「よぅし!!頑張ろうね!!流河君!!優勝したら焼肉だよ!」

「仕方ないですね、では私はさんのために頑張りましょう。」

「いいんだ・・・、お前そんな動機なんだ。」

「私はさんのためならなんでもしますよ。」









赤いハチマキをギュっと結びつけて張り切っているのは、だ。



































頭脳は大人、中身は子ども。それでも彼は世界の切り札。



隣の○○君































体育祭当日。

この日のために各クラス練習をしてきたりとそこそこ頑張っていた。

も例外ではなかった。

彼女が頑張る理由は“体育祭が楽しいから”とか、そんな理由ではない。

“優勝したクラスは焼肉食べ放題”、このことのために頑張った。

そして今、意気込んでいた。

その横ではやる気のなさそうな竜崎と、体育祭という行事にそこまで熱意を抱いていないライトだ。













「ライト、頑張ろうね!」

「え?あ、うん。」

「ちょ、さん、なんでライト君にしか言わないんですか!私だって頑張りますよ!」

「だって、ライトはリレーの選手だもん。」









そう、ライトは体育祭の一番の盛り上がりでもある対抗リレーの選手になっていた。

運動神経のいい彼が抜擢されないわけがなかった。

本人はあまり乗り気ではなかったのだが、成り行きでなってしまったらしい。










「リレーが一番得点高いんだよ。」

「そうなんですか。」

「そうらしいよ。・・・あんまり出たくないんだけどね。」

「何やる気のないこと言ってるんですか、ライト君。」

「更にやる気のないお前にそんなこと言われたくないんだけど・・・。」

「何言ってるんですか、私はやる気十分ですよ。さんのためにですけどね。」

「流河君も頑張ろうね!」

「はい。私がさんを焼肉へと導いてさしあげますよ。」

「なんだ、その格好のつかない決め台詞。」











グダグダとそんなことを話している間にも、始まりの合図のピストルの音が3回、勢いよくならされた。

それだけでその場はとても盛り上がっていた。

学生ならではのこの盛り上がりの中、と竜崎とライトは少しばかり引けを取った。












「おぉ・・・す、すごいね、皆、盛り上がってるね。」

「特に3年生は今年最後だしね。」

「ピストルやめて欲しいですね、耳に響いて嫌です。」

「徒競走はいつ?流河君もライトも出るんだよね。」

「いつでしたっけ?」

「覚えて置けよ、自分の出るものくらい。確か午前中だったと思うよ。5番目くらい。」

「そっか!結構早めなんだね。」

さんはいつですか?」

「私はねぇ、確か3番目くらいだったかなぁ。」

さんのほうが早いですね。応援してますね。」

「うん!」












自分達の番が来るまで各クラスごとの応援席で自分の組を応援した。

竜崎はイスに座ってどうでもよさそうな、そんな様子で見ていた。

はクラスの友達と共に体育祭の様子を楽しんでいる。










ちゃん、流河君は何に出るの?」

「えっとね、徒競走だって。」

「へぇ〜。応援しなきゃね。」

「うん!」

「(・・・未だになんでちゃんと流河君が付き合ってるのかが分からないわ。)」

「ライトも徒競走だよ。」

「夜神君もなんだ。そういえば夜神君のこと騒ぎ立ててる子達が言ってたかも。」

「相変わらずモテるんだね、ライトは。」

「まぁ、カッコイイしね。」









そんな調子で過ごしていると、次に始まる種目の後の競技の召集がかかった。

パン食い競争の召集がかかった。











「あ、私行かなきゃ。」

「頑張ってね、ちゃん。ここで応援してるね。」

「うん!あんぱん狙っていくよ!」

「いや、そういう意味でじゃなくて・・・うん、まぁいいや。あんぱん取れるといいね。」

「うん!行って来るね!」










友人にそう告げ、召集場所へと駆けていこうとした。

ふいに、グイっと腕をつかまれる感触に襲われ何事かと思い腕の先を見れば、

竜崎がの腕を掴んでいた。











「ビックリした!」

「すみません。」

「どうしたの?」

「いえ、頑張ってください。」

「うん!頑張ってくるね!」

「ここで応援してますよ。」

「うん!」








満面の笑みで意気込みを見せる

そんなを見て竜崎も思わず頬が緩んだ。

行ってきます、そう言って手を振りながらは召集がかかっている場所へと駆けていった。












「あれ、もうパン食いの召集かかってたんだ?」

「そうみたいですよ、ライト君。」

「ふぅん。、張り切ってるよな。」

「パン食い競争に対しての熱意がすごかったですしね。」










ライトも竜崎の隣に座り、そこで体育祭の様子を眺めた。

パン食い競争が始まるとずっと座っていた竜崎もの姿を見ようとゆったりと立ち上がった。

そしてライトも。

パン食い競争の前にやっていた種目が終わると、アナウンスが入り次の種目へと変わる。

