「さん、さん。」
「え?なに?」
「夏休みさ、もう予定入ってる?」
「え・・いや、これと言って綿密には入ってないけど・・・でも」
「じゃあさ!!良かったら一緒にプールとか」
「・・・誰の許可なしにそういうこと言ってるんですか?」
「あ、ほら、流河君が・・・」
「仮に私が『いいですよ』とでも言うとでも思ってるんですか?」
「・・・・・スイマセンでした。」
夏はサバイバルだ。
頭脳は大人、中身は子ども。それでも彼は世界の切り札。
隣の○○君
「なにもあんなに脅すように言わなくてもいいのに・・・。」
「何言ってるんですか、当然です。大体さんと私が付き合っているというのを知っておきながらああいう誘いを
していること事態が信じられません。なめてます。」
「まぁ、うん、付き合ってるってことを考えてないのかな・・・。」
「違います、絶対違います。夏という季節に便乗して夏という季節を利用して恋人がいるにも関わらずさんを誘って
あわよくば惚れさせてしまえ、そんな策略です。」
「・・・・・・。」
もうすぐ夏休みだ。
学生のほとんどは夏休みは嬉しいものであり、浮かれる季節でもある。そしてハメをはずしすぎる季節でもある。
皆プールや海、キャンプに行ったり、そんな計画を立てているのだろう。
特にプールや海なんて好きな人や気になる人と行けたら最高の場所だ。
あわよくば、あわよくばというかもういい仲になってしまえ、という小賢しい計画だ。
そんなことを考えている単細胞な男子が悲しいことに世の中には溢れるほどいるもので、残念なことにたちのクラスにも存在した。
は先ほどからそんな輩、5人ほどに声をかけられていたがことごとく声をかけた男子達が落胆したような表情で
その場を去っていった。
竜崎が黙っているはずがないであろうということを考えられないのだろうか。
そんな竜崎がいる前でよくもまぁ、そんな約束を彼女につきつけることができよう。
「さんもさんです、なんであんなヤツらに優しく接するんですか・・・。」
「え?特に特別優しくは接してないけど・・普通じゃないかな・・・?」
「さんの普通は優しいので『もう近寄らないで』くらい言うのがベストです。」
「それ、流河君の個人的な意見すぎるよ。」
「バレましたか。」
「バレるとかそういう問題じゃ・・・。」
「とにかく、油断も隙もあったもんじゃないです・・・。さんが可愛いのは分かります、痛いほど分かります。
誘いたくなるのも分かります、寧ろなんか誘われているような気さえするような」
「・・ねぇ、流河君、大丈夫?」
「至って平常ですが、なにか?」
いつになく喋る竜崎に、竜崎まで夏でどうかしてしまったのかと心配するだが、至って心配はないようなので
無視することにした。
「夏休みかー。」
「?」
「流河君、どうするの?」
「・・・いえ、特に・・・いつもどおりです。」
「じゃあ、私お邪魔してもいいの?」
「もちろんです。毎日でも来てください。」
「え、いいの?本当に毎日行っちゃうよ?」
「はい、来てください。」
竜崎が嬉しそうにそう言うと、は竜崎以上に嬉しそうな表情になった。
『じゃあ、夏に美味しく食べれるスウィーツとか作れるようにしとくよ!』とい自分の腕をポンっと叩いた。
「ミサちゃんもライト誘って海行きたいって言ってたよ。『ライトと海行けるなんて最高』だって。ほんと、
ライトのこと好きなんだね。」
「まだ行くって決定してないのにすごいですね。」
「まぁ、それはミサちゃんのご愛嬌ってことでさ。」
「さんも行きたいですか?」
「え?いや、別に・・。」
「・・・。なんでですか。」
「え?うーん・・・焼けるし・・・」
「じゃあプールは?」
「プールも焼けるよ。」
「室内なら焼けません。」
「ああ、そっか。・・・流河君行ってみたいの?」
「え?・・あ、いえ、そうじゃないんですけど」
「だったら気使わなくていいのに。ね?」
「・・・じゃあ、なにかしたいこととかありませんか?」
「え?・・・そう聞かれるとないなぁ・・・。」
「あまり欲がない人ですね・・・。」
特に行きたい所もないし、何をしたわけでもないのは本当のことなのでうーん、と唸りながら
夏休みにやることを本気で悩んでいた。
こういう子もまた珍しい。
「いえ、あの、悩まなくていいですよ。なければないでいいんですし。」
「そうだね。それに流河君のとこ遊び行くしね。あ、邪魔はしないよ。」
「・・・あぁもう。」
