最初はただの変な奴だ、そうとしか思わなかった。
まさかこいつがそんなことになろうとは思いもしなかった。
side Childhood friend
隣の○○君
「ねぇ、私の席の隣の子ね、すごいよ、芸能人と同姓同名なの。」
「へぇ?」
「流河早樹っているじゃない?粧裕ちゃん好きでしょ、早樹。一緒なんだよ!」
「そうなんだ。同姓同名っていうのも珍しいね。」
「だよね!お医者さんとか行ったとき流河君の名前呼ばれるときとか他の患者さんびっくりするよね。」
「はは、確かに。」
高校に入ってからもとは同じクラスになった。
幼馴染の腐れ縁というかなんというか。
そんなクラスでの席の隣の奴は一度も姿を見せたことがなかった。
入学式のときだって見た覚えがない。
そんな奴がある日突然、なんの前触れもなくやってきた。
─・・流河早樹
芸能人と同姓同名。
だけど芸能人のほうとは似ても似つかないような、変わった奴だった。
はずっと来ていなかった隣の席の奴が来たのが嬉しいのか、その日一緒に帰ったときにそいつの話をしていた。
別にそのときはさして気にならなかったけど、日に日に目に付くように気になってしまった。
「さんはよく喋りますね。」
「え、そうかな?」
「少なくとも私よりは。」
「確かに。じゃあちょっと黙ってるね。」
「いいですよ、さんとお話してるの楽しいです。」
元々人と付き合うのが好きなは流河ともすぐに仲良くなっていた。
流河という人間はどっちかというと人付き合いはさほど好きではなさそうな人間だった。
見た目からもなんとなく分かるけど、それじゃなくても多分、そんな感じがした。
雰囲気でなんとなく分かるものだ。
「今日数学あるよー・・・最悪だよ、もう・・・。」
「さんは数学が苦手みたいですね。」
「苦手!!算数時代から苦手!!」
「そんなに難しくないですよ、公式を覚えてしまえば後は応用するだけなんですから。」
「それが出来ないから苦手なんだよ・・・。」
「それもそうですね。」
「ていうかね、足し算・引き算・掛け算・割り算ができればいいと思うよ私。」
「意外とお馬鹿さんな考え方なんですね、さんって。」
「そ、そういう流河君は何気に辛辣だなぁ・・・。」
「冗談ですよ。」
「真顔で言われても冗談に聞こえないよ。」
日に日に仲よさそうにしている流河とを見るのが嫌になった。
ちょっとしたことでも、目に付いてしまった。
仲よさそうに、楽しそうに話している二人を見て嫌になって、そんな嫉妬で醜い自分も嫌になった。
あくる日のことだった。
テスト前だから、とが僕に勉強を聞きにきた。
がテスト前に数学を教えてくれ、と言うのは今に始まったことではなかったからいつものように教えていた。
でもそのいつものことが、そのときはすごく嬉しかった。
「で、これがこうなるだろ?」
「あぁっ、そっかそっか、分かった!!じゃあこっちの問題も同じようにやればいいのね?」
「そう。」
「ありがと、ライト。」
「いつものことだろ。」
そう、いつものこと。
こうやって勉強を教えたあと、必ず一緒に帰った。
今回もそうなるはずだった。
だけど、違ったんだ。
「さん。」
「流河君、どうしたの?」
「ノート、返しに。」
「あ、いえいえ。今から帰るの?」
「はい。」
流河はから授業を出ていなかった分のノートを借りているようだった。
別にそれは仕方のないことなんだけれど。
でも、嫌な予感、というのか。そんな気がした。
「・・・夜神君、でしたか。」
「あぁ、覚える気になってくれたのか。」
「ライバル、みたいですから。」
「!!・・・・・なるほど。」
「・・・これから色々と宜しくお願いします。」
「あぁ、・・・・こっちこそ。」
成り行きで3人で帰ることになったとき、そんな会話をかわした。
あぁ、やっぱり、と。
でもそれだけじゃなかった。
なんとなく、なんとなくだけど。
も─・・・
「好きなんだ。」
「うん、ライトがそうやって悩むくらいだからすごく好きなんだろうね。」
「─・・のことが。」
しばらくして、に今までの想いを告げた。
今までの関係が崩れるのは怖かったけど、何もせずに流河に負けるのだけは嫌だった。
最初は言って後悔した。
から嫌われたんじゃないか、もう普通に話せないんじゃないかと。
怖くなって、逃げ出した。
結果的にを傷つけることになってしまったのだけれど。
「きっと、さんは、ライト君の気持ちにちゃんと応えてあげたいと、思ってるはずです。」
「・・・そんなの、分かってる。」
「じゃあ、いいじゃないですか、それで。」
「・・・だけど」
「私は、さんの悲しそうな顔を見たくありません。」
「・・・・。」
「泣いてる顔も見たくありません。」
そう、言ったのは奴だった。
あぁ。確かにその通りだと、そう思った。
だから僕は改めてまた気持ちを告げて、気持ちに決着をつけた。
結果を見れば良くないのかもしれないけど、気持ちに決着はついたし、なにより彼女といつものように笑って過ごせるのが嬉しかった。
彼女の悲しそうな顔も、泣いている顔も見たくないと言ったのは奴だ。
そう、僕に釘を刺した。
だから、あいつとが付き合うって聞いたときは絶対に泣かすなと、そう言った。
なのに、今僕の目の前にいる彼女がこんなにも涙を流して泣いている?
その事実が許せないというのだけ、それだけが心に渦巻いた。
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