この声が枯れるくらい、貴方の名前を呼んでいたいって思うぐらい。















































隣の○○君



































気持ちのいい朝だった。

外は晴れているし、小鳥のさえずりがなんとも心地よい。

そんなこと、普段は思わないのに今日に限ってこんなことを思うのはなんというか、皮肉というか。

隣ではまだ静かに寝息をたてて寝ている可愛らしい彼女。

そっと頬に触れてみたら、くすぐったかったのか少し眉をしかめた。

こうしてよく見ると睫毛が長い、とか、髪の毛が柔らかいとか、普段そこまで感じることもないことまでも凝視してしまった。














「・・・・・・りゅうがくん・・・?」













しばらく彼女の髪の毛を弄くりまわしてみたり、反応が面白いので頬をつついたりしていたら

さすがに違和感を感じたのか、眠そうな目をこすりながら私の名前を呼んだ。













「おはようございます。」

「おはよ・・・。・・・・。流河君。」

「なんですか?」

「よかった、いた。」

「は?」

「・・・・・今日でしょ、イギリス行っちゃうの。・・・朝起きていなくなってたらどうしようかと思った。」

「そんなこと、私がすると思いますか?」

「・・・ありえそうなんだもん。」

「心外ですね。」











むっ、と口を尖らせる竜崎を見て弁解しようと慌てる












「あっ、いや、違くて・・・そのっ」

「分かってますよ。大丈夫です。・・・・ちゃんといますよ、ここに。」

「・・・うん。」

「さ、ワタリが朝食を用意してくれてます。食べるでしょう?」

「うんっ。」

「どうぞ?」

「え?」

「着替えてください。」

「・・・ばっ、ばか!」

「冗談ですよ。先に行ってますね。」

「う、うん、ありがと・・・。」 
















しばらくすると身だしなみを整えた彼女が、私が座っているソファに腰をかけた。

そしてまたしばらくして、声を出したのは彼女のほうからだった。
















「・・・ね、」

「なんですか?」

「覚えてる?流河君と初めて喋ったときのこと。」

「覚えてますよ、もちろん。さんがずっと私のほうを見ているので何事かと思いましたよ。」

「だって、入学して何か月も経ってるのに、初めて隣の席に人見たんだよ。しかもリムジン乗ってくるし。」











至極、楽しそうに話す姿が愛しくて、愛しくて、仕方がなかった。

他愛のないことを話すときでも、いつも楽しそうに笑って、ときには怒って、悲しそうな顔をしたり、

本当に色々な表情を見せてくれる彼女が、さんが愛しくてたまらなかった。














「でね、私、ノートは割とちゃんと書いてたほうなんだけど、」

「そうですね、すごく丁寧に書かれてましたから。」

「でもね、流河君にノートを貸すようになってから、もっと頑張ってノート書いてたんだよ。」

「そうなんですか?」

「うん。・・・たぶん、知らないうちに好きになってたんだよね、きっと。」














楽しそうに話していた。

だけど、次第に彼女の表情が変わっていくことに気付かないほど、私は馬鹿ではなかった。














「あとライトともよくケンカしてたよね、あ、今もか。でもケンカするほど仲がいいってね。」

「馬鹿を言わないでくださいよ。カツラの人となんか仲良くしません。」

「またそういうこと言って。」















タイムリミットが迫ってること。

次第にそれを感じる彼女の表情は今にも泣き出してしまいそうだった。

泣いて、抱きしめるのは簡単だ。

抱きしめて、慰めたあと、私はそのあと─・・・・・



















さん─・・・・」

「・・・それで、この前・・・」

さん─・・・・」

「ふっ・・うぇ・・」















ポロポロと涙がこぼれた。

ぎゅっと抱きしめれば、それに返すように背中に手をまわしてぎゅっと洋服を掴んでいた。

泣いていて、小刻みに肩が震えていたのがよく分かる。

こんなこと、こんなときに思ってしまうのは良くないことだとは思うけれど、それでもそんな彼女が

可愛いなんて、思ってしまった。


















「─・・・すみません、タイムリミットです。」

「流河君っ・・・やだ・・・」

さん・・・」

「ふぇっ・・もっと、っ・・一緒に、いたいのにっ・・・!!!」

さん・・・」

「でもっ・・・泣かないって、うぇっ・・思ってたのに・・・!!!!」

「はい。」

「だって・・・好きなんだもんっ・・・大好きで、大好きでしょうがないのっ・・・。」

「私もです─・・・、いえ、愛してますよ。」

「ふえぇ・・」

「必ず戻ってきます。」

「・・ぅ、ん・・っ」

「絶対に。」

「ん・・・約束・・。」

「はい。・・・メールもしますし、電話も。」

「・・・・・無理しないでいいよ・・。」

「無理してるのはどっちですか、こんなに泣いて。本当はどうしてほしいのか言ってください。」













私の胸に頭をうずめて泣いている彼女の涙が、洋服に浸透してきて少しヒヤリとした。

だけど、それさえも愛しく感じるくらい

























「っ・・時間、あるときは、メールしてっ・・電話もしてほしい・・・。」

「はい、分かってます。」

「あと、」

「はい。」

「最後に、・・・ぎゅってして。」

「もちろんです。・・ですが、」

「・・・?」

「キスもしていいですか?」

「・・うん。」















思いっきり抱きしめて、キスをかわして。

こんなに寂しくなるキスはしたことがない。















































「行ってきます。」

























































いつもより少し長いキスのあと、流河君が言った最後の言葉。

すごくすごく寂しくて、さっきまで抱きしめてもらってたのにもう会いたくなって。

時間は本当に現実的で、流河君がイギリスに行った次の朝。

私は春を迎えて高校最後の学年になった。























「おはよう!ライト!また一緒のクラスだね!!」



























またライトと一緒のクラス。いつもと一緒。

一つだけ違ったのは私の隣には流河君はいなかった。











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