パラパラパラ
カタカタカタ
資料をめくっていく音
パソコンのキーボードを打つ音
いつもよりもその音の歯切れが悪かった。
頭脳は大人、中身は子ども。それでも彼は世界の切り札。
隣の○○君
「かわいいねぇ、ほいほい、ホラ、おいでーvv」
隣の部屋から聞こえてくる声
さんの声だ
これが気になって気になってさっきから仕事に手がつきません
『エル』と名づけられた子猫にかまってるんでしょうけど
・・・・・・・・・・かまいすぎじゃないですか?
かまいすぎですよね?
同じ『L』なのに私はああしてかまってもらってことがありません
「うわーっもう!!かわいいよーー食べちゃいたい。」
何言ってるんですかズルイです・・・ズルイです・・・!!
そ、そんなこと私だって言われたことないですよ!?(言われたいのか?)
寧ろ私がさんを食べちゃいたいのですが
ていうかさんのあの声
すごくデレデレしてます
・・・・・・・・この仕事さえなければ今すぐ隣の部屋に行くのに
さっきからキーボードを打つ手を止めたり大事な資料なのについつい力を入れてクシャっとしてしまっているのはこのせいだ。
が拾ってきた子猫、によってエルと名づけられたのだが本物のLが仕事をしている間、隣の部屋でそのエルと遊んでいるのだ。
いつも仕事をしている間はかまってあげられなく退屈させてしまっているぶん、に遊び相手ができたことはとてもいいことなのだが、
竜崎はどうにもこうにも隣の部屋でじゃれているとエルが気になって仕方がないようだった。
別に普通にしていれば隣の部屋の声も気にならないはずなのだが、仕事をしつつも隣の部屋に耳を傾けすましているため、
の楽しそうな声が気になって仕方がないのだ。
落ち着け
落ち着け私
相手は子猫、子猫です
それにいつもいつもさんを退屈させてしまっているんですし・・・
遊び相手ができていいじゃないですか
そうです・・そうですよ、子猫ですから
子猫です
あれが人間のオスだったとしたらそれこそもう殺してどうにかしてやりますけどね。
自分に言い聞かせるようにもだもだと邪念を振り払おうとする。
が、どうにもこうにも集中できない。
Lがそんなことでいいのか、とでも言われそうなこの姿。
「あー、もう、エル大好きーvv」
プツン
竜崎の中で何かがきれた。
「さん・・・!!!!」
「あれ、流河君、お仕事終わったの??」
ニコニコとエルを抱きながら竜崎に『おつかれさま』と言う。
思わずその笑顔に竜崎もへにゃりと顔が緩んだ。
「いえ、終わってないんですけど・・・休憩です。」
「そっかそっかー。」
の腕の中で気持ちよさそうに喉を鳴らしているエル。
羨ましそうに、いや、恨めしそうにそれを見る竜崎。
そんなことエルには知ったことはない。
「可愛いんだよ、この子ー。」
「そ、そうですか?」
「人懐っこいの。」
「よ、よかったですね。」
「うん。さっきもねぇ、自分からチューってしてきたんだよ。もう可愛すぎだよーあーもうー!」
「え!!?」
竜崎のこの顔。
さっきまで捨てられていた子猫とは反対に今度はこっちのLが捨てられた子犬のような顔になっている。
「そ、そ、それ、」
「ん?」
「オ、オスですよね?」
「うん。」
「う、うんじゃないです・・さんのアンポンタン・・・・」
「アンポンタン!?;」
「この前ミサさんに教わりました。」
「ろくなことを教わってないね・・・。」
しゃがみこんでいじいじしだす様は本当に小さい子どものようで『本当に高校生なのか』と疑いたくもなる。
残念ながらこれでもと年は一緒なのだ。
「そっちのエルばっかかまってないでこっちのLもかまってください。」
「・・あぁ、そういうこと。」
竜崎は後ろから座りながらを抱きしめる。
