「し・・・・・」

『流河君?流河君、どうしたの?』

「・・・・・・・死にそうです・・・」

『え!?;』






















突然の彼からの電話。

何かと思えば、そんなことを言われた。

そんなこと言われて、ブツリと電話が切れたものだから、こうしちゃいられないと思って

私は今彼の元へ向かっていた。






































































頭脳は大人、中身は子ども。それでも彼は世界の切り札。



隣の○○君












































お気に入りのケーキ屋。

いつもの隅の席でケーキを食べているのは竜崎と

ここの席はあまり話し声が聞こえないのでとてもいい。















「美味しいなぁ。」

「美味しいですね。」








パクパクと食べながら、本当に美味しそうな顔で食べる

パクパクと食べながら、あまり表情を変えずに、それでも美味しいと言いながら食べる竜崎。













「幸せです。」

「あは、確かに。」

さんとこうやってここのケーキを食べているとき、すごく幸せです。」









2個目のケーキに手を出しながら竜崎はそう言った。

テーブルにはあと1つ、ケーキがある。

これも竜崎のものだ。














「美味しいです、本当に。毎日食べたいぐらいです。」

「うん?ほとんど毎日食べてるよね?流河君は・・。」

「食べれなくなります・・・。」

「・・?どういう意味?」

さんに大事なお話があるんです・・・・。」

「?」










深刻な顔をして、そして悲しそうな顔でにこう言った。















さん・・・・」

「ん?」

「しばらく・・・会えないです・・・。」

「え?」

「・・・・仕事が押していて、どうしてもこもらなくてはいけなくなりました・・。」

「そっかぁ・・・。」

「・・え・・。」

「え?」

「・・・そ、そんな・・・反応それだけですか・・!?」

「・・えぇ?;」










信じられないような表情でにそう訴えた。

はどう反応していいか分からなくとまどっている。

ぼのぼののように冷や汗がピュピュピュピューっと出ている、そんな様子だ。













「あ、会えないんですよ・・?」

「う、うん・・」

「しばらく会えないんですよ・・?」

「で、でも仕事、・・なんでしょう・・・?」

「・・・そうですけど・・・。その、・・・嫌だとか思わないんですか?」

「嫌だよ?」

「今度はすごくあっさりとそんな・・・。」

「嫌だって言ったら、・・・会えるの?」

「・・・・・。」

「ね?」

「・・・はい・・・。いえ、だけどそうじゃなくて・・・もう少し・・」

「・・?」

「残念がってほしかったです・・・。」












の聞き分けのいい返事に少々残念な様子の竜崎。

いや、聞き分けがいいのは分かっている、彼女がちゃんと我慢してくれていることだっていうのを。

だけどそれでも少し我侭を言われたい、というのは竜崎の我侭であって。

仕事の都合で、と言われればは会いたくても邪魔だけはしたくないので合いたい気持ちを抑えてそう答えるのに。

そういうとき竜崎は学校にも来なくなるので仕事が終わるまで本当に会えない。














「どれくらい会えない??」

「・・・そうですね・・・1週間・・・」

「・・1週間かぁ・・・。」

「長いですね・・・。」

「長いね。・・でもだからって急いで仕事片付けようとして睡眠怠ったり食べなかったりは絶対ダメだよ。」

「なんで分かったんですか。」

「流河君が考えることぐらい、大体分かるようになってるよ。」

「嬉しいです。」

「・・・無理しないでね?」

「はい。・・できるだけ。」

「それじゃあ意味ないよ・・・。」

「でも早く終わらせてさんに会いたいですから。」

「・・・・体調壊して辛そうにしてる流河君に会いたくないよ。」

「大丈夫です。」












ヒョイっと自分のフォークをの口元へ持って行き、『どうぞ。』と食べさせた。

『これも美味しいですよ』という意味で彼女に食べさせたのだが、いきなりのその行為には少し恥ずかしくなった。

だけど一週間彼に会えない、声も聞けない、そう思うとこの竜崎の行為が愛しくてずっとしてもらいたいぐらいになる。














「というわけで、今日泊まりに来てください。」

「え?」

「だって一週間もさんに会えなくて声も聞けなくて触れられないなんて地獄です。充電です。」

「そうだね。うん、じゃあ今日泊まりに行くよ。」

「一週間分ずっとくっついてますから。」

「うん、流河君が納得いくまでそうしてていいよ。」

「はい。」
























































それから一週間が経ち、やっとこさ竜崎から電話がかかってきたかと思えば『死にそうです』と

か細い声で言うものだから、はかなり焦っていた。

もしかして一週間、全然寝てないんじゃないか、なにも食べてないんじゃないか、それで今度こそ病気になてしまったんじゃないか、

そんなことを考えると心配でたまらなくなった。

竜崎から電話をもらい、必要最低限のものだけを持って彼の元へと向かった。












(いや、何も食べてないってことはないよね・・・だってワタリさんいるし・・・・)





(あ、でも集中しちゃうと誰が何言ってもそっちに集中しちゃうから・・・もしかして・・・)





(それでもワタリさんなら食べさせてあげてくれてそうだけど・・・あー・・でもお菓子ばっかだなぁ、きっと。うん、ご飯は食べてない。)






(あ、でもやっぱり病気かもしれない)






(睡眠不足とか、過労とか・・・・)
























