僕の知ってる君がいて、僕の知らない君を、今見つけた
side Childhood friend
隣の○○君
いつからかなんて覚えていない。
多分、物心がついたときにはもう当たり前のようにいつも一緒にいて、遊んでいた。
僕の幼馴染。
家が近所で、同じ年頃の子どもが彼女しかいなかったからかもしれないけど、僕とは小さい頃いつも一緒に遊んでいた。
「ライトくん、あそぼー!」
これと言って決まった時間はないけど、ほとんど毎日のように彼女と遊んでいた。
公園へ行って遊んだり、僕の家やの家で遊ぶことも多かった。
「いいよ、なにしてあそぼっか?」
「えっとね、えっとね、公園に行ってあそぼう!」
「いいよ。いこっか。」
「うん!」
僕とが仲がいいように、親同士でも仲が良かった。
彼女の両親の仕事の都合上、が僕の家に来てご飯を食べたりするとか、そんなことは珍しくなかった。
両親が忙しくて家にいる時間が少なくても、は泣くこともしなかったし、いつもニコニコ笑っていた。
「今日はもライトくんのおうちでごはん食べるんだって。」
「ちゃんといっしょだと楽しいから僕もうれしいなぁ。」
「も!ライトくんといっしょなの楽しい!」
「ちゃんは、おかあさんとか、おとうさんがお仕事でさみしい?」
「えっとね、えっとね、さみしいけどね、でもいい子にしてるとおかあさんもおとうさんも褒めてくれるから、さみしくないんだよ!」
「そうなの??」
「うん!」
幼心に、きっと我慢してるんだろうなぁ、って思ってた。
本当はもっと一緒にいたかったはずなのに、子どもながらに色々と考えてたのかもしれない。
そうやって小さい頃からはいつもニッコリと笑っていた気がする。
「ライトくん、ライトくん、これ、なんていうの?ほら、さわると葉っぱが閉じちゃうよ!具合わるいのかな??」
「あ、これね、おじぎ草っていう葉っぱだよ。さわるとびっくりして葉っぱがとじちゃうんだって。
それがおじぎしてるみたいだからおじぎ草っていうんだって。」
「すごーい!ライトくん物知りだね!」
「この前図鑑でみたんだ。こんどちゃんにもみせてあげるね。」
「うん!みたい!」
『ライトくんは物知りだからはかせになれるね!』
はいつもそう言ってた。
彼女がそう言ってくれると、幼い僕はそれが嬉しくてもっと色んなことを勉強しよう、そう思ってた。
「ちゃんは大きくなったら何になりたいの?」
「はねー、えっとね、せーらーむんになりたいの!」
「せーらーむーんになりたいんだ。」
「うん!あとね、あとね、ケーキ屋さんと、お花屋さんと、およめさん!」
「いっぱいなりたいのがあるね。」
「うん!」
ちゃんならなれるよ、そう言うとすごく嬉しそうにニコリと笑ったのを覚えてる。
僕はがそうやって笑うのがすごく大好きだった。
彼女の笑顔を見ると、嬉しくなった。笑ってる彼女が一番好きだった。
「あ!ライトくん、見て、ネコさん!」
「ほんとだ。のらネコかな??」
「のらねこ?」
「かいぬしさんがいないネコさんのことだよ。」
「かいぬしさんがいないの?」
「わかんないけど、首輪がついてないから・・・。」
「かいぬしさんがいないの、さみしいね・・・ネコさんかわいそう。」
そう言いながらはそっとその猫に手を伸ばした。
多分、そんなには若くない猫だった。
人間に慣れてないそののら猫は警戒しながらのその手をガブリと噛んだ。
そこまで強くは噛まれなかったらしいが、少し、血が滲んだ。
「ちゃん!だいじょうぶ!?」
「いてて・・だいじょうぶだよ!ネコさん、びっくりしちゃったのかなぁ・・・?」
ごめんね、とノラ猫に謝ると懲りもせずにもう一度手を伸ばした。
こわくないよ、そう言いながら。
猫は相変わらず警戒していたけど、今度は噛まなかった。
やっぱりその猫には飼い主がいなかったらしく、つい最近からこの公園をうろつくようになっていた。
それが分かると『またネコさんに会えるね!』とは嬉しそうにした。
猫を見つけてはそっと近づいて、手を伸ばした。
最初はやっぱり警戒して近寄らなかった猫も、日が経つごとにいい加減慣れてきたのか、が手を伸ばしても
大人しく頭を撫でられていた。
それが嬉しかったらしく、は今までよりもその猫といる時間が長くなっていった。