の手をぎゅー、っと握ったかと思えば、はぁ、とため息を一つついた。
「ん?なに?」
「なんでそんなに可愛いんですか・・!」
「・・・・暑さでやられてしまったのかい?」
握られた手をほどき、竜崎の頭をポムポムと撫でてそう言ったが、竜崎はこれまた至って平常なようだ。
「私さんが邪魔だなんて思ったことこれっぽっちも、一度だってありませんよ・・・寧ろいてくれるとはかどるんですよ?」
「はかどるって・・それはさすがに大げさじゃない?」
「大げさじゃありませんよ。」
「そ、そっか。」
「そうですね・・・一度くらいは、何処か出かけませんか?」
「え、でも」
「気を使ってるとかじゃありません、私がさんと夏休みに何処か行ってみたいだけです。駄目ですか?」
「だ、駄目なわけないよ!むしろ嬉しいっていうか・・。」
「じゃあ、行きたいところ考えておいてください。」
「う、うん!」
嬉しそうな顔で頷くを見て竜崎も頬が緩んだ。
こうして彼女の嬉しそうな顔を見ると、こんなことで喜んでくれるのならいくらでも、何処へでも連れて行ってあげるのに、
そう思うが、そうもいかないのが自分の立場だ。
こういうとき、竜崎は自分の置かれている立場を少し、恨めしく感じることもしばしあった。
「あ。」
「なんですか?」
「思いついた。」
「いいですよ、言ってください。」
「内緒。」
「・・・・・あの、内緒にされたら行けないんですけど。」
「そのときになったら教えるよ。」
「気になりますね。」
「うん、気になってて。」
行きたいところを思いついたかと思えば、内緒。
これじゃあ竜崎が何処かに連れて行くんじゃなく、結果またが竜崎を何処かへ連れて行くような
形になっているが彼女はそんなことはどうでもいいらしい。
「なんか甘いもの食べたいですね。」
「唐突だね、いつもながら。しかもさっき食べてたよね。」
「さっきはちょっとしか食べてないですよ。」
「あ、私チョコ持ってるよ。」
「え・・」
「え?いらない?」
「いえ、いらないとかそういう以前に・・・そのチョコ出してみてください。」
「?」
竜崎にそう言われ鞄からチョコを取り出した。
取り出した瞬間、グニャリと変な感触がの手に当たった。
「ぎゃーー!!グッチョグッチョだ!!溶けてるよ!!!うおおおい!!!」
「・・あぁ、やっぱり。よく夏にチョコを持ってこようなんて思いますね、さん・・・。」
「うわーーー!!やばい!鞄の中がチョコ・ザ・ワールドになってる!!」
「溶けたのが出ちゃったんですか?」
「に、匂いが・・!!チョコの匂いが充満しておりますよー・・!こりゃあアリンボが寄ってたかってきますぞ!」
竜崎の言うとおり、よく夏にチョコを持ってくる気になるものだ。
夏の学校にチョコを持ってくるのは厳禁だ。
よっぽど食べたければ仕方ないが思いつきで持ってくるものじゃない。
苦い顔をしながら手を洗いに行くと、その様子を呆れながらも
『さんってこういうところおバカですよね。』なんて言いながら面白がっている竜崎。
「ひどい目にあったぜ。」
「いや、さんのミステイクです。」
「流河君がすぐ甘いの食べたいっていうから、あ、じゃあチョコ持ってこう、って思ったんだよー。」
「・・気持ちはすごく嬉しいんですが、ちゃんと考えたほうがよさそうですね。」
「そうだねー。」
「でも、ありがとうございます。いただきます。」
「え、や、でもデロデロだよ。」
「かまいませんよ。」
そう言ってからチョコを受け取りペロリと舐め取るように食べた。
溶けてて口元についたチョコを可笑しそうに笑いながらはタオルでふき取ってやった。
「ついてましたか。」
「ついてましたね。」
「ありがとうございます。」
「いえいえ。」
そんな様子をさっきを誘って(竜崎によって)断られた男子が恨めしそうに見ていた。
そんな男子に気づいたのか、竜崎は少し得意げな気分になった。
にこうしてもらったり、してあげるのは自分だけだという優越感。
夏休みも彼女と過ごすのは自分だ、と思うと嬉しかった。
「早く夏休みになって欲しいですね。(クラスの男子とさんが接触することもないですし。)」
「うん、そうだね、ゆっくり寝れるしね!」
「・・・・。」
夏休みまで、あと3日。
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夏休みの展開早くね?
とか、そういうツッコミなしでお願いしまーす。笑