「やったぜー!!」
「何キャラですか、さん。」
教室でガッツポーズをしながら喜んでいる。
クラスではホームルームが行われていた。
頭脳は大人、中身は子ども。それでも彼は世界の切り札。
隣の○○君
「だって、パン食い競争に参加できるんだよ!」
ホームルームで体育祭の種目決めをしていた。
今年から追加された種目、パン食い競争に出ることに必死だったは念願叶ってか、
パン食い競争に参加することになった。
「良かったですね。」
「うん!」
がパン食い競争に参加することになったのも、クラスの男子が譲り合いをしていたからであった。
種目を決める際にが竜崎に『ちょっとさ、パン食い競争に出れるように祈っててよ。』そう言ったのを
聞き逃さなかったパン食い競争志願者の男子らがここぞとばかりにに譲ったのだ。
ちっぽけな下心だ。
「でもいいのかな、ホントに・・・本当は皆パン食い競争出たかったんじゃないのかな・・・。」
「まぁ、さんほどパン食い競争に対して熱い気持ちは持っていなかったとは思いますけどね。」
「やっぱりジャンケンにしたほうが・・・」
がポツリとそう言うと元パン食い競争志願者であった男子達が『そんなの気にしなくていいよさん!』と
またもここぞとアピールするかのように爽やかに言った。
そんなヤツらにムスっとした視線を向ける竜崎だったが、彼らはそんなの気にしない。
普段竜崎の固いガードのためと個人的に話をすることが出来ないためこういうときに積極的なのだ。
「いいじゃん、ちゃん、皆いいって言ってんだから!」
の前の席の女子がニッコリとそう言った。
それならいいんだけど、そう言ってはお礼を言った。
「ちゃん、そんなにパン食い競争出たかったんだ。」
「うん。」
「なんで?」
「えー?パン食べれるから?」
「(・・・可愛いなぁ。)」
ヘラっと笑いながらがそう言うと、の前の席の女子は小さな子どもを見るような
暖かい目でニコリと笑い、の頭をポンポンと撫でた。
「流河君は、何に出るんだっけ。」
「徒競走です。」
「へぇー。あ、ライトも一緒じゃん。」
「・・・残念なことに。」
「またそういうこと言うんだから。」
「まぁ、一番勝敗がハッキリとした種目なのでいいですけどね。」
「徒競走かぁ・・・。」
今まで竜崎が運動をしている姿なんて見たことのないは思わず徒競走で一生懸命走っている
竜崎を想像して少しおかしくなった。
「なに笑ってるんですか・・・。」
「え?わ、笑ってないよ・・・。」
「笑ってますよ。・・・どうせ私が走っている姿でも想像したんでしょう。」
「え!?」
「図星ですか。」
「・・・・・。」
「今に見ててくださいよ・・・さんをぎゃふんと言わせてやりますよ。」
「ぎゃふん、って・・・。」
そんなやり取りをしてる間にもホームルームの時間は過ぎていった。
今回の体育祭は優勝すれば焼肉食べ放題の特典もあり、だけではなく皆張り切っているようだった。
竜崎としてはそんなものよりもデザート食べ放題やケーキバイキングの方が素敵なことだ、そう思う次第だった。
「焼肉よりもデザートとかの方が良かったです。」
「私はデザートでも焼肉でもいいなぁ。」
「本当、その体の何処に入るんですか、いつも結構食べてますけど。」
「流河君には一番言われたくないなぁ・・・。」
確かにいつでも何か甘いものを頬張っている竜崎には言われたくない。
彼の体の方がよっぽど不思議な仕組みになっているに違いない、はそう思った。
現在進行形で彼は今も持参してきたドーナツを頬張っている。
チラっとを見やると、ヒョイっと一つドーナツをつまみそれを彼女に差し出した。
「どうぞ。」
「あ、ありがとー。」
「いいえ。」
「あ、おいしい。」
「もっとありますよ。」
「でも太るしなぁ・・・。」
「パン食い競争に出たいとか言ってる人が何言ってるんですか。それに大丈夫ですよ、さん太ってませんから。」
「いやぁ・・でも最近ちょっと・・・」
「そうですかね・・・この前見たときはそんなことは」
「ちょっ、うわーーーー!!!何言ってんの!!」
「いいじゃないですか・・・別に・・・。」
「いやいや、良くない良くない!!」
いつになっても顔を赤くさせながら恥ずかしがるが可愛いと同時に面白い竜崎は
こうしてからかっていることが多々あった。
そんな調子で日にちは過ぎていった。
翌週になると体育祭の練習に取り掛かりはじめた。
「あれ、流河君、着替えないの?」
「・・・・体育着は嫌いです。」
「えー。」
「本番では着ますよ。不本意ですけど。」
「ふーん。あ、あたしあっちだから、行くね。」
「はい。」
各種目ごとに集まるらしく、はパン食い競争の集合場所へと足を向けた。
竜崎はもっぱら集まりには参加する気はなかったらしく、の後姿をそのまま見送った。