彼の元へ向かっている途中、竜崎がどんな生活をしていたのかを想像し、彼の現状を思い描きますます心配になった。

とりあえず、ご飯はまともに食べていないことは確実であろうと思ったは着いたらまずご飯を作ろう、と考え途中スーパーマーケットに寄り

彼でもちゃんと好んで食べてくれるような材料を買って行った。

ビルのような、大きなマンション。

竜崎のもとへ着くと、息を整え、中へ入った。

入った瞬間、目の前が何かに覆われるように真っ暗になった。


















「ちょっ・・りゅうがくん・・・」

















バフっと竜崎が倒れこむようにに抱きついてきたので彼女の視界が暗くなったのだ。

無言で抱きつく竜崎を見て、具合が悪いんじゃないかと彼の背中をポンポンとさすりながら声をかけた。

















「りゅ、流河君っ、大丈夫っ?具合悪い??死んじゃいそうなくらいつらいの?ワタリさんは?」

・・・・・・・・・・です・・・

「ん?なぁに?今からごはん作るから、ちょっと待っててね?」

会いたかったです・・・・・・。














ボソボソと消え入るような声でそう言った。

その言葉にきょとんとしながら、もう一度竜崎に声をかけた。












「流河君?大丈夫?」

「・・・・はい・・今もう大丈夫になりました・・・。」

「死にそうじゃなかったの?」

「死にそうでしたよ・・・。」

「具合、悪かった?」

「悪くないです・・・。」

「じゃあ、お腹すいちゃった?」

「空いてません・・・。」

「電話で死にそう、って言ってたの、どうしたの?」

「・・・・さんに会えなくて死にそうでした・・・・。」









ボソボソとそう言う竜崎の声は、ちゃんとに聞こえている。

会えなくて死にそうだった、なんて、そんなこと言われると思わなかった。

なんて愛しい人なんだろう、そう思った。


















「・・・お疲れ様、流河君。」

「・・・・はい・・。」

「大丈夫?」

「はい・・・さんに会えましたから。」

「・・・そう?」

「はい・・・。仕事をしている間はまだ我慢できるんです。仕事が終わった瞬間、さんに会いたくて仕方がなくなりました。

会えなかった分を思ったら死にそうになりました。充電切れです。」

「・・・・相変わらず大げさだなぁ・・・。」

「大げさじゃありませんよ。さっき本当に死にそうだったんですから・・・。」















ぎゅーー、っと抱きつきながらそう言った。

も竜崎の背中に腕を回してポンポン、と竜崎の背中を撫でた。

のその行為に竜崎も満足そうにしていた。












「平気?」

「はい。」

「本当に?ゴハンは?ちゃんと食べてた?」

「・・・はい。」

「食べてないね。」

「・・・・・・はい。」

「もう・・・。寝た?」

「・・・まぁ、一応・・・。」

「20分とか、そのぐらいでしょ?」

「よく分かりましたね。」

「よく分かりましたね、じゃないの。・・はぁ。」

「すいません。」

「忙しいのは分かるんだけど、さ・・・やっぱり、心配なんだよ。」

「ありがとうございます、それだけで疲れ取れます。」

「だからそれじゃ駄目だって;今からゴハン作るから・・食べれる?」

「食べます。」

「うん、じゃあ待っててね。」

「あまり野菜は入れないでくださいね。」

「・・・・。」













がキッチンを借りて作ってる最中も、ずっと背中に張り付いたままでいたりと、とにかくにべったりだった。