猫も、次第にそれが心地よくなってきたのかが手を伸ばさずとも自ら寄ってくるようにもなっていた。
「あのね!あのね!今度ごはんをもってきてあげるの!」
「へぇー、なにあげるの?」
「えっとね、おさかな!きょうね、朝ごはんでたべたお魚をママに内緒でこっそりのこしたの!だからそれをネコさんにあげるの。」
「やさしいね、ちゃん。」
「ネコさんは、おさかな好きなんだよね!」
明日楽しみにしててね!そうニッコリと笑って猫の頭を撫でていた。
僕もなにかあったらこっそり持ってくるね、そう言ったらすごく喜んでいた。
公園で猫を膝に乗せているとそれが心地よかったらしく、はたまにそのまま猫と一緒に眠ってしまうことがあった。
変な人が来たら危ないじゃないか、幼いながらにも僕はそう思っていた。
だから僕は隣に座ってその様子を見守っていた。
「ちゃん、公園で寝たらだめだよ。」
「だってあったかいからきもちいんだもん。」
「だめだよ、へんな人がきたらどうするの?」
「でもライトくんがいるからだいじょうぶだよー。」
そう言われてそれ以上なにも言えなくなった。
頼りにされていたのが嬉しかった。
次の日、は言っていたとおりこっそり残したという魚をタッパーに入れて持って僕を迎えに来た。
僕は母さんに頼んで余ったおかずを少しタッパーに入れてもらって、一緒に公園に行った。
「ネコさん食べてくれるかな?」
「きっと食べてくれるよ。」
「楽しみだね!」
「うん、そうだね。」
きっと喜んでくれるだろうと、幼い僕らはワクワクしながら公園へ向かっていた。
公園へ着くと、いつもの場所に猫がいなかった。
「あれー、ネコさん、いない。」
「おさんぽしてるのかな?」
「えー、せっかくごはん持ってきたのにー。」
何処行っちゃったのかなぁ、と公園を探し回った。
僕も一緒に探した。
しばらくすると、僕はいつもとは違う草陰で猫の姿を発見した。
だけど、いつもとは違うその猫の様子に僕は胸が痛くなった。
「ライトくん!ネコさん、いた??」
「え・・あ・・」
僕が猫を見つけたのを見て、嬉しそうにも近づいてきた。
いつもと違う様子に僕はすぐにそれがなんなのか気づいたけど、はしばらく気がつかなかった。
「ねぇ、ライトくん、ネコさん、元気ないのかな?うごかないよ。」
「・・・・。」
「びょうきかな?」
「・・・・。」
「ごはん持ってきたから、ごはん食べて元気になるかなぁ??」
いつもと違う草陰にいた猫は、姿を隠すようにして、息絶えていた。
のその一言一言がすごく辛かった。
だけど、言わなくちゃいけなかった。
「・・・ねぇ、ちゃん。」
「なぁに?」
「あのね・・・、」
「うん。」
「・・・ネコさんは、びょうきでもないし、ごはんをあげても元気にはならないよ・・・。」
「なんで?どうして??」
「・・・・・ネコさん、死んじゃったんだよ・・。」
「・・・うそだ!!」
「うそじゃないよ・・・。ちゃん、かなしいのはわかるけど、」
「うそだもん!!だって、だって、きのうと一緒におひるねもしたし、げんきだったもん!」
「ネコさんは、おばあちゃんネコだったから・・・」
「いやだもん!!」
「ちゃん・・・」
うわぁぁん!!
は、いっぱいいっぱいの声で大粒の涙をいっぱいボロボロこぼしながら泣いていた。
僕も悲しかったけど、生き物が死んでしまうのは仕方のないことだって分かっていたから、泣くのを我慢した。
それよりも、がこんなにいっぱい泣いていることが、辛かった。
自分のお母さんやお父さんが仕事で忙しくて遊べなくても、どんなことがあっても泣かなかったがこんなに泣いているのを初めて見たから。
猫は僕の母さんと父さんに言ったら、公園の隅の草陰にお墓を掘ってくれた。
も一緒だった。
泣いていたけど、ちゃんと、『ばいばい。』と言っていた。
がそうして泣いているのを見たのはそれが最初で、それからは見たことがなかった。
だけど、今こうして目の前にいる彼女があの日のように大粒の涙を零して泣いている。
どんな過程があって流河と別れを告げたのかは分からない。
どんな理由があっても、こんな風にを泣かせる奴がどうしても許せなかった。
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これから少しライトサイドの視点。