そのアナウンスと共に種目参加の生徒はグラウンドへ。









「あ、さんです。」

「2レーンで走るらしいな。」

「見てくださいよ、ニコニコ笑ってますよ。」

「だからなんだよ。」

「可愛いですね。」

「・・・・あぁ、そう。」

「あ、こっち気づいたみたいですよ、手振ってます。」










竜崎たちに気づいたはへにゃりと笑いながら軽く手を振った。

竜崎もヒラヒラと手を振り返し、レーンで待機するを見守った。

準備が整うと、お決まりの『位置について、よーい』と掛け声。

パンッ、とピストルの音と共に走り出した。

走っているところを見ると、今のところは一番で走っていた。














さんが一番で走ってますね。」

「あぁ。」

「本当、意外ですね・・・足が速いのは。どっちかというとあまり走るのは得意じゃなさそうな顔してるんですが。」

「さりげなく失礼だな。」









そんなことを話している間にも、もうパンがぶら下げてあるところまで走ってきていた。

ぶら下がっているパンを取ろうとジャンプしているだったが、どうやら上手くパンが取れないらしく四苦八苦していた。

もちろん、手を使ってはいけないので口で取らなくてはいけない。

がパンを咥えられずにモタモタしていると、せっかく一番で走ってきたのにも関わらず後から追いついてきた者がすんなりと

パンを取って追い越してしまっていた。










さん、パンが取れないみたいですね・・・。」

「せっかく一番で走ってたのに・・・意味なくなったな。」

「あぁ、ビリの人にまで置いていかれましたよ。」

「頑張ってるんだろうけど・・・。」

「下手くそですね・・・。」

「あぁ。」

「でもなんか、可愛らしいですね。」

「・・・はいはい。」










四苦八苦していただが、ようやくパンを取ることができ、パンを咥えたまままた走り出した。

もちろん、結果はビリだった。

彼女も頑張ったのだが、結果はこうなってしまった。


















さん、お疲れ様です。」

「お疲れ、。」

「えへへ・・・ビリになっちゃった。」

「いいんじゃないんですか、頑張ったんで。」

「途中まで一番だったのになぁ。」







先ほど取ったパンを頬張りながら少し残念がった。

そんな中、次の種目に移動する生徒達がわんさかやってきた。

居た場所が悪かったのか、その人並みに飲まれるようにその場にいたはドンッと人に押されたりとしていた。












「うわ、わ、ちょ・・」

さん、大丈夫ですか?」

「う、うん、場所移動しよっか。」












そう言った直後、移動しようとしたと、移動している生徒がタイミング悪くぶつかってしまった。

移動していた生徒がの後ろからぶつかった形になり、は見事に前のめりに転んでしまった。












「あいたたた・・・」

、大丈夫か?」

「う、うん、ありがと、ライト。」

「ちょ・・さん、ちょっといいですか?」








いつもならきっと自分ではなくライトが助け起こしたことに文句を言う竜崎だったろうに、今回は違った。

転んだを見て顔色を少し強張らせながら隅の方へとを移動させ、竜崎はムスっとした表情でそれを眺めた。

転んだ拍子に膝をすりむいたらしく、軽く血が流れていた。












「血が出てるじゃないですか。」

「あ、本当だ。」

「本当だ、って・・・お前自分で気づかなかったのか。」

「大丈夫だよ、ほっとけば止まるよ。」

「何言ってるんですか、全く。化膿するかもしれないじゃないですか、駄目ですよ、保健室に行ってください。」

「め、めんどくさいなぁ・・・。」

「いいから、行かなくちゃ駄目です。私もついていってあげますから。」

「でも次の次、徒競走だよ。」

「いいですよ、別にそんなの・・・。ねぇ、ライト君。」

「え?なんで僕にふるんだよ。」

「私のぶんまで頑張ってくださいってことですよ。」

「おいぃぃぃ!!!」

「行きますよ、さん。」

「えええ、でも、」

「まぁ、とりあえず消毒くらいはしてきなよ、。」

「う、うん・・・」

「歩けます?」

「歩けるよ、そんなに大怪我じゃないからそんな心配しなくても・・・。」










半ば竜崎に連行される形で保健室へと向かう

その様子にため息をつくライト。

元々体育祭なんてやる気のなかった竜崎のことだからきっと本当に徒競走が終わるまで戻ってこないだろう、

ライトはそう確信した。

なんでいちいちめんどくさいことを僕が引き受けなくちゃならないんだ、と思うも、

いちいちめんどくさいことをなんだかんだで引き受けてしまう損な役割だった。


























「いたっ!痛い痛い!!」

「我慢してください。」

「しし、染みる・・・!!!」

「消毒ですから。」

「うう・・・。」

「それにしても・・・・ぶつかっていった奴、ごめんなさいの一言もなしに去っていきましたね。」

「はは・・。」

さんに怪我させるなんて許せませんよ。(後で探し出してやります。)」