作りにくそうにはしていたが、竜崎がそれですごく嬉しそうにしているのを見ると注意する気も失せてしまった。

一週間頑張ったご褒美、とでも言うのだろうか。

野菜を入れないでくれと言ったが、そんな要求は無視して料理に野菜を使っていた。

それでもの作ったモノが嬉しいのかペロリとキレイに食べたわけだが。(ちゃんと食事を取ったのはかなり久しいらしい。)

























「美味しかったです。」

「いやいや・・そう言ってもらえると嬉しいね。」

「久しぶりにご飯を食べました。」

「ダメだよ、ちゃんと食べなきゃさぁ・・・お菓子ばっかで・・・。どうせここ一週間もお菓子しか食べてなかったんだよね。」

「そうですね。」

「よく病気にならないよね、ある意味才能だけどやっぱり良くないよね。」

「心配してくれて有難うございます。」

「・・・・。」

「・・すいません、気をつけますよ。」

「うん。」









心配してくれてありがとうとかそういう問題じゃないんだ、と、そんな目で竜崎を見るに気づいた竜崎は

彼女の機嫌を損ねないようにと謝った。

だけどその表情は嬉しそうで、普段そんなに笑わない竜崎だがにこりと笑った。












「どうしたの?」

「はい、なにがですか?」

「嬉しそう。」

「あぁ・・。いえ、やっぱりさんがいるのがいいなぁと思いました。」

「・・うん?」

さんがいないと本当、駄目みたいです私。」

「私もあれだよ?一週間長かったよ。」

「辛かったですか?」

「え?・・うん・・・。」

「寂しかったですか?」

「う、うん、・・やっぱ電話もメールもできないのは・・ね?」

「会いたかったですか?」

「うん・・・。」









の答えに満足そうにするとズズっと紅茶をすすった。













さん。」

「ん?」

「眠くなってきました。」

「ほら・・・やっぱり・・・。分かったよ、今ベッド直してきてあげる。」

「何言ってるんですか違いますよ・・・。添い寝してくださいよ。」

「ん?んん?」

「一週間頑張ったご褒美で、駄目ですか?」

「しょうがないなぁ・・。」











私が『いいよ』って言うのを期待したような、見透かしたような、嬉しそうな表情でそんなこと聞くんだもん。

駄目だなんて、言えるわけない。

言おうとも、思ってなかったけど。



















「久しぶりにゆっくり、安心して寝れます。」

「そうだね、ゆっくり、寝てね。」

「いてくださいね。」

「いるよ、流河君が起きるまで。」

「ありがとうございます。」

「おやすみ、流河君。」

「はい、おやすみなさい。」

















ちゅ、と可愛らしい音を立ててキスをすると、よっぽど疲れていたのだろう、

竜崎はすぐに眠りについた。

の手をぎゅぅっと握って、離さないまま。

そんな竜崎の姿を見て思わずクスっと笑いがこぼれた。



















「こんなにぎゅって握らなくても・・・何処にも行かないのになぁ・・・。」
































だって私も貴方に会いたくて死にそうなくらいだったんだもの。






































竜崎の隣でもゆっくりと瞼を閉じた。













*****

『貴方に会いたくて死にそうだった』っていうのを使いたかっただけ。