「エルーvおいでーv」
「はい、なんですか。」
「・・・・流河君じゃないよ。」
頭脳は大人、中身は子ども。それでも彼は世界の切り札。
隣の○○君
竜崎の所へと遊びに来ているだが、竜崎もこれで多忙の身。
先ほどから“L”の仕事を一生懸命こなしている。
そんな竜崎の姿を見るのも好きなは子猫のエルと遊んでいようとエルを呼んだのだが、
エルではなく竜崎がひょこりとやってきた。
「だってさん、今『Lおいで』って言ったじゃないですか。」
「違うよ、猫だよ、猫のエルだよ。分かってるくせに・・・。」
「分かりません。私かと思いました。」
「嘘。私流河君のことLって呼ばないじゃない。」
「・・・だってさんがエルのことばっか呼ぶから。」
「(拗ねてる・・・)お仕事終わったら一緒におやつ食べよう、って言ったでしょ??」
「そうですけど・・・。」
「じゃあ、とりあえずキリのいい所までやって一緒におやつ食べよう??」
「・・・・はい。」
こうしてにかまってほしくてやっているわけだが。
ブスっとしながらいつもの定位置に座り、また仕事を始めた。
かれこれ2時間はこうしている。
「さーん・・・」
「ん?終わった??」
「まぁ、キリのいいところまでは。」
「じゃあ、おやつにしよっか!」
「はい・・・。」
そう言っては竜崎がひと段落したことをワタリに告げると、もう準備していたのか
ワタリがすぐに専用のティーポット、そして今日のおやつを部屋に持ってきた。
そんな様を見ては相変わらずのこのワタリの手際の良さに感心していた。
「ほら、ワタリさんが持って来てくれたよ?」
今日はワタリの持ってきたティーセットでがお茶を淹れたいた。
竜崎のリクエストだ。
の淹れたお茶が飲みたい、と。
ワタリさんみたいに美味しくできないよ?と念を押したが、竜崎はそれでもいいから淹れてくれと言っていた。
そして今日のおやつはあんみつにあん団子、加えて可愛らしい小皿にはこんぺいとうが乗っかっていた。
最近竜崎は和菓子をよく口にしているらしく、ワタリがこのチョイスをした。
「はい。」
「ありがとうございます。」
お茶を淹れて差し出すと、少し嬉しそうな表情でカップを受け取った。
そして団子を更に取って渡してやった。
しかし、竜崎はその皿を受け取ろうとせず、フイっとそっぽを向いてしまった。
「どうしたの?お団子だよ?あんこの。」
「・・・・いらないです。」
「えええ!?な、なんで!?」
甘いものにはめっきり目がない竜崎が『いらない』と言ったことに対しては物凄く驚いている。
いつもなら率先して食べてしまうのに、こんなことは初めてである。
「大丈夫だよ、これ、甘いよ?」
「嫌です。」
プイっとそっぽを向いたまま、目を合わせない。
困った表情ではどうしたものかと考える。
甘いものを拒む竜崎なんて始めてだからだ。
いつもはあるだけ食べてしまうくせに。
仕方ない、そう思い立ち上がる。
「じゃあ、他に好きなの買ってきてあげる。なにがいい?ケーキ??」
「嫌です。いりません。」
「え?ケーキも嫌?」
「嫌です。」
「えええ・・・」
これは困った、そんな顔をしている。
相変わらずプイっと視線をそらしている竜崎。
その横で何が起きてるのか分かっているのか分かっていないのか、そんなエル。
「ね、お腹痛いとか、具合悪い??」
「悪くないです。」
「お菓子を口にしない流河君なんて初めて見た・・・。」
ズズっとお茶をすすり、やっぱりお菓子に手をつけようとしない竜崎。
しかしお茶を飲んだ後、そのお茶もすぐにコトリとテーブルの上に置いた。
「どうしたの?」
「飲みたくないです・・・。」
「やっぱりワタリさんに淹れてもらう??」
「違います・・・。」
「ね、どうしたの?なんかあった?」
「・・・・・なんだか・・・」
「ん?」
「歯が・・・・」
「歯?」
「痛い気がします・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
そっぽを向いていた竜崎がを見やったとき、彼は眉間に皺を寄せて頬を押さえていた。
なるほど、苦笑いを浮かべては竜崎に言った。
「流河君・・・」
「・・・・分かってますよ・・・。」
「虫歯なんだ?」
「・・・・・そうみたいです。」
虫歯。
至極不満そうな表情で頬を抑えている竜崎。