はで腕にエルを抱えている。
エルはワタリがくれた子猫用のおもちゃを持ってじゃれている。
なんとも変な構図だ。
「だって流河君、お仕事してたでしょう?」
「いつもなら仕事してる途中にたまに、来てくれるじゃないですか・・。」
「でも邪魔になるでしょ?」
「邪魔になんてならないです。寧ろそうしてもらったほうがはかどります。というか私さっきからさんと猫が
気になって仕事が全く進んでいません。」
「じ、自慢げに言わないの。」
の腕の中で気持ちよさそうにしていたエルはヒョイっと顔をあげ、不思議そうに竜崎を見つめる。
その姿はやはり愛くるしく、竜崎も流石に口を閉ざした。
「・・・・可愛さって罪にならないんですね。」
「え?;」
「だってズルイじゃないですか。この猫、可愛さを売りにしてこうして私まで黙らすなんて。」
「・・・黙ってないよ・・・。」
「さんまでもを虜にして。」
「可愛さには負けるよね。」
「でしょう?ズルイですよね。」
「まぁ・・うん、ズルイね。可愛いからなんでもしてあげたくなっちゃうもんね。」
「ほら。ズルイですよ。エル、あなたズルイですよ。」
「子猫に向かって何を。;」
竜崎がそんなことを言っている最中、エルは疲れてしまったのかいつの間にか眠りについていた。
今日一日、やはり色々あって疲れたのだろう。
「・・寝ちゃってる。」
「本当ですね。」
「疲れちゃったんだろうね。」
「そうですね。でもやっとこうして安心して寝ることが出来て良かったじゃないですか。」
「そうだね・・・公園で一人でいたら・・危ないし、寂しいし、眠れないよね。」
そう言ってエルを小さなバスケットの中へと入れてあげた。
バスケットの中に敷かれているタオルがフカフカして気持ちいいのか、うずくまるようにして眠っている。
「・・・うう・・ホント・・可愛い・・・。」
「愛くるしいですね。」
「ね。」
「じゃあさん。」
「ん?」
後ろからぎゅーっと抱きつきじゃれるようにに声をかけるもう一人のおっきいL。
大きくてもやることは小さい子みたいだ。
「エルも寝てしまいましたし、今度こそこっちのLにかまってください。」
「・・・おっきな猫さん。」
「はい。」
「さっき、お仕事あんまり進んでなかったんでしょう?」
「・・・はい。」
「じゃー、それやったら構ってあげるよ。」
「!!」
にそう言われてはやらなくては、いそいそと仕事の溜まっている部屋へと戻り急ピッチでそれに手を付け始めた。
こうでも言わないとやらない、もだいぶ竜崎の扱い方に慣れてきたみたいだ。
「さん。」
「あ、終わったの??」
「いえ、後少しです。」
「うん、待ってる。」
「さっきエルに大好きって言ってましたね。」
「うん。」
「私にも言ってください。」
「え、」
「そしたらもっと仕事頑張れます。」
「・・・・ズルイなぁ。」
耳元でそっと、『流河君が一番大好きだよ。』そう言えば、竜崎は満足そうにして仕事に手をつけた。
竜崎も、の扱い方には慣れている。
仕事にひと段落がついたとき、が竜崎構うというよりも、竜崎がに構っている構図になっていたのもいつものこと。
「さん。」
「なーに?」
「こうやってさんを抱きしめるのだけはLだけの特権ですね。エルじゃ出来ません。」
「・・それはLじゃないと私も嫌だなぁ。」
「・・・あぁ、もう、可愛いですさん。」
「なんかエルとかLとか言ってるとワケ分からなくなっちゃうね。」
「・・・・・無視ですか。」
窓の外は雨があがってさっきとは打って変わり綺麗に青空だった。
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ねこにゃんに嫉妬してる竜崎が書きたかっただけ。