「あ、それ私のです。駄目です。」
エルが私のケーキを食べていた。
頭脳は大人、中身は子ども。それでも彼は世界の切り札。
隣の○○君
ベリっと剥がすようにケーキからエルを離した。
ちょっと離れたらエルにケーキを食べられていた。
自分のだと言わんばかりにそのケーキを片手で掴み、モグモグと食べる竜崎。
まさか食べられるとは。
しかもさんが作ってくれたやつを。
普段ケーキなんて食べようともしないくせに、さんが作ったのが分かるんでしょうか。
「にゃあ。」
「なんですか?」
「なー。」
「かまってほしいんですか?」
「にゃあ。」
「私はさんじゃないですよ?」
「にゃあ。」
『にゃあ』しか言わないので何を言っているのか分かりませんが。
かまってほしそうにしていますね。
「ワタリがこれを買ってきてくれましたよ。」
ワタリがこの前買ってきてくれた子猫用のねこじゃらしのオモチャをエルに渡したら
嬉しそうに食いついてきました。
これ、何が面白いんですかね。
「これ、面白いですか?」
「にゃっ。」
焦らすように、エルの手が届きそうで届かない高さでねこじゃらしをプラプラさせると
よこせとばかりに手を伸ばしてきた。
あぁ・・これは可愛いですね。
「ケーキは美味しかったですか?」
「にゃあ。」
「あれ、さんが作ったんです。」
「にゃー。」
「食べちゃ駄目ですよ。私のおやつですから。」
言葉が通じるわけもないのにさっきからエルに話しかける竜崎。
だけど竜崎の言葉を理解するかのような仕草や鳴き声をするので竜崎も少し面白くなってきた。
「エルの名前は私のLです。」
「にゃー。」
「さんが一番大好きなもの、ということでつけた名前ですよ。」
「にゃう。」
「私もさんが大好きです。」
「にゃ、にゃー。」
「エルもですか?」
「にゃあ。」
「駄目ですよ、さんは私のです。」
エルに顔を近づけてそう言った。
かまってもらえて嬉しいのかエルはそんな竜崎の言葉なんて気にせず嬉しそうに竜崎の鼻をペロリと舐めた。
「くすぐったいです。」
「にゃー。」
「美味しくないですよ?」
「にぃ。」
「そうですね、・・あぁ、これがあります。」
子猫用のミルクをガサガサと袋の中から出しながらそう言った。
これもワタリが買ってきてくれたもの。
ミルクをエル専用の器にトクトクと移していると嬉しそうにミルクに近寄った。
「どうぞ。」
「にゃあ。」
スっと差し出せば、それは美味しそうにペロペロとミルクを舐めている。
そんなエルを見て自分も何か食べたくなったのか、今度はワタリが用意してくれたケーキを頬張った。
「おいひいでふね。(美味しいですね)」
「にゃー。」
「ほういえば・・・のみほんではら・・・・(そういえば・・・飲み込んでから・・・・)」
「にぃ・・」
「・・・・喋りなさいと、さんに言われました。」
ゴクンと飲み込み、エルにそう言った。
そんなこと構わずにミルクを美味しそうに飲んでいる。
あっという間にケーキをペロリとたいらげた竜崎はまだ物足りなそうにケーキの入った箱からもう一つ、取り出した。
「こうしてたくさんケーキを食べているとさんに『糖尿病になる』って言われるんです。」
「にゃあ。」
「心配してくれてるのはとても嬉しいです。が、糖尿病にならない自信はあります。」
何を根拠にそんなことを言っているのか分からないが、自慢げにそう言っている。
確かに有り得ないぐらいの糖分摂取、そして少なすぎる睡眠時間、不規則なその生活のわりに竜崎が
体調を崩していることは本当に、滅多にない。
眠そうにしていることもあるが、“眠そう”なだけで具合が悪いわけではないのだ。
ある意味、これも大した才能の一つとでも言うのだろうか。
それでもは竜崎の体が心配なので気にかけている。
「もう飲み終わったんですか?」
「にゃぁ。」
「早いですね。」
「にゃー。」
喉をゴロゴロ鳴らしながら竜崎にじゃれているエルと、それを面白そうに撫でている竜崎。
突然ピピピ、と単調なデジタル音が鳴った。
これは竜崎の携帯の着信音だ。
「電話です。さんです。」
もちろん、ワンコールで出た。
その様子を興味津々に見ているエル、そしてからの電話に嬉しそうにしている竜崎。
『もしもし、流河君?』
「はい。どうしたんですか?」
『あのね、さっきそっちに忘れ物しちゃったの。だから今から取りに行くね。』
「忘れ物?」
『うん。お家の鍵が入った巾着袋忘れてきちゃった。』
忘れ物。
チラリと部屋を見やれば、そういえば見慣れた可愛らしい巾着袋のようなものがテーブルの上にチョコンと置かれていた。
『私が届けに行きますよ』と、言葉が出そうになったが竜崎は少し考え、にまりと口端をあげその言葉を止めた。
「あぁ・・ありました。桜の絵が描いてあるピンクのやつですね?」
『うん。』
「今少し出れないので届けに行けないんですが・・・」
『ううん、いいのいいの。取りに行くからさ。』
「はい、じゃあ待ってますね。」
『うん、ゴメンねー。じゃあすぐ行くよ!』
「気をつけて来てくださいね?」
『はぁい。』
プツリと電話が切れると竜崎はエルに向かってこう言った。
「今からまたさんが来ますよ。」
「にゃあ〜。」
「嬉しいですね。」
「にゃあん。」
「忘れ物を取りに来るそうです。」
「にゃー。」
「だけど私がまたさんに会いたいので届けてあげるのをやめることにしました。」
「にゃあ。」
「いい案でしょう?」
「にゃぁ。」
が来るまで5分とちょっと。
竜崎とエルはが来るのをまだかまだかと待ちわびた。
*****
猫相手にだってちゃんのことばっか話す竜崎。
Lもエルもちゃんが大好きです。