「人だかりだったし、しょうがないよ・・・。(・・・・なんか嫌な予感するなぁ。)」








勝手に保健室の物を漁り、の怪我の処置を行っていく竜崎。

本当は外の体育祭本部のところへ行けば保険医がいるのでこういった処置をほどこしてくれるはずなのだが、

それを知らなかったに竜崎は黙って保健室へ来た。












「保健の先生いないんだね。」

「散歩でもしてるんじゃないんですか。」

「そんな馬鹿な。」

「まぁ、いいじゃないですか。」

「うん、まぁいいけど・・・、あ、ありがとう。」

「はい、終わりました。」









適当な処置をほどこし、竜崎が処置してくれた膝を見て感心する










「流河君、ちゃんとこういうのできるんだね。」

「どういう意味ですか、それ・・・。」

「や・・なんか普段ワタリさんにやってもらってそうだし・・・出来なさそうだなぁって思ってて・・・。」

「普段私は怪我はしませんし、こういった簡単な処置ならワタリでなくても出来ますよ。」

「あれ、怒った?」

「怒ってません。」

「じゃあ、拗ねちゃった?」

「はい。」









は竜崎が拗ねたときに正直に『拗ねました』と言うのがなんとなく、好きだった。

そんなこと正直に言うことじゃないのに、そう思いながらも竜崎のその反応が面白かった。

竜崎は竜崎で、自分が拗ねたときにが少し慌てたりする仕草が面白く、好きだった。













「もうすぐ徒競走始まっちゃうよ。」

「いいじゃないですか・・・。」

「えー、でも、」

「嫌ですか?」

「え?」

「私と二人でいるのが嫌ですか?」

「いや、ちちち、違うくて・・・!!」

「(本気に取らなくても・・・。)」












保健室の窓から外を覗く。

の言うとおり、竜崎も参加するはずだった徒競走ももうすぐ始まる。











「流河君が走ってるの、見てみたかったなぁ・・・。」

「そんなに珍しいことじゃありませんよ。」

「珍しいよ。」

「まぁいいじゃないですか。」

「・・・もしかして最初からなんかしら理由作ってサボろうとしてた?」

「さぁ、どうでしょう?」

「・・・そうなんだ。」

「そうだとは言ってませんよ?」

「態度がそうだもん。」

「それより、怪我は大丈夫ですか?」

「(話逸らした・・・。)うん、大丈夫。ありがとう。」

















結局徒競走が終わるまで保健室にいることになり、さらにはお昼が終わるまでそこに居座ろうとする竜崎だったが

に連行される形で再び体育祭の場へと戻っていた。



戻ったときにはたちの組は他の組よりも少しリードしていた。

そんな様子で午後の部も行われていったのだが、最後の選抜リレーでも最初の選手がバトンを落とすという先行き不安なスタートを切ったが

そんなミスをカバーするかのようにその次に走ったライトが見事に挽回してくれたおかげでリレーで1位をとることが出来た。

得点の高かったリレーのおかげか、たちの組は優勝することになったのだが。















「やったー!」

「良かったですね。」

「うん!」

「焼肉食べ放題でしたよね。」

「うん。」







そうも喜んでいるのもつかの間だった。

閉会式が行われた際に、体育祭実行委員からその喜びをくつがえすような言葉が発せられた。













「優勝チームおめでとうございます。」











そう一言、優勝したチームはわーっと盛り上がった。

そんな盛り上がりの中、実行委員の言葉はまだ続いた。













「優勝チームには焼肉食べ放題!・・・・のはずだったんですが、」















その言葉に一同静まり返った。

もきょとんとした表情で実行委員の次の言葉を待った。
















「予算オーバーのため、例年のように図書券配布という形をとらせていただくことになりました!!」
















ヘラっとそう言ってのける実行委員にブーイングがとんだのは言うまでもなく、しかし予算オーバーという

現実的問題をくつがえすことはできなかった。

優勝チームのブーイングがとんでいる中、は心底残念な表情でため息をついた。
















「だったら最初から図書券って言ってくれてれば良かったのにー・・・。」

「まぁ、焼肉食べ放題とかオーバーなこと言っておいたほうが盛り上がりますからね。」

「うう・・・。」

「そんなに残念そうな顔しないでくださいよ。」

「だってー。」

「いいじゃないですか。今度私がデザート食べ放題に連れて行ってあげましょう。」

「・・・・デザートなんだ。」













竜崎のその言葉に思わず笑いがこぼれた。

そんなこんなな幕開けをした体育祭。

多分、いい思い出になった。













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無理やりな終わらせ方はご愛嬌ってことで(殴)

竜崎のいいとこなし。笑