い、放課後で教室には誰もいなかった。









「流河君のおかげですよー。」

さんが頑張ったからですよ。」

「いや、だって流河君、教え方上手いし、分かりやすいから。ありがとう、ほんとに。」

「なんか前もこうやってさんに数学教えてお礼言われました。」

「付き合う前だね。」

「はい。なんか変わらなくていいですね。」





そういえば付き合う前もは竜崎に数学を教えてもらって赤点を取らずにすんだのだ。






「ね、流河君。」

「はい?」

「ちょ、目、つぶって。」

「・・?はい。」







にそう言われるがままに目を瞑った。

猫背だけど、よりは十分に大きい背丈。

そんな彼に背伸びをして軽く、ちゅ、とキスをする

自分の唇に触れた暖かい感触がなんなのかはすぐに理解できた。

ただそれに驚いてぱっと目を開けてしまった。










「・・・さん、」

「・・・・・その、教えてくれてありがとう。・・・・っていう、・・・あぁあぁ・・ゴメ、ゴメン・・・!!すっごい恥ずかしいよね・・?!」

「・・・・・。」

「・・い、嫌だったよね、ゴメン、いきなりで、あの」

「何言ってるんですか、嬉しいに決まってるじゃないですか。」








物凄く嬉しそうにまたも抱擁を交わす。

に『大好き』だとかそういうことを言われて喜ぶ姿は幾度と見たことがあるが、こんなに嬉しそうにしてる竜崎は珍しい。

やはり、そんなに大げさに表情に出るわけではないのだけど、彼なりの嬉しいときの表情がには十分に伝わってきた。










さんが自主的にキスしてくれたの初めてです。」

「・・・そうだっけ?」

「はい。いつもは私がするか、私がしてください、と言わなきゃしてくれません。」

「・・・だって恥ずかしいし、ね・・?」

「そしたら私は恥の集大成です。」

「そ、そうか・・・」

「嬉しいです。」

「い、いえ・・・」

「なんかすごく嬉しいのであれです、ペナルティの分はもうこれで十分です。」

「え、」








あぁ、そういえば問題を間違えたらキスをするなんてそんなペナルティを科せられたがすっかり忘れていた、そんな顔をしている

だけど少しホっとしたようなそんな感じだ。

問題を間違えただけキスだなんて、自分でも何回間違えたか覚えていないので正直助かる。









「別にしてくれても全然いいんですよ、寧ろ私はそのほうが」

「いえ、あの遠慮しと、きます。」

「・・・そうですか。すごく残念です。」

「・・・・因みに何回間違えたとか、覚えてるの?」

「1週間(と1日)で50コです。」

「ご、50、・・・間違えすぎだな・・私。」

「はい。でも受かってくれてよかったです。」















これからまた補習なんかにならないようにしてくださいね、そう告げて竜崎もの額に愛しそうにキスを落とした。

本当に、放課後で誰もいなくて良かった。

心臓が口から出そうなぐらいは緊張していたらしい。


















「でもやっぱりたまにはさんからもしてほしいです。」

「・・・・うん、慣れるように頑張るよ・・。」















*****

竜崎に怒られてるヒロインちゃんが書きたかっただけなのに無駄に長くてワケ分からんモノになってしもうた・・。