すると、聞きなれた声で竜崎を呼ぶ声が背後で聞こえた。
「流河?お前着替えてないのか。」
「ライト君。」
「確か、お前も徒競走だろ?」
「まぁ・・・。」
「なにその不満そうな顔。」
「徒競走が不満なわけではありませんよ。体育祭が不満なんですよ。」
「お前まだそんなこと言ってるのか。ていうか体育祭が不満ってそんな元も子もないことを。」
「ライト君こそ、早く行ったらどうですか?召集かかってるんでしょう?」
「あぁ、そうだね。・・・って、お前どうするんだ?」
「行きませんよ。」
「え?」
「私が行くとでも思いましたか。」
「そんなえばられても困るけど。」
そんなやり取りをしている最中、ふと横目で竜崎はパン食い競争で召集されたの方をチラリと見やった。
「そういえばはパン食い競争だったな。」
「はい。パンが食べたいらしいですよ。可愛いですね。」
「・・・普通に買えばいいのに。」
「何言ってるんですか・・・こういった場で、ああいった状況で勝ち取ってパンを食べることに意義があるんですよ。
分かってませんね、ライト君。」
「そんなに力説しなくてもいいよ。ていうかも多分そこまで考えてないと思うけど・・・。」
ライトの言うとおり、別にはそんなことは考えちゃいなかった。
ただ単にパン食い競争という種目は魅力的だなぁ、そんなことぐらいにしか思ってないはずだ。
「あ、見てください。なんか今から走るみたいですよ。」
「本当だ。練習するんだ。」
見ると、を含めた参加する生徒達が白線が書かれているトラックへと移動し、
恐らくスタートラインである場所へと立っていた。
その中ではどうやら一番手らしい。
「あ、位置に着きましたよ。」
「は一番最初に走るみたいだな。」
「そうですね。」
その様子を遠目で見ていた。
ピストルの音と共に走り出した。
パン食い競争だが、本番ではないので違うものが取り付けられていた。
走っている様子を見ていると、今のところは一番で走っていた。
「さんって足速かったんですね。」
「そうだね。なんか小学校のときとかもリレーとか出てたし。」
「なんか意外です。」
興味深そうにそう言った。
パンではない違うものを一生懸命口でくわえようとしているを見てポツリと『可愛いですね。』そう言った。
「竜崎なんか、お前・・・変態みたいだぞ・・」
「うるさいですよ。カツライト君に言われたくないです。」
「あれ!?なんか呼び方変わってない!?どっちにしてもすごい腹立つけど!!」
「まぁ同じ意味ですし・・・気にしないでください。」
「気にするよ、気にするっていうかムカツクんだけど。」
「いいじゃないですか、本当の」
「違うから。」
「あ、さんゴールしました。」
「おま、ホント人の話聞かないよね。」
そんなこんなやり取りをしている間に他の種目の集まりも終わろうとしていて、生徒が
校舎へと入っていく姿が見られた。
竜崎たちが参加する徒競走も例外ではなかった。
「ラッキーですね、終わったみたいですよ。」
「お前は最初から出る気なかったろ。」
「はい。」
「パン食い競争も終わるんじゃないのか?そろそろ。」
「そうですね。」
そう言って竜崎も校舎へと足を向けた。
「あれ、のこと待ってなくていいのか?」
「はい。教室で待ってます。」
「ふぅん、珍しいな。」
「制服ですから。」
「は?」
「集まりサボったことがバレます。さんに多分なにか言われます。」
「・・・あ、そう。」
それだけ聞くと、ライトも教室へと戻っていった。
しばらくすると、パン食い競争に参加していたも教室へと戻ってきた。
「お帰りなさい。」
「うん、ただいま。」
「走ってましたね。」
「あ、見たの?」
「はい。早いんですね、走るの。」
「いやぁ、陸上部の人には負けちゃうよ。」
「陸上部の人は走ることを専門にしてるんですから当たり前じゃないですか。」
「そっか、そうだね。あ、見て、これ。」
そう言って少し嬉しそうに見せたのは、小さめの袋にいくつかお菓子が詰められたものだった。
「なんですか?これ。」
「さっきね、パン食い競争の練習のときに取ったやつ。本番じゃないからパンじゃないけど、
代わりにこれがぶらさがってたんだよ。」
「なるほど。」
「でも久々に走ったから疲れちゃったよ。筋肉痛になるかも。」
「あんな短距離ですよ。」
「・・う、うるさいなぁ。」
お菓子が詰められた袋を開けて入っていたクッキーを一つ、竜崎に渡した。
次の日、太ももが痛いと案の定筋肉痛になっているを見て竜崎は可笑しそうに笑った。
もうすぐ体育祭だ。
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体育祭ってめんどくさいよね。にこり