おやつから目をそむけたのも、から目をそむけたのも、見てしまえば食べてしまいたくなるから。
甘党の彼がお菓子を食べないなんて、どうりでおかしいはずだ。
「ちゃんと歯磨きしてた??」
「してますよ・・・。」
口をパカっと開け、ここが痛いと指をさす竜崎。
はそれを覗き込んだが、確かに小さく虫歯のようなものがあった。
「じゃあ食べすぎだ。」
「・・・治りますか?これ。」
「治るよ。」
「明日には治っていてもらいたいんですが。」
「それはちょっと・・・。」
「痛いです・・・。」
「・・・ん?あれ、おやつを持ってきたってことは・・・ワタリさんに言ってないの?」
「言いません。言ったらこれからおやつを少なくされる可能性があります。」
「ちょ、駄目だよ!そんなこと言ってる場合じゃないのに・・・。」
「今まで虫歯なんてなったことありませんでした・・・。」
うなだれる竜崎はきっとお菓子を食べたいのだろう、テーブルの上の団子が気になるようだ。
気の毒に思ったは一つ、竜崎に提案した。
「ね、じゃあワタリさんに内緒で歯医者さん行こう?」
「・・・歯医者、ですか。」
「保険証の一つや二つ、Lならなんとでも誤魔化せるでしょ。」
「まぁ、それぐらいは。・・・あ、ムリです。そういうのはワタリがやってくれてます。」
「・・・そうなんだ。」
「はい。」
「困ったなぁ・・・。じゃあワタリさんに言って歯医者さん行こうよ。」
「じゃあワタリにおやつを減らさないようにさんからも一緒に言ってください・・・。」
「わ、分かった、分かったから、虫歯治そう?」
「はい。」
こういうところは本当に小さい子どものようだ。
そう思いながら。は竜崎をつれてワタリの元へ向かった。
「さん・・・・」
「ん?どうしたの?」
「怖いですね・・・。」
「歯医者さん?」
「いえ、おやつを減らされるのが・・・。」
「・・・・・。」
「もし減らされてしまったらさん、内緒で私に作ってくださいね。」
「大丈夫だよ・・・ワタリさん意地悪じゃないから。」
コンコン、ワタリがいる部屋をノックする。
『はい。どうぞ。』ワタリの優しい声がした。
その返事を聞き、はガチャリとドアを開けた。
ドアを開けたのが竜崎ではなくだったことに少し驚いたようなワタリ。
「おや、さん、どうしたんですか?珍しいですね。」
「あ、すいません、急に・・・」
「いいえ、大丈夫ですよ。気になさらないでください。」
「ええと、後、流河君もいます・・・。」
「竜崎?何を隠れているんですか?」
「あの、ですね、ワタリさん、話が・・・。」
「はい。」
竜崎はの後ろに隠れるようにしてワタリと目を合わせようとしなかった。
よりも大きいくせに子どものように小さく感じる。
こういうとき、竜崎は本当に子どものようなところを発揮する。
そしてがワタリに事情を話す。
おやおや、とでも言いたげな表情のワタリは竜崎を見やった。
「そうですか、虫歯。」
「そうです、虫歯です。」
「・・・・・。」
「竜崎。」
「・・・・・・・・なんですか。」
「どうして黙っていたんですか?」
「・・・・虫歯だと言ったらおやつを減らすでしょう。」
当たり前のようにそんな言い訳をする竜崎を見てワタリは可笑しそうにと目を合わせた。
「さん、竜崎に付き合ってくださって有難うございます。責任持って虫歯を治させますので。」
「あ、はい・・・。」
「直しますから減らさないでくださいよ。」
「それは竜崎次第ですよ?」
「さん〜・・・」
「え?ええと・・・うん・・・頑張って虫歯治して・・ね?」
「なっ・・・さん!」
5日後
何事もなくお菓子をパクパクと食べている竜崎の姿があった。
どうやら虫歯も大したことがなかったようですぐに良くなったようだ。
虫歯が治ったのでにケーキを作って欲しい、早速そうねだった竜崎は
今が作ってきたケーキを美味しそうに食べていた。
「すごく美味しいです。」
「それは良かった。虫歯も、たいしたことなくて良かったね。」
「はい。心配かけてすみません。」
「なんか、やっぱりお菓子食べてると流河君、って感じだなぁ。」
「私もお菓子を食べてると落ち着きます。」
「でも食べ過ぎには注意しなくちゃね。また虫歯になっちゃう。」
「もう大丈夫です。」
「・・・何を根拠に・・・。」
どうやらおやつは減らされなかったようだ。
*****
虫歯にならないのがおかしい。